第三十四話 六つの杭
「門を止めるには同時に破壊しないとだめ」
フィアが説明する。
忘却門を安全に止めるには、都市各所にある六つの空間杭を同時に破壊する必要があった。
六人は一人一本を担当する。
皆が動き出そうとした瞬間。
「その魔族の娘を捕えろ」
アルノスの衛兵隊長がフィアの拘束を命じた。
地下の制御室から、フィアの魔力波形と一致する起動記録が見つかったのだ。
「私じゃない」
「魔族の言葉を信じろと?」
衛兵たちが包囲する。
リネットは苦しげにフィアを見た。助けられた事実と、故郷を焼いた魔族への憎しみがせめぎ合っている。
伊織が白蓮へ手をかける。
「伊織さん、斬るのは駄目ですよ」
「邪魔をするなら退け」
「退きません。フィアを守るために街の人と戦ったら、フィアが一番困る」
伊織の目が鋭くなる。
「お前に何が分かる」
「分かりませんよ! 伊織さん、何にも話してくれないから!」
敬由の声が周囲へ響いた。
「俺が弱いからですか。百面鬼がなきゃ役に立たないから、危ないことは教えないんですか」
「関係ない」
「じゃあ何で、いつも勝手に決めるんです」
伊織は答えなかった。
エリシアが二人の間へ入る。
「喧嘩はあとにしてください。まずは記録を見せて」
エリシアが魔力波形を調べる。似ているが、微細な揺らぎが一定すぎた。
「複製されています」
エリシアが結論を出す。
「本人の魔力なら呼吸に合わせて揺れる。これは機械的に繰り返しているだけです」
「見せてみろ」
ボルガが記録板の裏を外す。内部から黒い羽根が見つかった。
フィアの濡れ衣は晴れた。
衛兵隊長は謝罪したが、フィアは笑わなかった。
「罠か」
誰かが呟く。
これは、彼女を疑えば仲間割れをすると見抜いたレオルの罠だった。




