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良きお家のお方

圧倒的な天才。皆様の頭で美少年を補完して読んでもらえると有難いです。

私語厳禁ノイズキャンセリング、対象から発生する音を強制的に遮断する、私の能力です。」

部屋中の緊張感が一気に高まるのが分かる。アレンは手をほどいて両手を上にあげた。

「とまあ、こんな感じで能力を披露して頂ければと思います。」

「……ねぇ!あ!出た!」

郷原の声が途端に響き渡る。

「わかっていると思いますが、私はライセンスがあるので講義の秩序保持目的で郷原さんに能力を使用しましたが、皆様は今日は他者への使用はダメですよ。」

アレンがニッコリと笑った。

「適材適所すぎねえか、あの能力」

「ね、先生用って感じ。黙れ!ってことでしょ?」

「ではまず…郷原さん。前に出て自己紹介を。」

郷原諭(ゴウハラサトシ)っす!よろしくお願いします!」

「では能力を見せてください。」

「じゃあ…」

郷原は前に並ぶ机とイスを乱雑に積み上げた。

浮筋浮筋ムキムキィイ!」

高く積み上がった机とイスが片手で軽々と持ち上がる。

「いいですね、筋力増強能力。出力も高水準で扱えています。能力汎用性も非常に高い。素晴らしい能力です。」

「合格っすか!?」

「合格とかはありません。あくまで能力の把握なので。あと、机とイスは戻してください。」

「うっす!」

「あんなに絵に書いた脳筋っているんだな。」

武尊が呆れたように言う。

「ムキムキって言ってたよ、可愛い。便利そうだし。」

「可愛い……?」

「さて、次は…息吹武尊さん。」

「武尊の番だよ!」

真樹は武尊の背中を叩いた。

「ダルいなあ…」

渋々と武尊は前に出る。

「息吹武尊です。20歳です。フリーターです。喪中です。あとは…」

「自己紹介はその辺で結構ですよ。」

「あ、そうすか、これ使っていいすか?」

武尊は教卓の上の白紙を持ち上げる。

「どうぞ。構いませんよ。」

武尊はその紙で折鶴を作る。

生命判断ライフエントランス

途端、折り鶴がパタパタと羽ばたき出した。

「ほう、見たところ操作系ではありそうですね。アンケートの能力内容がハテナになってますが?」

「いや、自分もよく分かってないんすよね」

「?」

「まだ使えるようになって日が経ってないんで、何が動いて何が動かないとかはよく分かってないんすよ。今のところなんとなく直感で動くと思ったものが動くというか」

「伸び代がありそうですね、ここで理解を深めましょう。」

「あざした」

「続いて、宮國真樹さん。」

「ひぃい…緊張してきた…」

真樹が立ち上がる。

「どうせ誰も期待してないから大丈夫だよ」

武尊の言葉に顔をふくれながら真樹が教壇の前に立つ。

「宮國真樹です。20歳です。独身です。」

「その辺で。」

アレンが制した

「あ、はい…。」

「ではこれをお借りします。」

先程武尊が折った折り鶴を手に取る。

生分組換(ネイチャーメイド)

紙で折った折り鶴は木の置物に変化する。

「変化系ですね、素晴らしい能力です。」

「私もあまりよく分かってなくて…私は多分生まれつきなんですけど、あんまり使うことなくて…ライセンスも別になくていいかなって最近まで思ってたぐらいで…」

「そうですか、ではここでしっかり理解を深めましょう。」

「はい、よろしくお願いします…。」

「続いては…おぉ、久瀬涼太郎さん?」

「あ!あの人!」

真樹が武尊を揺する。前列に座っていた、あの完璧美青年がゆっくりと教壇の前に立った。

「おっ、坊ちゃんはどんなかな?」

珍しく武尊が興味を示している。

「久瀬家のご子息でしたか、気付きませんで。」

アレンが少しかしこまっているように見える。

「特別扱いはやめてください。久瀬涼太郎、18歳です。」

早々に自己紹介を終え、久瀬は手で印を結んだ。

怨霊調節ゴーストマスターズ。」

瞬間、ビリビリと空気に緊張感が混ざる。久瀬の周りに禍々しい渦が現れ、渦の中から青白く不気味な手が現れた。身体を引きづるようにして濡れた髪の女が現れると同時に髪の毛を2つ結びした少女まで現れる。

教室中の机がカタカタと音を立てて揺れている。

「ちょっと待てよ…なんだよこれ…」

武尊の足は震えていた。自分でも制御できないほど。隣に座っている真樹は両手で自分の腕をかかえて、小さくなり下を向いて震えている。息も荒い。教室中の緊張感が今にも破裂しそうな程に膨らんでいた。

「…もう結構です。」

教卓に手をついて俯くアレンが久瀬に声をかけた。

「分かりました。」

久瀬が印を解いて口を開く。

「おかえりなさい」

フッとその禍々しいものは消え去った。ほんの一瞬。ただほんの一瞬だけだったはずなのに、恐ろしく長い時間が経ったような感覚。身体はまだ震えを止めない。幼少期から誰もが持っているその感情を、強烈に刺激された感覚。

『恐怖』

その本能とも呼べる感覚を支配された余韻が、教室中に充満していた。

「以上です。」

ニッコリと涼太郎が笑っている。

「ひっ…」

「なんだよ今の…」

教室中がザワついている。


「あんなこと出来んのかよ…!笑えねェ…!」

武尊はそう言いながら歯を食いしばる。真樹はまだ上を向けないでいた。静寂の中で汗を拭いながらアレンが言う。

「ご伝来の能力ですね。言うまでもなく出力、戦闘適性共に最高水準です。」

「ありがとうございます。」

当然だと言わんばかりに久瀬は席へ戻って行った。

「えー、では次は気を取り直して、藤丸さんこちらへ。」

その先の人たちのことは、よく聞いていなかった。藤丸って人はくじの当たりが分かるって笑ってた。他にも指の多い男がいたり、髪の毛がどうとか、犬とかもいた気がするが、よく覚えていない。久瀬の恐怖にあてられて以降、視界も曖昧だった。

「では、これで皆さんの能力が把握出来ました。本日は以上となりますが、今後はここにいる方々は第37期候補生となります。年齢や生い立ち、様々いらっしゃいますが言わばクラスメイトになりますので、これから仲良くお願い致します。」


「すごかったね」

帰り道、真樹が口を開く。

「うん」

武尊は心ない返事で応答した。

「あんな人初めて見た」

「うん」

「私、できるかな?」

「やめてもいいんだぜ?」

「やだ、やる、頑張る」

武尊はなんとなく悔しかった。勉強も好きではないがそれなりに出来たし、運動も大抵できた。学生時代も目立ちすぎず地味すぎない絶妙なポジションで居続けられたのも、そういった器用貧乏が上手く作用していたのだろう。だが感じたことのなかった圧倒的な差を初めて感じた武尊の心境に少しの変化があった。武尊はまだ冷たさの残る拳を握りしめる。

「なんか、燃えてきた」

読んで頂きありがとうございました。

燃える主人公武尊、今後の成長に期待してください。

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