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同期たち

同期の面々の職業適性はどうなるのか?武尊は果たして?

「武尊ー!」

今日もいつも通り、ノックもインターホンもなく、真樹が家に入ってくる。

「おはよう、おじさん」

そしていつも通り、武尊の父親の仏壇に手を合わせる。

「よしっ」

真樹が立ち上がる。

「行こっ!」


「そういえば私たちワン校近くて良かったよね」

「なんで?」

「遠くから来てる人はワン校の寮に泊まってるんだって。ワン校ってここと関西の2つしかないじゃん?」

「泊まりたくないって?」

「泊まりたくないよぉ…お風呂キレイか分からないし、お布団もどんなのか分からないし…」

「寮なんてどこもそんなもんだろ」

「やぁだぁ…ばっちぃかもじゃぁん…」

舌を出して嫌悪感丸出しの真樹を見て、いつもどおりの真樹に少しだけ心を軽くしてもらった気がした。

まだ理解しきれていない自分の『能力』。

昨日の久瀬に、悔しさと同時に可能性を感じていた。

「そういえばおじさんのお墓は?どうなったの?」

「どうもなってねえよ」

「えー、仏壇にずっと置いとくわけにいかないじゃん、お母さんがお金貸してくれるって言ってたし、借りたらいいのに。」

「いい、自分でなんとかする。そのためのライセンス。」

「そ、ならいいけど」


37期生はこちら

入口を入ると看板が立てられていた。

「私たちって37期だったよね?」

「確かそう。」

看板に書いてあった矢印の方へ向かった。前とは違う部屋。前よりはだいぶ小規模で、イスも最低限しか置かれていない。そして奥に個室のような部屋がある。


「おはようございます、どうぞこちらに。」

アレンとはまた別の、スーツを着た男が促している。

「息吹武尊と宮國真樹です。」

真樹が代表して伝える。

「本日の講習を担当します、大林といいます。よろしくどうぞ。皆様お揃いになるまであちらで座ってお待ちください。」


着席すると、武尊の隣に男が座ってきた。

「やあ、仲が良いんだね君たちは」

確か、くじの当たりがわかる人。

「まあ、昔馴染みなんで」

武尊は怪訝そうに答える。

「そんなに怖がらないでくれ、同期なんだ、仲良くやろう。僕も一人で不安なんだ。」

「あ、そうすか。」

「息吹武尊くんと、宮國真樹さん、だよね?改めて、藤丸聖(ふじまるこうき)だ、よろしくね。」

握手を求められる挨拶なんてこの時代にまだあるんだな、なんてことを思いながら武尊は手を握り返した。

「おはようございます、こちらへどうぞ」

大林教官の声と同時に入口の方に目を向ける。

「…!」

「久瀬涼太郎です。」

部屋中がキュッと冷えたような感覚がする。

「久瀬くーん!」

急に隣に座っていた藤丸が声をかけた。久瀬も虚をつかれたような顔をしてこちらを見ている。

「ほら、久瀬くんもこっち座りなよ。」

久瀬は促されるままに武尊のすぐ後ろに着席した。

「いやー、それにしてもキミの能力すごかったよねー、僕ずっと震えてたよ」

藤丸に言われた久瀬は少し困ったように笑った。

笑顔で久瀬に話しかける藤丸を見て、ふと我に返った。そうだ、確かに恐怖したことは確かだ。圧倒的な差を感じて打ちのめされもした。しかし、自分たちは同じだ。マイノリティの中に仲間を求めるのはごく自然なことで、藤丸はなにも変わっちゃいない。武尊は意を決したように後ろを向いて手を差し出した。

「俺、息吹武尊。よろしく。」

「久瀬涼太郎です。よろしく、おねがいします。」

「なんか同期って感じ出てきたね。」

藤丸が嬉しそうに微笑む。武尊も照れくさそうに微笑んだ。

「おはようございます!」

暑苦しい声が廊下の奥から聞こえてくる。もう登場しなくても分かる。

「37期、郷原諭、よろしくお願いします!」

「やっぱあいつか」

引いた顔で見ている武尊とは裏腹に藤丸はにこやに返す。

「元気があっていいじゃない」

その郷原が真っ直ぐこちらへ向かってくる。

「え?え?」

戸惑う武尊を間に挟んだ状態で武尊の後ろに座っている久瀬に声をかけた。

「久瀬くん!昨日の凄かった!俺怖いの苦手だから本当に逃げ出したかったよ!よろしくね!」

「みんなもよろしく!郷原諭だ!」

武尊は知ってるよ、と思いながらも軽く会釈をする。

郷原は久瀬の隣に座った。

「全員揃いましたね、改めまして本日の講義を担当します大林修です。」

「本日は皆さんの志望をうかがいます。」

「志望?」

「今後ライセンスを取ってからの進路については各自ご自由に決めていただいて構いませんが、WSAの管轄している企業や、国営企業へのご希望があれば、当校から推薦状を提出できます。志望先で必要とされるスキルや知識を身につけ、しっかりとご自身の能力への理解とプロワンダーとしての経験を積んで頂きます。」

「それはどっちがいいとかあるんですか?」

候補生が聞いた。

「報酬という意味でいえばWSA管轄企業様の方が断然いいことが多いです。平均すると同じ業態で民間企業様のおよそ3倍です。」

「そっち以外なくね?」

武尊は真樹に問いかけた。

「でもきっと向き不向きあるから、どういうお仕事を紹介してもらえるかは分からないでしょ」

「まあ、確かにそうか」

「それでは1人ずつ個人面談とします。終わった方もこの後に説明がありますので、こちらでお待ちください。ではあちらの個室へ、まずは郷原さん。」

「うっす!」

郷原が元気よく個室へ入っていった。

「結構待つかな」

武尊が気だるそうに言う。

「まあ全部で10人ちょいだしすぐだよきっと」

藤丸が答えた。真樹に言ったつもりで発した言葉に反応されてしまって少し驚いたが、平静を装った。

「そっすかねー…」

「それでは次、元宮さん。」

すぐに次の人が呼ばれた。案外面談自体は短そうだ。

郷原がニコニコしながら戻ってきた。

真樹と話しているうちに次々と呼ばれていく。

「それでは次、息吹さん。」

「お、武尊くんの番だね。」

藤丸が笑いながら武尊を見た。

「武尊でいっすよ」

「わかった、そうする。」

武尊は藤丸に小さく会釈した。


「資料を見たけど、君の能力は、まだ伸びしろがありそうだね」

「そうっすね、自分もよく分かってないんで」

「後天性の発現タイプってことか、なにかきっかけはあったのかい?」

「親父が死んだんすけど、多分それだと思います。他に思い当たることないんで。」

「そうか、それはお気の毒だったね、確かに後天性の発現に見られるのは、強いショックがトリガーだった事例はいくつかある。ただ、現時点で応用も効くし汎用性も高そうだ。我々の見立てでは戦闘部隊向きじゃないかって思ってるんだけど、どうかな?」

「戦闘向きっすか…?」

「うん、戦闘向きって表現はいじわるかな、戦闘でのサポーターとして暗所や籠城戦の際に、こちらの優位性をかなり高めてくれる能力だと思う。今後の君の能力の伸び代次第にはなるけど、戦力の現地調達が可能となれば、アドバンテージはかなり大きい。」

「なるほど…」

「さっき言った通り、民間の警護とか警備よりもずっと報酬もいい。食いっぱぐれることもないからオススメかな」

真樹の言葉が頭をよぎる。


ーーおじさんのお墓どうなったの?


たしかにずっと仏壇に置いておく訳にはいかない。早々に墓を立ててやりたい。

「わかりました。その方向で考えます。」

「良かった、じゃあ君の能力への理解と範囲対象の拡張ができるように、我々がサポートするね。」


「では次、藤丸さん。」

「おや、僕か。」

「いってらっしゃいっす。」

「うん、いってくる」

なんだかもう普通に藤丸とは馴染んでしまったが、彼のペースは心地よいものがあった。後ろでは郷原が久瀬にめちゃくちゃ話しかけている。

「どうだった?」

真樹が聞いてきた。

「戦闘部隊がいいって言われた。」

「ホントに???」

「嘘ついてどうすんだよ」


「では次、宮國さん。」

「ほら、呼ばれたぞ」

「分かってる」

真樹が個室へ歩いていく、藤丸がニッコリと真樹に笑いかけている。

「意外とすぐだったね」

「そっすね、どこ志望したんすか?」

「僕の能力って戦闘向きじゃないんだけど、色々事情もあってさ、部隊志望にしたよ。」

「あ、じゃあ一緒ですね」

「おや?キミも?向かないと思ってたけど、キミにも事情があるのかな、お互い頑張ろう。」


「では最後、久瀬さん」


「えー、皆様の志望を聞き終えました。せっかく仲良くなった方もいらっしゃると思いますが、効率的なライセンスの取得と能力の適正使用を身に付けて頂くために、明日からは志望カテゴリーごとにカリキュラムを分けることになります。」


「まずは医療カテゴリーに、野沢さん、宮國さん、元宮さん、光本さん、石川さん」

「戦闘カテゴリーに、久瀬さん、郷原さん、柿沼さん、小田桐さん、息吹さん、藤丸さん、森田さん、三浦さん、以上です。」


「明日から別々かあ」

真樹は寂しげに漏らした。

「でも同じ建物ではあるんだろ?」

藤丸が気を使って声をかけてきた。

「まあそうですけど」

「別にいいだろ別々でも」

「なんでそんな言い方するの」

「本当に仲が良いね。」


「明日からはいよいよ実習形式となります。カテゴリー別にカリキュラムが変わりますので、明日はお間違えのないように。」

ついに実習が始まる。自分の能力がどれだけのものかも分からない。しかし、この時点で武尊は期待の方が大きくなっていることを感じていた。

読んで頂きありがとうございました。

次回、実習へ…!

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