第二十七話 四人の朝
早朝、京野敬由はトイレから戻り自室に入ろうとドアを開けた。
「覗き!」
次の瞬間、リネットの声と共に桶が顔面へ飛んできた。
「痛っ」
その場に倒れ敬由は顔を両手で抑えながら聞く。
「まって! なんで俺の部屋にリネットが!?」
宿の廊下を転がる敬由に扉の向こうから、リネットの怒声が響いた。
「三日前に部屋替えしたでしょ!」
「忘れてました!」
「忘れて許されることと許されないことがある!」
階下の食堂で、ボルガが腹を抱えて笑っていた。エリシアは無表情で朝食を食べている。
「朝から元気ですね」
「顔に桶の跡ついてるんですけど」
「自業自得です」
四人が固定パーティーになって一か月。
敬由はEランク冒険者として、採取、護衛、下級魔物の討伐をこなしていた。
百面鬼の使用はエリシアの管理下に置かれた。使用前後の体調、模倣対象、時間を手帳へ記録する。
「今日の依頼はアルノスまでの資材護衛だ」
ボルガが依頼書を広げながら説明する。
アルノスは魔族侵攻に備える城塞都市。最近、地下水路の拡張工事中に遺跡が見つかり、作業員が行方不明になっているという。
「俺たちは資材を届けるだけだ。遺跡には首を突っ込まねえ」
ボルガは敬由に目線を合わせる。
「俺を見ながら言わないでくださいよ」
「お前以外、誰に言う」
敬由は胸を張った。
「俺も成長しました。危険を見つけても、まずみんなに相談します」
「もっと周りを見て冷静な判断をしてください」
呆れたように言うエリシアの言葉に、ニ人が頷く。




