第二十四話 二人旅
カナリスのギルドは伊織をBランク相当と評価した。
三属性と白蓮の実力だけなら、さらに上も狙える。しかし《迅雷》の反動と実戦経験の少なさから、正式なランクはCへ昇格するに留まった。
「十分だ」
「もっと喜べばいいのに」
フィアはからかうように言う。
「目的はランクじゃない」
伊織は掲示板に貼られた一枚の報告書を見ていた。
レイグラン王国東部。黒印の集団による村人拉致事件。古代遺跡から発見された神器。
そして、鬼面をつけた黒髪の異邦人。
「京野」
間違いない。異世界で鬼面をつけ、余計な事件へ首を突っ込む男などあいつしかいない。
「見つかった?」
「ああ。生きてる」
短い言葉の奥に安堵が滲んだ。
フィアは報告書を覗く。
「百面鬼の所有者……この人がタカユキ?」
「おそらくな」
「すごい人なんだ」
「会うまではそう思っておけ」
二人はレイグラン王国へ向かう準備を始めた。
ガランの工房へ挨拶に行くと、老人は白蓮の手入れ道具を渡した。
「いいか、その刀は三つの属性だけで完成するんじゃねえ」
「どういう意味だ」
「白き蓮は、七色に咲く」
「七色?」
「そうだ、いずれ分かる」
伊織は白蓮を腰へ差した。
フィアは収納空間へ荷物を詰め込む。便利そうに見えたが、干し肉の袋が三日前から見つからないらしい。
「本当に入れたのか」
「入れた。たぶん」
「空間の中で迷子にするな」
「そのうち出てくるよ」
「腐ってから出すなよ」
二人は東門を出た。
伊織は前を歩き、フィアが半歩後ろをついてくる。
やがて伊織は歩調を緩めた。
フィアが隣へ並ぶ。
もう守る対象ではない。
互いに間違いを止める相棒として、二人の旅が始まった。




