先輩④
「そのゴミみてえな能力の使い方、たった今から叩き直してやる」
「叩き直す...?」
森田は聞き返す。
「今のままのお前らを連れてったところで、いいとこ囮か連絡役ぐらいにしか使えねえ。百歩譲ってそれはいい。仮に離れたときに俺のいないとこで勝手に死なれても困るからな、せめて自分のことを守れるぐらいの力は身につけろ」
「今のままじゃ無理だってことですか...?僕らも一応プロを目指すWLSの教習生です、そんなに簡単には...」
森田の問いに対し、前澤はタバコをふかしながら続ける。
「今回ここにわざわざ乗り込んできて、更に権藤さんとお前らの同期の女子の2人の拉致を成功させてる。ここの戦力が出払ってたとはいえ、一部の戦力でそれぐらいは出来ちまうってことだ。」
「一部...?」
「俺も含め、柳さんと夜月さん、大林さんは別件の事件の制圧に当たってた。出払ってたってのはそれだ。俺らはその事件自体、組織的に繋がってると思ってる」
「WLSの戦力を外に出すために起こした事件ってことですか...?」
「多分な、あくまで予想だ。今能力管理局で捕らえたやつらから事情聞いてると思うが」
武尊は俯き、拳を握る。自らの能力を学び、模擬戦や鬼ごっこ、そして久瀬との戦いを経て強くなったと思っていた。その自覚していた強さは、前澤という強者の前では無力に等しかった。
「どうしたらいいすか...!」
絞り出したように武尊は言う。
「やることは無限にある。が、メガネもお前も、能力自体は面白いもんがある。」
前澤は右手を出す。右手から氷の粒が溢れた。
「千手寒音。俺の能力は身体から氷の粒を出す。お前ら、これどう思う?」
「どうって...?」
「戦闘能力としてどう思うかって聞いてる」
「それは...」
森田と武尊は黙り込んだ。
「その反応が正解だな。この能力自体はどうしたって戦闘には向かねえ。『このままの使い方』ならな。」
「...?」
「能力ってのは解釈だ。自分の中で出来ることってのを制限してるうちはそこを超えることはない。メガネは出したら出しっぱなし、当のお前はアホみてえに無防備の棒になる。俺なら猿どもは無視でお前を狙う。」
「でも...顕現ってそういうことなんじゃ...」
「理解が止まった典型だな。んで、息吹だったか?お前は視野が狭すぎる」
「視野...?」
「能力を無意識下に落とし込むって解釈まではいい線いってる。だが、そこからがまるでなってねえ」
前澤は氷の粒を肩から出して、武尊のように二本の氷の腕を出して見せた。
「...!」
「お前が今やってることはこういうことだ。俺にも出来る。これぐらいでドヤ顔でやれますって顔されてもな。」
前澤は氷の腕を更に大きくしていく。腕は大木のような大きさに膨れ上がった。
「俺が応用するならまずこっからだな、まあこんな戦い方、隙が大きすぎてやらねえが」
前澤の氷の腕は割れて散った。
「息吹、お前たまたまここだったから良かったものの、別の場所、そうだな...運動場だったらどうするつもりだ」
「それは...」
前澤は足元の石を拾い上げて言う。
「お前はこういう石っころがなきゃ戦えないってことか?じゃあ今回お前は行ってなにするつもりだった?相手さんがお前に絶好のロケーションで待ってくれてると?なくても探せばってか?現実的にねえだろそんなことは」
図星を突かれた武尊は言葉が出なかった。
「お前がいじれるもんは石のみなのか?他には?」
「今のとこ石と、砂も少しだけ。この前葉っぱは試したっすけど、どうにもならなかったっすね」
「普段はどうだ」
「普段...?」
「日頃の生活ってことだよ」
「日頃...親父の仏壇のマッチに火付けたり、ゴミ投げてゴミ箱に入れたり...?」
「そんなことしてたんだ...」
森田は武尊の話を聞きながら言う。
「てことは少なくとも火と多少のゴミはお前の能力の干渉があるってことだな」
前澤はライターを武尊に渡した。
「火ィ付けてみろ」
「?」
武尊はライターを押し込む。火がついた。
「やっぱりな」
「はい...?」
「そのライターは昨日からオイルが切れてる」
「...!?」
武尊はライターの中を見る。空だった。
「お前、マッチもライターも火はつくもんだって思ってんだろ、お前の能力の本質ってのは多分そこだ。まあ、噛み砕くとイメージ、だな」
「イメージ...」
「それと、能力を無意識下に落とし込むってのは、お前の意識の外に出すって話だ」
「ちょっと、多すぎて何言ってんだか...」
「要はお前の能力はなにができて何ができねえのか、キャパが分からなきゃ理解もクソもねえ」
「これからお前がやってる無意識風、それを全自動にする」




