第三十八話 別々の道
アルノスの住民たちの記憶は戻った。
レオルは瓦礫の中から姿を消していたが、黒印の集団は壊滅。忘却門も二度と起動できない。
敬由は両脚を固定され、病室の寝台へ転がされていた。
「全治二か月」
エリシアが告げる。
「えっ」
「魔力回路の回復を含めれば三か月」
「増えた!」
「自業自得だ」
伊織も隣の寝台で肩を縫われている。
「先輩にだけは言われたくない」
「俺は二週間だ」
「勝ち誇るところじゃないでしょ!」
フィアが二人を叱り、リネットが笑った。
その後、リネットはフィアを城壁へ呼び出した。
「助けてくれて、ありがとう」
「今さら?」
「言うのに時間がかかった」
リネットは拳を握る。
「魔族を許せたわけじゃない。今も怖い。でも、あなたを魔族ってだけで決めつけたことは謝る」
「私も、疑われる前から敵だって決めつけてた」
二人は握手をしなかった。
だが別れる際、リネットの尾とフィアの手が一瞬だけ触れた。
伊織は敬由の病室で、これまで話さなかったことを話した。
転移直後の不安。フィアとの出会い。敬由を守れなかったと思っていたこと。
「俺、守られるだけじゃ嫌ですよ」
「分かった」
「本当に?」
「次は無茶をする前に相談しろ」
「それ、先輩もですよ」
二人は互いに目を逸らした。
結局、七人で一つのパーティーにはならなかった。
敬由、リネット、エリシア、ボルガ。
伊織、フィア。
別々に築いた仲間を捨てる必要はない。
同じ目的地へ向かうときだけ、ともに歩けばいい




