守られるだけ
「でも僕は友達を助ける…!」
「森田!!」
武尊は森田に駆け寄る。
「よかった…!」
安堵の声を漏らす森田の手足から墨が本へ戻っていく。
「ありがとうケンケン…」
「ごめん森田…俺が何も出来ないから…!」
「ううん、武尊くんが悪いんじゃないから。それより、武尊くん大丈夫?」
「うん、多少痛てえけど全然」
「そっか、よかった…それより郷原くんは」
「あいつ…どこ行っちまったん…」
「武尊!森田くん!」
扉が開き郷原が入ってくる。
「郷原!お前どこに」
武尊が驚くと同時に後ろから久瀬も入ってきた。
「久瀬!!」
郷原が言う。
「さっきこの部屋に入る時に前澤さんが撃たれただろう、少なくとも2人以上がいることが分かったからな、その時にすぐに戻って久瀬くんの加勢に入って連れてこようと思ってな!まあ、加勢は必要なかったみたいだったが!」
「てことはあいつは…」
武尊は久瀬の方を向く。
「言ったでしょう、二度目はないって、それよりその人…」
久瀬がミランダを見る。
「ああ、敵だけど森田がやってくれた」
「そうでしたか、さすがですね」
「ケンケンのおかげさ…とにかくみんな無事でよかった。あとはこの後どうするかだね…」
「前澤さんを助けるか!?」
郷原の言葉に久瀬が答える。
「彼は僕たちの何倍も戦闘経験がある。僕らが割って入ったところで、守るものが増えて邪魔になるだけだ。彼を信じましょう。」
「じゃあどうしたら…俺たちで地下探すか?早くしないと真樹が…!」
武尊の言葉に久瀬が返す。
「地下?」
森田が説明する。
「ああ、推測だけど捉えられてるとしたら多分地下だってことになったんだ。建物の中央って可能性もあったんだけど、見ての通りだから」
森田が窓側を指さす。久瀬が返す。
「なるほど、門番がいるうえでこの構造なら恐らく地下である、と」
「話が早くて助かるよ久瀬くん。ただ、この推測が当たっていた場合、僕らだけで地下を見つけるのは危険かも知れない」
「玉の近くには金がいるってことですか」
「?」
頭を傾げる武尊と郷原を横目に久瀬が続ける。
「相手にとって取られたくない駒の近くに、それを守る実力者を配置しているはずってことです。地下なら尚更迎撃する手筈を整えているかもしれない。」
「なるほどぉ…」
武尊と郷原は手を打った。
「だから逆に、僕らは『地下以外の可能性を潰す』、でどうかな」
「潰す?」
武尊の問いに森田が続ける。
「うん、前澤さんが揃ってから地下に向かったとして、そっちじゃなかったケースが1番ロスになる。だから地下じゃない別の部屋を捜索する。もちろんみんな揃ってだ。何か見つけた場合は速やかに共有、なるべく戦いは前澤さんが来るまで避けよう。」
「そうですね、森田くんの作戦に僕も賛成です」
久瀬が答えた。
「難しいことは分からんが、とにかく全員で動けばいいってことだな!」
郷原が納得したように手のひらを拳で打った。
「じゃあ早く探そう…!」
武尊たちは1階と2階の捜索を終え、最上階にあがる。
「おかしいですね」
久瀬が言う。
「なにがだ?」
郷原の言葉に久瀬が答える。
「1階と2階の捜索を終えて、今僕らがコンタクトしたのは僕が戦った宍戸、森田くんと武尊くんが戦ったミランダ、前澤さんが戦っている男の3人だけです」
「それが?」
「藤丸は所長たちの近くにいるとして、今回の事件の規模感を考えると、組織のスケールとこの建物にいる人数ではイメージが合わない」
「少ないってこと…?」
森田が言う。
「ええ、少なすぎる。もしかして…」
最上階に差し掛かったその瞬間に久瀬が言う。
「伏せて!!」
久瀬たちの頭上を大きな鉄骨が通る。
「なんだ!?」
最上階に4人の男たちが立っていた。口々に舌打ちや不満を漏らしながら、武尊たちを見下ろしている。
「殺していいんだったか?」
誰かが投げやりに言った。
「いたね…たくさん…!」
「そうですね、ここに来て4人とは」
久瀬が前に出た。その時、郷原が久瀬の肩を抑え、前に出る。
「久瀬くん、キミはさっき戦ったばかりだろう、ここは俺が出よう!」
「お気持ちはありがたいですが、さすがに4人は」
久瀬は郷原の腕を下ろしながら言う。
「僕もまだやれるよ…!」
森田も立ち上がった。
「武尊くん、ここにいて。僕らがやる。」
「森田、悪りい。」
武尊が先頭に出る。
「武尊くん…?」
「確かに何も出来ねえけど…邪魔はしないようにする。もう誰かが俺を庇うのは嫌なんだ、守られるだけなら俺はここにいないのと一緒だ」
武尊はポケットからライターを取り出した。
「俺も戦う…!」




