革命
「おい!暴れるな!」
郷原に担がれた宍戸は郷原の肩の上でバタバタと暴れていた。
「テメェの持ち方が悪りいんだろうが!!もっとちゃんと持て!!俺がいねえと行き先も分からねえんだろうが!」
騒ぐ宍戸に前澤はタバコに火をつけながら言う。
「お前立場を弁えろ、あくまでお前は案内役でそれ以上でも以下でもねえ、無駄に騒ぐなら置いてくぞ」
「あァ?良いぜ、そしたらもう何も分からねえんだからよ…!」
「黙れ、案内しろ。お前と問答するつもりはない」
「クソが…神田さんに会ったら覚悟しとけよ…!」
「その神田ってのをずいぶんと信頼してるんだな。お前みたいのは人の下につくとは思えないが」
「あの人はバケモンだ…あの人に勝てる人間は存在しない。あの人の理想は実現する。」
「そうかい…それはまた…」
前澤は困ったように頭をトントンと叩く。
「そんなやつがいて…大丈夫なんでしょうか」
森田は前澤に問う。
「大丈夫かどうかの判断はさておき、本来なら戦力を集めたいところだが、時間がない。さっきロスしちまったからな、急いで向かって、向こうさんが混乱してくれたら上々。戦わずに二人とも救えりゃそれに超したことはない。」
「悠長なこと言ってんなよ…革命はすでに始まってる」
「革命?」
久瀬が聞く。
「お前らみてえに自分から管理されにいくような甘ったれどもには分からねえよ」
「どういう意味だ」
前澤が聞く。
「そのままだよ。能力持ってるだけで国に首輪つけられて、使うのにも許可がいる。どこで使った、誰に使った、何に使ったっていちいち管理されてよ」
宍戸は郷原の肩の上で顔を上げる。
「俺たちはそれをぶっ壊す。能力者が能力者として自由に生きられる世界を作る。今日で全部変わるんだよ」
「それが革命ってやつか」
前澤が煙を吐く。
「ご立派なこった」
「あァ?」
「お前らの言いたいことも分かるが、それをなし得た時どうなるか分からないわけでもねえだろ。大きな混乱が起きる。この国だけじゃねえ、世界を巻き込むことになる。この国が世界のルールからはみ出るってことは、今の情勢も立ち位置も、関係性も変わる。」
「難しいことは知らねえ、神田さんは自由にしてくれると言ってる。それについてくだけだ」
「そうか」
話が終わるとほぼ同時に、広い砂道に囲まれた錆び付いた建物が姿を現した。前澤はタバコを地面に落とし、靴底で火を消す。割れた窓。朽ちた外壁。長い間、人が出入りした形跡などないように見える。
「工場跡って感じだな…ホントにここにいるのか?人気を感じないが」
郷原が尋ねる。前澤が進む。
「こいつが騙してなきゃな」
前澤が宍戸を見る。宍戸は顔を背けたままで目を合わせない。
「嘘だとしてもあの扉を開けりゃ分かる。どちらにせよ気合い入れろ。目的は権藤さんと宮國の救出。余計な戦闘は避ける。いいな」
全員が頷く。
「郷原、そいつは離すなよ。ただ、いざとなったら捨てていい。ここが本丸だったとしたらこいつとの契約は成立してる」
「おす」
「ふざけんな!!」
宍戸が叫ぶのと同時に前澤が扉を開く。広く開けた場所。1階部分には壁に沿うように古びた機械が並んでいる。2階部分の鉄柵の奥に割れた窓から少しの日差しが差し込んでいるが、蛍光灯などの明かりはなく、無造作に散らばったものが日差しを遮り、光が散っていた。
「……静かだな」
前澤が周囲を見渡す。
「誰だ!!」
乱雑に積まれたスクラップの奥から声が響く。数人の男たちが姿を現した。
「侵入者だ!!」
「チッ……!」
前澤が舌打ちする。敵の男の一人が襲いかかる。
「来るぞ!」
武尊はライターを持った手を正面にかざす。
「出ろ…焔舞蝸…!」
「……!」
敵の男は腕で顔を守る形をとる。武尊の手から炎が出るが、すぐに消え煙だけが立ち上る。
「なんだそりゃ?バカにしてんのか!?」
「くそ…!」
敵の男が走り出すと同時に森田が前へ飛び出した。
「僕がいく!膠漆獣衣──鳥獣の型!」
森田の身体をキジの特徴が覆っていく。敵の振り下ろされた拳を翼で受け止めた。
「ぐっ……!」
「フンっ!!」
森田の一撃が男の腹部に突き刺さる。しかしその瞬間、横から別の男が鉄のパイプを振り抜く。
「吹っ飛べ!!」
しかし、久瀬が割って入る。久瀬は振り抜かれた鉄パイプを受け流し、森田と対峙する男にヒットさせる。
「なっ……!」
「うぉおおお!!」
続いて郷原が駆け出す。
「おい!俺持ったままかお前!」
「静かにしてろ!舌を噛むぞ!!」
郷原は宍戸を肩に担いだまま鉄パイプの男との距離を詰める。
「おらァ!!」
「がっ……!」
強烈な蹴りが男を壁まで吹き飛ばした。
「こいつら……!」
残った男たちが一斉に駆け出してくる。前澤はその様子を見て、ため息をついた。
「ったく……戦わずに済みゃ一番だったんだがな」
前澤が前へ出る。
──数分後。
「ぐ……」
数人の萌芽の構成員たちは倒れていた。森田が息を整える。
「これで……全員ですか?」
「だといいけどな、本丸にしちゃ手応えがなさすぎる。」
前澤は周囲を見ながら宍戸に問う。
「他の連中はどこだ」
「さあな」
「お前──」
「俺は全部聞かされてるわけじゃねえ。万が一が起きた時はここに来いってことしかな。」
前澤はしばらく宍戸を睨んだあと、再び歩き出す。
「……今は二人が先だ」
奥の壁にあるいくつかの扉を開けていく。しかし中には錆びた鉄屑が横たわっているだけで何もない部屋が続く。
「真樹……!」
武尊は一心不乱に次々と扉を開けていく。
「息吹」
前澤は武尊の手を掴んで止める。
「気持ちは分かるが落ち着け。」
その時扉の向こうから、僅かに物音がした。全員が身構える。前澤が武尊の前へ出る。
「俺が開ける」
ゆっくりと扉に手をかける。扉が開く。薄暗い部屋。その奥に、人影があった。椅子に座ったまま、俯いている。
「……!」
武尊が目を見開く。森田が言う。
「所長……?」
その声に、人影がゆっくりと顔を上げる。
「……前澤?!」
「権藤さん!!」
前澤は権藤に駆け寄る。
「おい、無事なのかあんた!」
「ああ、身体はな。記録は取られてしまったが」
「とりあえず身体が無事ならいいだろ」
「なぜお前が…」
前澤は黙って権藤の拘束を解く。横から武尊が権藤の肩を掴んだ。
「真樹は!?」
「……」
権藤は押し黙る。
「真樹はどこだ!権藤所長!!」
武尊は権藤の肩を強く揺らした。
「息吹」
前澤が武尊の腕を掴むが、武尊は止まらない。
「所長!!」
「息吹!!!」
前澤の声に、武尊はようやく止まる。
「すまない、私がいながら…」
「……?」
「奴らは私から記録を取りだし、そして宮國くんを連れてどこかへ行ってしまった。私はもう用済みということだろう。私は無様に生かされここに置かれたが、彼女はこれからの革命に必要だと言っていた。」
「……は?」
「抽出した記録をどう扱うかは分からんが、少なくとも奴らに必要なものは取られてしまった。これから変わってしまう、この国の、いや、世界の未来が──。」
ついに50話到達!ここまで読んでくださった皆様に最大級の感謝…!
ここから更にスケールアップしていくWONDERZをこれからもよろしくお願いします!




