いざ敵陣
「光本!」
武尊たちは医療班の光本を呼び出していた。
「ずいぶん集まってますね」
光本は武尊を含めた5名のチームを見て言う。
「まあな、俺たちで行くことになった」
「そうですか、向こうの人数が分からないのでなんとも言えませんが…多すぎても良くないですからね」
「戦わずに助けられりゃそれに超したことはねえ」
前澤が言う。
「あなたは…?初めて見ますが」
「前澤だ、細かいことはいい、少なくとも敵じゃねえ」
「そうですか、分かりました。では早速いいですか?」
「蜉蝣蜥蜴」
光本は目を閉じる。
「場所は分かりました。そんなに遠くない。近くまでご案内します、みなさん覚悟はできてますか?」
「ああ、頼む…!」
一方、AdamTerrace、拠点『家』
「神田さん、連れてきましたよ」
高円寺に連れられて権藤は地下から地上1階の大きな部屋に来ていた。両腕を後ろ手に縛られた状態で、部屋の中央の椅子に座らされた。
果核三番──大久保メモリ
「これが権藤?おじいちゃんじゃん!」
果核五番──豊田里美
「お年寄りには優しくしなきゃダメよ。」
果核二番──藤丸聖
「彼は重要な記録を持ってる。頼むよ、メモリ」
果核四番──高円寺俊
「神田さん、とっととやっちゃいましょう」
果核一番──日野恭平
「これで世界が変わるんだね、神田くん」
「ああ、彼の持っている記憶、これが僕たちの未来を作る大事なピースだ。実質これがスタートライン、慎重にいこう。」
AdamTerrace創始者、神田光希。
敵拠点にはAdamTerraceの幹部が全員集まっていた。権藤から記憶、記録を引き出すために。
「さっきから記録記録、と。何の事だ?」
権藤が口を開いた。それに対して藤丸が言う。
「権藤所長。とぼけたって無駄ですよ、あなたの記録を抽出する準備が出来てないわけないでしょう。全ての準備が整ったからこそ、今回あなたをここまで連れてきたんですから」
「準備か…お前たちはどこまで知っている?」
「ミト・ゴードン、その名と異能社会の起源が繋がっていると」
「勉強熱心だな…お前たちがまっすぐにプロを目指していれば優秀なプロワンダーとしてこの国の誉れとなったであろうに」
神田が口を開く。
「権藤所長、そのあなたのいうこの国がこれまで隠してきた過去と我々に吐き続けてきた嘘。これを白日のもとに晒し、我々は与えられざるものたちの目を覚まさせる。」
「それがお前たちの言う『革命』というわけか。その隠された過去とやらを暴いてどうなるかはわかっているのか?まだまだ浅はかな思想にしか見えんが」
「どうなるかなんて自分たちで決めればいい。その過去がわかった時にどうするかを決めるのは、知ったあとにそれぞれが決めることです。人々の生き方を管理しようとする、その自惚れた考えを変えると言っているんです。」
「管理せねば立ち行かない仕組みもあるだろう」
「それは管理する側の一方的な視点です。物事には多角的な視点も必要だ。あなた方管理側は、管理される側の話に耳を傾けない。」
「管理されたくないということか、まるで子供だな。お前たちの思う理想はなんだ」
「──自由ですよ」
「自由…管理の上で成り立つ平和や自由もあるということが分からんのか?旗手を失った軍はやがて道を見失い、やがて壊滅する。国も同じだ。瓦解していくシステム、横行する自由という名の暴力、暴走する民意、容易く想像できる未来だ」
「机上の空論ですね。159年前、能力管理体制が成立してから今日に至るまで、管理され続けてきた民意を解放してどうなるかなんて、誰にも分からない。」
「始めちゃおうよー光希っちー!」
大久保メモリが座っている足をバタバタさせて言う。
「そうだね、これ以上の議論は不毛だ。始めよう。」
AdamTerrace拠点『家』、付近。
「このあたりですね…」
光本は言う。
「これ以上はわからねえのか?」
前澤の問いに光本は首を振る。
「時間が経ってるのでこれ以上は。今でも少しづつ感覚が消えかけてる。これ以上の補足は難しいです。ただ、少なくともこのブロックの中にはあります。」
「仕方ねえ、探すしかねえか…」
「でも、どうやって?人数が少ないとは言え、僕たちは顔が割れてる。見つかれば襲撃される可能性がある。あまりゾロゾロと歩く訳には」
久瀬の問いに前澤は下を向く。
「藤丸さんさえ見つかれば…」
「藤丸…!」
光本のセリフに前澤が答える。
「藤丸ってのともう1人いたんだろ?手が回るワンダー」
「宍戸ですね」
「こっちが分かる顔はその2人か、せめてどっちかでも見つかればな」
「……!じゃあ、僕がやってみます」
森田が本を持ち前に出た。
「現示物語、ケンケンお願い!」
本の中からどろりと墨の塊が飛び出した。
「僕は2人とも顔が分かる。そして僕が見たものは共有できます。」
「そうか!ケンケンは飛べるから索敵にはうってつけだな!」
郷原が手を叩く。
「緊張感がねえなお前は」
前澤の呆れをよそに、キジは飛び出した。
「んじゃ、とりあえず俺らは一旦待機だな。光本、お前は帰っていいぞ。今から24時間以内に俺らの誰からも連絡がなかったら、管理局に連絡入れろ」
前澤はタバコに火をつけながら言った。
「分かりました、健闘を祈ります。息吹さん!」
声をかけられて武尊は光本を見る。
「絶対に無事に助けて戻ってください。」
「分かってる、ありがとな」
しばらくしてケンケンが戻ってくる。
「正義!宍戸って男、見つけたわよ」
「ホントに?!ありがとうケンケン、案内して!」
AdamTerrace拠点『家』、前。
「お?なんだ正義の味方の登場か?」
宍戸は目の前に現れた武尊たちを見て言う。武尊は答えた。
「安い挑発してんじゃねえ…真樹、返してもらうぞ…!」




