第三話
第三話
やってきた次の日曜日、マキとアキは朝昼兼用の食事をした後、コーヒーをいれた。
ふたりはほとんどテレビを見ないのだが、この日は何か新しい遊園地の情報でもないかとテレビをつけた。
コーヒーを飲みながら、休日のテレビを見ていると、奇妙な話題についての紹介が始まった。
それは、どこかでサイレンの音が鳴っている。という噂についての話だった。
………最近、どこかでサイレンが鳴っている。という噂が街に流れています。
この噂の真相について調査しました。
番組スタッフが、街周辺のみならず、全国的にサイレンを所持している自治体、工場、化学プラント、石油プラント、発電所、あらゆる関係各所に確認しましたが、サイレンを鳴らしいているという事実はありませんでした。
しかし、街にはサイレンが聞こえる。という人が現れはじめています。
この現象は何か? 当番組は追跡調査を行います。まず、サイレンが聞こえるという方に連絡し、実際にインタビューを行いました。
それでは、サイレンが聞こえるという方のお話をどうぞ。
画面が切り替わり、モザイクで顔を隠された人が現れ、加工された音声で話はじめる。
「最初にサイレンに気がついたのは真夜中でした。
遠い遠いどこかで、サイレンが鳴っているのが聞こえました。
真夜中のことでしたし、寝ぼけてもいたのだろうと気にしていなかったのですけど……
だんだん……その音が大きくなってきて……」
「それは、昼間でも聞こえるのですか?」
「はい。聞こえます。
以前は聞こえなかったのですが、今は……
ずっと聞こえるわけではないですが、静かな時には、遠くでサイレンが鳴っているのが聞こえるようになりました」
「それは、どこから鳴っているかとか、何かけんとうはつきますか?」
「どこか、というのはわかりませんが……。西……、西の方角から聞こえるような気がします」
「西、ですか、他に何かわかることは?」
「わかりません、ただ、すこしづつですが、サイレンの音が大きくなっています」
「例えば今ですが、そのサイレンは聞こえますか?」
「…………はい。かすかにですが……聞こえます」
アナウンサーは目を閉じ、耳に神経を集中するようなそぶりをみせる。
「私はいま耳をすませてみたのですが、私にはサイレンの音は聞こえません」
インタビューはそこで終わった。
マキはテレビに食い入るように見入っていたが、強い視線を感じて目をテレビからはなした。
アキが、じっとマキを見つめていた。
「サイレンが聞こえる。って夜に言ってたよね? これ、それじゃない?」
アキの視線は、じっとマキに向けられている。そして、その視線は何か無言の力がこめられているような気がマキはした。
「う、うん…」
マキは何か重圧のようなものを感じて、そう答えることしかできなかった。
「なんだろうね?」
アキはそう言うと、視線をマキから外さずコーヒーを飲んだ。
「なんだろうね?」
マキは同じ言葉を返して、コーヒーに手をのばす。
「聞こえないけどね」
アキはそう言って、ようやくマキから視線を外した。
テレビではもうサイレンの話題は終了して、新しい遊園地の話題へと移っていた。




