第三十七話 俺の20パーセント
敬由は痛みに耐えながらレオルを見据えつつ伊織を見る。
「だから言っただろ」
伊織が立とうとする。
「伊織さんが言うと説得力ないっすよ。いつも無茶するくせに」
敬由は動かない脚を引きずった。
《迅雷》はもう使えない。
頭には伊織の正しい動きが残っている。だが、伊織と同じにはなれない。
「借り物へ、自分の持ってるもんを足せ」
ボルガの言葉を思い出す。
敬由は戦場ではなく、地下門の構造を見た。
数本の石柱。崩れかけた水路。壁の亀裂。門を支える基礎。
「フィア! あいつの転移先を、あの柱の間にできる?」
「一度だけなら!」
「エリシア、東の水路へ水を! ボルガさんは右の基礎を壊して! リネットは皆を守って!」
「俺は」
伊織が尋ねる。
「伊織さんは道を開けてください」
六人が動く。
フィアが空間を縫い、レオルの出口を一本の柱へ固定する。
エリシアの水が古い亀裂へ流れ込み、ボルガの戦槌が基礎を砕く。
リネットの盾が落石を受け止めた。
伊織は白蓮へ風をまとわせ、敬由の前にある瓦礫を斬り飛ばす。
道は開いた、だが敬由は走れない。
代わりに、リネットの盾術で一歩を耐え、ボルガの槌術で身体を回し、伊織の風を短剣へ乗せた。
三人の技と、自分の現場経験。
敬由は水路の要石へ短剣を打ち込む。
門の基礎が傾き、空間そのものが歪んだ。
「神器の力を使わないだと……?」
レオルが初めて動揺する。
「俺の仕事を舐めるな!」
伊織の《雷纏・紫電》がレオルの仮面を断ち、フィアの闇が逃げ道を封じる。
六人の攻撃が重なり、忘却門が崩壊した。




