第十六話 折れた刃
翌日、伊織は冒険者登録を行った。
三属性を見せたため特例を持ちかけられたが、実績がない以上はEランクから始めると自分で決めた。
最初の依頼は商隊護衛。
街道で襲ってきたのは盗賊ではなく、鎧蜥蜴の群れだった。
伊織は雷を身体へ巡らせ、風で間合いを詰めた。片刃剣へ冷気を流し、鎧の継ぎ目を凍らせて斬る。
だが三属性を切り替えるたび、安物の刀身が音をたて軋んだ。
最後の一体を斬った瞬間、剣が中央から折れる。
鎧蜥蜴の爪が迫った。
「くそっ」
その時空間が歪み、伊織の身体が半歩横へずれた。
フィアの短距離転移だった。
「ぼーっとしない!」
彼女の双短剣が蜥蜴の目へ突き刺さる。伊織は折れた剣で首の継ぎ目を断った。
戦いの後、フィアは地面へ座り込んだ。
「空間魔法は連続で使えないんじゃなかったのか」
「使えないんじゃなくて、使うと気持ち悪くなるから使わないだけ」
「同じだ」
「なら、助けてもらったから、一回返しただけ」
伊織は水を渡した。
護衛先の町には、古い鍛冶工房があった。看板には白い蓮の印が刻まれている。
折れた剣を見せると、白髭のドワーフが鼻で笑った。
「三属性をこんな鉄屑へ流しゃ、折れて当然だ」
「使える刀はあるか」
「あるにはある。ただし、お前が使えるならな」
老人の名はガラン・ハルバード。
彼は工房の地下から、白い布に包まれた一振りを運んできた。
白銀の刀身に、蓮の花を思わせる波紋が浮かんでいる。
素人目でも分かる。ただの刀じゃない。
ガランが誇らしげに言い放つ。
「世界三大名剣が一つ、《白蓮》だ」




