先輩⑥
「俺も戦う…!」
「武尊くん!?」
「もういい加減みんなに守られてるだけは嫌なんだ、みんなの邪魔はしないようにするから、頼む。」
「いいんじゃないですか」
久瀬が言う。
「武尊くん、僕がフォローします。やれることをやってください。ただ、もし誰かの命が危なくなったらその時は、任せて下がってください。人の命をかけてまで押し通すようなことではないことは分かっておいてください。」
「ああ、分かってる。ありがとう、久瀬」
「よし!作戦会議は終了したようだな!」
郷原は後ろに落ちた鉄骨を持ち上げる。
「浮筋浮筋…!」
郷原の腕の筋肉が膨張する。
「では、先手必勝だ…!フルスローッ!!!」
郷原は鉄骨を投げつけた。
「うおっ!?」
鉄骨は武尊たちを見下ろしていた驚く敵の寸前、空中でピタリと止まった。
「なに!?」
郷原を横目に久瀬が言う。
「やはりなにかの能力者ですね」
敵の1人が答える。
「当たり前でしょう…中庭であの高円寺さんと張り合っている方がいるのでどれほどの実力者かと思えば…子供じゃないですか」
「それを知ってて加勢しないんですか」
久瀬が問う。
「加勢…?あの人の戦いに我々が参加したところで邪魔になるだけだ。」
「そうですか…意見が合いますね」
「?」
「僕らも前澤さんに託してる──。」
「ハァハァ…」
高円寺は腕を抑え肩で息をしていた。
「俺の攻撃は通らねえが…さっきまでと比べるとずいぶんと寒そうだな…!」
氷で覆われた姿の前澤に高円寺が言う。
「言ったろ…寒みいって」
白い息を吐きながら前澤が答えた。
「それがお前の奥の手ってやつか」
「そうだな、あんまりやらねえな…これじゃ濡れちまってタバコも吸えねえんだ。千手寒音、無蒸晶形」
氷で覆われた前澤の身体の表面から、水滴が滴り落ちる。
「なんだよ、氷が溶けてるじゃねえか」
「溶かしてんだよ。テレビとかで見たことねえか?氷ってのは0°Cに近い状態になると柔軟性が上がるみたいでな、意識的にその辺で留めるようにしてんだ」
「なるほどな…さすが頭ってとこか」
「頭じゃねえ、先輩だ。デカい口叩いちまったからな、後輩らにかっこ悪いとこ見せられねえんだ…!」
前澤が高円寺に向かい飛びかかる。
「…!無鉄砲!!」
パチンコ玉の弾丸は前澤の身体の氷に当たるが、氷は割れずに衝撃を吸収するようにへこみ、その場に落ちる。前澤の蹴りが高円寺の顔面にヒットする。
「…!!」
高円寺は後ろへ飛ばされる。立ち上がりながら言う。
「さっきまでの氷の塊とか剣は使わねえのか」
「温度上げてるからな、作り物は脆くて使えねえんだよ」
「そうか…じゃあステゴロだな。」
高円寺は前澤に飛びかかり氷の身体に数発の拳を叩き込む。氷は衝撃を吸収し高円寺の攻撃を防ぐ。
「ヤケんなったか!?」
前澤の拳が高円寺の顔面に突き刺さる。だが、高円寺はすぐに向き直り前澤に拳を打ち込む。
「んんっ!!!!」
高円寺の打ち込む拳は前澤の氷に衝撃を吸収される。が、少しずつ氷を溶かす速度を早めていた。思わず前澤は距離をとる。
「お前どんだけタフだよ…!」
前澤は高円寺を見て言う。
「俺にも背負ってるもんがあるんだ…お前のことは嫌いじゃねえが…負けられねえんだ」
「根性ってやつか…敵ながら天晴だよ高円寺」
前澤は高円寺を見て笑った。
「余裕ぶってるがお前もそれ、長くないんじゃねえのか?」
前澤の足元には大きな水たまりが出来ていた。
「通らねえなら通るまで殴るだけだ…」
高円寺はまた前澤の身体に拳を打ち込む。前澤は腕で高円寺の打撃を防ぐが、高円寺の乱打により左腕の氷のほんの一部が割れる。
「うおぉおお!!」
割れた一部に高円寺の拳が直撃する。
「くっ…!」
前澤は後ろへ下がる。前澤は高円寺の打撃を打ち込まれた場所が熱くなるのが分かった。
高円寺は荒く息を吐きながら言う。
「やっと入ったな…!」
「こいつ…!同じとこに何発も…!」
高円寺はその場でトンッと跳ねる。
「まず…!」
前澤は咄嗟に防御の姿勢を取るが、高円寺は瞬間的に前澤の前に現れ、高円寺の蹴りが氷が砕けた同じ場所に当たる。
「くっ…!!」
前澤は飛ばされ、左腕を抑え膝をつく。
「鉄砲撒!!!」
散弾の無数の弾丸が前澤に当たる。
「ぐぁあ!!!!」
砂埃が晴れる。前澤は四つん這いになり、身体の氷は完全に溶けきっていた。高円寺が言う。
「喧嘩はな、テクニックじゃねえ。倒れねえ方が勝つんだよ」




