対敵②
「あらお客さん?いらっしゃい」
ブロンドの髪に黒い革のフィットしたパンツ、そして上半身は黒い水着のようなもののみを着用したその女を見て、森田と武尊は目を伏せる。前澤が返す。
「客じゃねえよもてなすなハレンチ女。お前も敵ってことでいいんだよな…?」
前澤の腕に氷の粒が現れる。
「そんなに冷たくしなくてもいいじゃない。まだあなたの質問に答えてないわ。」
「質問?」
「お前は?って言ったじゃない。AdamTerrace、萌芽隊、ミランダよ。」
「要は敵ってことだろ、無駄なラリーさせるんじゃねえよ…!」
「ことを急ぐ男は嫌われるわよ?まずはゆっくりほぐさないと。お名前は?」
「お前の敵だよ」
「意地悪な人…♡」
その瞬間、窓ガラスが割れる。割れた窓から弾丸のようなものが前澤の肩に当たった。
「うっ!?」
「前澤さん!!」
駆け寄る森田と武尊に前澤は返す。
「大丈夫だ。不意打ちとはいえ、こんなもんが当たるとはな…!」
前澤の手には銀色の丸い玉が乗っている。
「パチンコ玉…?」
それを見てミランダが言う。
「パチンコ玉!?やだ、私があなたと熱くやりたかったのに…どうやらあなた『選ばれた』みたいね」
「選ばれた…?…!」
前澤は森田と武尊の頭を押さえ込んで伏せる。壁に当たり床に落ちたパチンコ玉が転がった。
「くっ!」
前澤はミランダを囲むように氷の粒で壁を作り割れた窓の下の壁に位置取る。
「ちっ」
「前澤さん…これは」
武尊の問いに前澤が答える。
「ああ、まずいな挟まれてる」
前澤は割れた窓からパチンコ玉が飛んできた方を覗いた。
「なるほど、中庭みてえになってんのか。上まで吹き抜けてる。てことはやっぱり建物の中央って線はなくなったな。地下だ」
「くっそ、どこにいるかは分かってんのに…!」
武尊は床を拳で打った。
「恐らくだがあの金髪女と今中庭にいるパチンコ玉、パチンコ玉の方が厄介だ。だがそこの金髪女も、さっき瞬殺してやろうと思ったが氷があいつを避けるように曲がりやがった。あいつもやっぱりなんかしらの能力者だろうな」
「避けた…?どうしたら…」
「メガネ、お前この金髪女任せていいか?」
「え?」
「パチンコ玉の方、終わったらすぐに加勢する。今は氷に囲まれてるからこっちから仕掛けなくていい。息吹を守れ」
「守れって…俺も戦えま…」
「お前にはまだ無理だ、ここには岩も石もねえしな」
武尊は唇を噛んだ。
「いいか、メガネ。とりあえず俺は一旦中庭に出る。頼んだぞ…!」
そう言うと前澤は窓から外に飛び出した。
「ちょっと、前澤さ…!」
その言葉を言い切る前に前澤の姿は見えなくなった。
「どうしよう…こんなの…」
森田は振り向き、氷に囲まれたミランダを見た。
「僕たちにできるかな…」
「お前かパチンコ玉の」
「ああ、そうだ」
「その格好はなんだ、暴走族かなんかか」
「元な。連れが死んで辞めた。果核四番、高円寺俊だ」
「前澤だ、悪りいがお前の昔話を聞いてやれる時間はない。後輩待たせてるんでな…!千手寒音!」
前澤が振った腕から氷の粒が空中に散布する。その氷の粒はひとつに集まり巨大な円錐形の氷の棘となった。
「雹業!!」
巨大な氷の棘は高円寺に向かって飛んでいく。
「族弩制限…!無鉄砲!!」
氷の棘にパチンコ玉が当たる。数発当たりその棘は砕けた。
「派手な力だな」
高円寺は前澤に笑いかける。
「お前のはなんだ」
前澤は高円寺に問う。
「俺のはお前と比べりゃ地味なもんだ…!」
ピュンッ!
高円寺の下げた腕から放たれたパチンコ玉が前澤の顔をかすめた。前澤の顔から流血する。
「まるで拳銃だな…!」
前澤は血を拭いながらニヤリと笑う。前澤は足元に氷の踏み場を作る。そこを滑るように凄まじい速度で高円寺に近づく。
「氷剣!」
氷で作った剣を高円寺に向かって振り抜いた。
「くっ!」
高円寺は防御体勢を取るが、後ろへと吹き飛ばされる。
「んんっ!!!」
前澤はその剣を更に高円寺の着地点へ投げつけた。氷の剣は突き刺さり大きな砂埃が舞った。
「ふう…」
前澤は大きく息を吐いた。
ガラガラ…
砕けた氷を避けるようにして高円寺が出てくる。
「やっぱこんなもんじゃなかったか…」
前澤のセリフに高円寺が答える。
「いや、ちゃんと痛えよ」
「お前ぐらい強いやつばっかなのか」
「そうだな、俺より強いのもいる」
「そうか…そりゃ残念だ──」
「どうしよう、武尊くん」
「とりあえず…氷で囲まれてる間は大丈夫なんじゃないか…?」
「そうだよね…その間に前澤さん戻ってくるよね…!」
氷に囲まれたミランダを見ながら武尊と森田は言う。
「でも女性だよね」
「そうだな」
「ちょっと僕にはハードルが…」
「こんな時に何を言ってんの?」
「知ってるでしょ、僕が女性苦手なの」
「知ってるけどそれどころじゃないって話!」
「それどころとかないの!苦手なもんは苦手なの!無人島でどれだけお腹が空いててもトマトは食べられないの!」
「お前トマト嫌いなのか…トマトのなにが嫌なの?」
「あの食感と潰れる感じが…」
そんな会話が続いている時、しゃがんでいる森田の膝に何かが当たる感覚がした。
「水…?」
森田は驚くようにミランダの方を見る。その瞬間森田の頭部にミランダの蹴りが入る。森田は蹴り飛ばされた。
「ぐあぁっ!」
「森田!」
吹き飛ばされた森田に武尊が近付く。
「大丈夫か森田」
「うん…それより、氷…!」
氷はミランダの通り道の箇所のみが溶けていた。
「熱…かな…!」
ミランダが言う。
「細かい氷の粒で作ってあったからなかなか溶けなくて手間取っちゃった…あんな一瞬でこんなことできるなんて、ますます好きになっちゃった…♡」
「どうする…森田…!」
「戦うしか…ないみたいだね…!」
「あなたたちじゃ満足できそうにないんだけど…いいわ、遊んであげる♡」




