第二十八話 東へ向かう二人
同じ頃、伊織とフィアもアルノスへ向かっていた。
魔王軍の侵攻記録に、城塞都市地下の遺跡が記されていたためだ。
伊織の右脚は《雷風纏・迅雷》の反動から回復していたが、長時間の使用は禁止されている。
「イオリ、あの馬車」
「ああ」
伊織は短く返事をする。
街道脇に、車輪の外れた荷馬車が止まっている。
近くには持ち主であろう商人の男がこちらに手を振っている。
「馬車が壊れて動けない。助けてくれ」
商人は助けを求めたが、伊織は地面へ残る足跡を見た。
そこには複数人の足跡がある。
「罠だ」
茂みから盗賊が飛び出す。
伊織が白蓮へ風を流し、一振りで全員の武器を弾く。そして、フィアが闇の影で足を縛る。
「最近、息が合ってきたね」
フィアは得意げに胸を張る。
「お前が勝手な場所へ転移しなければな」
「失敗したのは三回だけ」
「昨日だけで三回だ」
二人は盗賊を巡回している衛兵へ引き渡し、アルノスへ進んだ。
道中の宿で、フィアは角を隠したまま食事を取る。
隣の席では、旅人たちが鬼面の冒険者について話していた。
「ベルク村を一人で救ったらしい」
「Bランクの巨人を素手で砕いたとか」
「複数の属性に適正があるって話だ」
伊織は眉をひそめた。
「半分以上嘘だな」
伊織は呆れたように呟く。
「会ってないのに分かるの?」
「あいつが一人で村を救えるなら、会社であれほど怒られてない」
昔を思い出し、敬由の顔が過ぎる。
「でも、少し嬉しそう」
伊織は答えなかった。
フィアは彼の口元が僅かに緩んだのを見逃さなかった。




