第十二話 パーティー名は却下
固定パーティーの登録には名称が必要だった。
「《漆黒に舞う四天の翼》」
「却下」
「《百鬼夜行》は?」
「私たち、鬼ではありません」
「それなら《タカユキと愉快な仲間たち》」
「戦槌で殴るぞ」
「変な名前ばっかだね」
ボルガとリネットは呆れたように敬由を見る。
「今すぐ決める必要はありません」
結局、名称は後日提出することになった。
初めて四人で受けた依頼は、街の外れに出たEランク魔物の討伐だった。
角兎三匹。森で遭遇した角猪より遥かに弱い。
敬由は百面鬼を装着せず、小盾と短剣を構えた。
「百面鬼は使わないの?」
リネットが尋ねる。
「使うほどじゃないなら、自分の力で戦いたい。何でも借りてたら、俺の技が一個もなくなるから」
「いい心がけです」
「師匠に褒められた」
「ですから師匠ではありません」
戦闘が始まる。
一匹目の突進を避けようとして、敬由は尻餅をついた。二匹目には盾ごと転がされ、三匹目を追って木へ頭をぶつけた。
最終的には全員で討伐したが、敬由の活躍は囮になったことくらいだった。
「百面鬼がなきゃ、こんなもんか……」
「昨日登録したEランクなら普通だよ」
リネットが手を差し出す。
今度は一度で掴めた。
帰り道、敬由は三人の少し後ろを歩いた。
リネットの尾が揺れる。エリシアは採取した薬草を確認し、ボルガは今夜の酒について話している。
日本へ帰りたい気持ちは消えていない。百面鬼を狙う者も、夢に現れた声の正体も分からない。
「それでも....」
この世界で自分が立つ場所は、少しだけ見えてきた。
強いから仲間になれたわけではない。
役に立ったからだけでもない。
失敗して、迷惑をかけて、叱られて。それでも次は一緒に行こうと言ってもらえた。
敬由は三人の背中へ駆け寄った。
「そうだ! 《仮面の勇者と三人の守護者》ってどうです?」
「却下!」
「却下だ」
「却下です」
三人の声が綺麗に重なった。自然と笑い声が生まれる。
こうして四人になったパーティーは初めての依頼を終えたのであった。




