第二十五話 鬼面への道
レイグラン王国へ向かう街道で、二人は焼けた馬車を見つけた。
「イオリ、あれ」
「あの印は」
黒印の集団に襲われた跡だった。
荷台には、ルーベル周辺の遺跡を示す地図が残されている。そして目的地の一つへ赤い印がついていた。
「タカユキも狙われてる」
フィアが言う。
敬由は百面鬼という仮面を持っている。なら、狙われるのは必然だ。
「急ぐぞ」
「待って、イオリ」
二人が街道を駆け出した直後、背後で空間が僅かに揺れた。
フィアが振り返る。
不穏な空気を感じとる。
「誰かいる」
「どうした」
伊織はフィアを一瞥し周囲を見渡す。
「どのあたりだ」
「分からない」
二人はもう一度、周囲を見渡すが何もない。
「警戒を怠るなよ」
「.....うん」
伊織はフィアにそう告げ先を急ぐ。
黒い外套の人物が、丘の上から二人を見下ろしていた。
『白蓮の適合者まで現れたか』
その手には、顔のない白い仮面がある。
『百面鬼とともに回収する。魔王陛下の新たな時代に、過去の記憶など必要ない』
人影は空間の裂け目へ消えた。
伊織とフィアは気づかず、東へ進む。
「さっきのは、一体」
フィアは考えを巡らせる。
「集中しろ」
「わかってる」
二人は歩みを早める。
六種族と魔族。神器と忘却。世界を再び戦争へ導こうとする者たち。
白蓮の刀身に、三色の光が静かに揺れていた。




