急造チーム
「今のままじゃまるで使い物になんねえぞ、息吹!」
前澤の怒号が飛ぶ。武尊は先ほどの『暴発』以降、火の扱いに苦戦を強いられていた。
「さっきのができるならそっから絞るだけだろ」
「わかってますよ…!」
武尊はライターに手をかざす。火はライターから微量の火を吐くばかりで、火力は大きくならない。一方、森田は新たな戦い方を習得しつつあった。
「メガネ、いいじゃねえか、それでお前自身も戦えるな」
「こんな戦い方が…!ありがとうございます!」
「くっそ…森田はあんなに…!」
武尊は唇を噛み締め、ライターに再び手をかざすが火は一瞬だけ微かに揺れる。
「なんで…!」
その時、前澤の端末が鳴る。
「終了だ」
前澤の声かけに武尊が返す。
「ちょっと待ってください、もう少し!」
「ダメだ、あっちが俺らを待つ道理はねえ。これ以上は無理だ。とりあえずお前は連れてくが、あくまで連絡役だ。戦いは俺とメガネでやる」
「くっそ…」
「武尊くん…」
森田は悔しがる武尊をただ見ていることしかできなかった。
「あ、そういえば前澤さん!」
森田は思い出したように前澤に声をかけた。
「なんだ?これ以上はマジで無理だ、交渉なら諦めろ」
「違います、もう一人、声をかけたい人がいます」
「?」
「僕らの同期の久瀬くん。彼に協力を仰ぎたい」
「久瀬…?あの久瀬家の次代か」
「はい。保証はないけど…彼が協力してくれたら戦力になる」
「それはわかるが、着いてきてくれって言って簡単に協力するようなやつなのか?」
「それは…」
「いいですよ」
「え?」
医務室から外に連れ出した久瀬のあっさりとした返答に森田と武尊は驚く。
「そんな簡単に…?」
「ええ。元はと言えば僕が負けたからこうなった。負けたままではいれませんから」
「負けたって言ってもあれは不意打ちだったし」
「不意打ちだろうとなんだろうと、負けは負けです。そんなことで負けているようでは、僕は僕を通せない。」
「さすが久瀬家だな」
前澤はタバコを吹かしながら言う。
「あなたは?」
「前澤だ」
「前澤…特別臨場許可の出てる『アンライセンスト』2人のうちの1人ですか」
「かっこつけて言えばな、ただの無免だ」
「関西にもう1人って言ってましたね」
森田が言う。
「野口ってのがいるらしいが会ったことはねえ。特別臨場許可っつっても近場しかダメって制限もあるからな、このまま無免ならお互い一生会わねえな」
「ともかく、前澤さん、武尊くん、森田さん、僕の4人で行くってことですか」
「そうだな、あんまり大所帯よりも少数精鋭の方が都合いいだろ」
「わかりました。アテはあるんですか?」
「あるんだろ?」
前澤は武尊を見た。
「はい、医療班の光本ってやつが大体の位置が分かるって言ってました」
「よし、じゃああとはそいつに場所聞くか」
「──待てい!!!」
影から声がした。
「?!」
武尊と森田が驚いて振り向く。
「なんだ!みんなで宮國さん助けに行くのか!俺も行くぞ!」
「郷原!?なんでお前…!」
「久瀬くんの見舞いに行ったら外に出たって聞いたからな!ここに来たら集まってたからこっそり話を聞いていた!」
「全然こっそりじゃなかったけどな」
前澤が言う。
「ともかく!俺も連れていけ!武尊!俺たちアマチュアが勝手に動くのは当然良くないことだ!だが、友達を放っておくのはもっと良くない!」
「郷原…」
「盛り上がってるとこ悪りいが、半端なやつを連れていくつもりはねえ。お前、強いのか?」
前澤の問いかけに郷原は反応する。
「浮筋浮筋…!」
郷原の筋肉が膨れ上がると同時に前澤に飛びかかる。
「デコピン!!!」
大きな衝撃と共に風が吹く。前澤は郷原の攻撃を氷の盾で防いだ。
「動物かお前は…」
前澤はニヤリと笑った。
「どうだ!弱いと思うか!」
「悪くねえが、今からキッチリ選定してる時間もねえ。お前、足並み揃えられるタイプか?」
「努力する!」
「よし、勝手に死ぬなよ脳筋」
「おっす!!!」
真樹と権藤を救うための急造チームが完成した。




