第十四話 三つの色
「なぜついてくる」
伊織は歩みを止め少女に尋ねる。
「行くところが同じだから」
「俺の行く先を知らないだろ」
「西でしょ?」
少女は得意げに歩き出す。
「そっちは東だ」
フィアは黙った。
空間属性を持つ魔族は、方角を正確に捉える才能がある――と本人は主張していた。しかし実際には、荒野を二度同じ岩へ戻っている。
「空間は分かるけど、地図は別なの」
「便利な言葉だな」
2日が過ぎた、二人は自由都市カナリスを目指す交易馬車と出会う。
伊織は馬車の護衛を申し出た。
「この辺りは最近物騒だから助かるよ」
「こっちも街を目指せるのはありがたい」
夜営の際、自身の属性を知らないと話すと商人が魔力適性を測ることが出来る水晶を伊織に渡した。
水晶の内部は白く凍り、その周りを紫電が駆け抜ける、そして、さらにその周りを緑色の紋様が包む。
「氷、雷、風……三属性だと?」
商人の顔色が変わる。
「王侯に知られれば、軍へ迎えられるぞ」
「興味ない」
「一生遊んで暮らせる程の地位が――」
「人を捜している」
伊織は話を切り上げた。
焚き火の向こうで、フィアがじっと見ている。
「タカユキって人?」
「なぜ名前を知ってる」
「寝言で言ってた」
「嘘をつけ。俺は寝言を言わない」
「『京野、そこは危ない』って」
言いそうな自分が嫌だった。
伊織は敬由について簡単に話した。同じ会社の後輩。明るく、忘れっぽく、余計なことをしてよく怒られる男。
「大切なんだ」
「手のかかる後輩なだけだ」
「ふうん」
フィアは膝を抱えた。
「私も、人を捜してる。正確には、その人が残したもの」
「追われていた理由か」
フィアの笑顔が消える。
「今はまだ言えない」
「そうか」
「聞かないの?」
「俺も全部話していない」
伊織は自分の手を見る。
三つの属性。異世界人。敬由の行方。
誰を信じていいか分からないのは、フィアも同じだった。




