第八話
第八話
数日ぶりの出勤のせいか、職場に向かう途中に違和感がある。なぜか街が閑散としているように感じる。
駅に向かう道、駅のホーム、普段はぎゅうぎゅう詰めの電車。そのどれもがいつもよりだいぶ人が少なく、まばらなようにアキには思えた。
職場に出ると、どこか閑散とした雰囲気は消えた。
職場にはいつもの面々がいて、始業前だというのにすでに黙々と働いていた。ここはいつものままの風景であることに、アキはなんだかほっとした。
「急な休みですまなかったな」
アキが同僚に言うと、同僚は肩をすくめて言った。
「いくらなんでも、葬式ぐらいはな」
そう言う同僚の表情には、特に何の感情もないようだった。
数日休むと、仕事は相当たまっていた。
アキは自席に着くと、パソコンをひらき溜まっていた仕事を片付け始めた。
たまっている仕事を処理しているうちに、あっという間に時間は過ぎていく。やがてアキは疲労が蓄積し、仕事が停滞するようになっていった。
仕事が停滞すると、つまらないことが気にさわりはじめるのか、イライラしてきた。
何が自分をイライラさせるのか? アキはわからず、昼休み目前だったが手を止めて自席で少し休むことにした。
その時、朝に聞いた物音とよく似た音が聞こえることに、アキは気がつく。
?
アキは、またガラスがびりつく音を聞いた。
またガラスが?
近い窓を見に席を立つ。
窓のそばに立つと、確かにガラスがビリついている。ガラスに手を当てると、ビリつくガラスの振動が手に伝わった。
「こんなことあったっけ?」
同僚に声をかけるが、パソコンにむかったままの同僚は
「さあな」
と言ったきりで仕事に集中したままだった。
仕事に没頭して朝のことを忘れていたが、朝の食器棚のことが脳裏に浮かぶ。
食器棚のガラスもびりついていたな。
そう思った時、昼休みを告げるチャイムが鳴った。




