先輩③
「聞きたきゃ聞き出してくださいよ…先輩……!」
森田が慌てる。
「ちょっと、待って2人とも!こんなことしてる場合じゃ…」
「野暮な事抜かすなよメガネ…!」
その瞬間、前澤が武尊に飛び込む。
「岩撃!!」
前澤の突進に合わせ、武尊の岩の腕から放たれたカウンターは空を切る。
「?!」
前澤はかわした体制のまま蹴りを放ち、武尊の首に当てる。
「くっ…!」
よろけた武尊にさらに追い討ちをかける。着地したと同時に一気に距離を詰め、武尊の脇腹に打撃を入れた。
「ごふっ…」
武尊は思わず膝をつく。武尊は直ぐに向き直り前澤へ攻撃の姿勢に入るが、武尊の視界から前澤は消えていた。
「なっ?!」
前澤は武尊の足元から現れ、両足を蹴りで払った。体制を崩した武尊の腹部にヒジをねじ込む。
「ガハッ…!!!」
倒れた武尊から少しだけ距離を取り、前澤は言う。
「なんだよ、一端に挑発してきてると思ったら…やっぱお前はダメだわ」
「くっそ…!」
「武尊くん!もうやめよう!別の方法もある!」
森田が必死に武尊に声をかける。
「森田…もうちょい待ってくれ…!」
武尊は膝に手を付き、立ち上がる。
「根性だけはそれなりだな」
「うるせェ……!」
武尊が前澤に向かって駆け出す。
「岩撃!」
「馬鹿の一つ覚えみてえに…それはさっき見たろ!!」
前澤は簡単にかわし、武尊のアゴを目がけて蹴り上げた。
「ぐぅっ…!!!」
「あいつ1人じゃどうにもならねえぞ、ありゃ」
ジョージはポチの上であぐらをかきながら森田に言う。
「分かってるよ…」
「良いのか?見てるだけで」
「良くない…!」
「どうすんだ?」
「助ける…!!」
犬、猿、キジは森田の前に出た。
「みんな、協力して…!」
「モンキーパンチ!」
前澤はジョージの不意打ちの打撃もかわす。
「なんだ、お前らは関係ねえだろ」
「関係ある!友達だ!」
森田が奥から返す。
「青春ってやつか、エモすぎて胃もたれするぜ…!」
「森田…!」
「武尊くん、そういえば初めてだね、チームアップだ!」
「わりい…」
「5対1かよ、イジメじゃねえ?これ」
「どこがですか…!ジョージ!ケンケン!!ポチ!」
3匹は前澤にあらゆる角度から攻撃を仕掛ける。その攻撃に対し防御に徹する前澤を見て、武尊が駆け出す。
「ここしかねえ…!今の俺に出来るありったけを…!」
武尊は岩の両腕を後方にぐっと構える。
「鳥ィ!」
同時に犬と猿は前澤から離れ、キジが前澤の顔面に掴みかかる。
「なんだよ…邪魔…」
「すんません、先輩…!!」
「──岩双撃!!!!」
武尊の両腕から放たれた打撃は前澤を捉える。大きな音を立てて前澤は吹き飛んだ。
「やった!?」
森田が言う。
「ケンケン!」
「なんて力任せな…私だから良かったものの…」
「良かった…無事だっ…」
砂埃が晴れる。倒れているはずの前澤の場所には前澤の形をした氷の像が横たわっていた。
「な?!」
氷の像は砕け、散った。
「──千手寒音、空蝉」
無傷の前澤は砂埃の中から現れた。
「なんで…!」
「お前らとは能力の理解のモノが違う」
前澤の伸ばした右腕から氷の粒が落ちている。
「もう1回だ、ガンキャ…」
武尊は岩の腕が動かないことに気付く。岩のつなぎ目には氷の粒がビッシリと詰まっていた。
「お前ら、終了だ」
キジは羽、犬は両手足、猿は頭を氷の粒が覆っていた。
「みんな!!」
「まだやるか?」
前澤はゆっくりと武尊に向かって歩いてくる。
「くっそ…こんな…!」
前澤は武尊の肩に触れる。武尊の肩に氷の粒が積もっていく。
「武尊くん!!」
その時、氷の粒は砕けて散った。
「え…?」
「言ったろ、終了だ」
「終了って…」
「明らかに俺の勝ちだ、お前らじゃ俺には勝てねえ。」
「……」
「だが、不合格じゃねえな、仮合格ってとこだ。」
前澤はタバコに火をつけた。
「クソ生意気なバカと腰の引けたメガネかと思ってたが…連れてってやる。その代わり文句も言うな。お前らのそのゴミみてえな能力の使い方、たった今から叩き直してやる」




