先輩②
「俺が権藤さんを取り返す…!」
「え…?!」
武尊と森田は驚いて前澤を見る。
「取り返すって…?」
「なんだメガネ、キレそうなのは見た目だけか?バカ共の根城に乗り込んで取り返すって言ってんだよ」
「そんなこと…なにかアテでも…?」
森田は聞いた。
「アテ?ねえよ」
「え…?」
「して、お前ら、強いのか?」
「ああ…勢いだけの人か…」
「アテもなく僕らを?」
森田が前澤に聞く。
「そんなんあとから考えりゃいいだろ、大抵世の中どうにかなるようになってんだ」
「はあ…」
「んで?お前らは何ができる?──」
森田と武尊は前澤に連れられて、教習所内の訓練場に来ていた。森田が前澤に言う。
「前澤さんここのこと詳しいんですね」
「まあ、長いからな」
「35期ってことは修了生ってことですもんね」
「修了はしてねえ」
「は?」
「ライセンスはもらってねえんだ、俺は」
「どうして…?」
「まあそれはいい、ライセンスが無くてもやれることはある。特別時臨場許可ってのが俺には出てる。政府の偉いさんから許可が出た場合は、ライセンス未所持でも戦場に出ていいってわけだ」
「へえ、そんなのあるんですね」
「まあ本来そんなもんライセンス取れてりゃいい話だからな、俺以外には聞いたことねえ、いや、関西校に1人いるっつってたな、会ったことはねえ。」
「なんでそんなに権藤所長を?」
「あの人には返しきれねえ借りがあんだよ、これで取り返せりゃ少しは返せる。で?お前らはなにが出来る?見せてみろ」
前澤は大きな岩に腰掛け、タバコに火をつけた。
「禁煙っすよ」
「バレやしねえよ、灰皿も持ってる」
武尊の注意に前澤は反論した。
「いいから見せろ、お前らが使えそうならいい、使えなさそうならそれまでだ、俺だけで行く」
「アテないんじゃなかったんですか」
「ねえとは言ったが、色んなところに顔が効くからな俺は。調べることはできる」
「そうっすか」
「じゃあまず僕から」
森田は背中のバッグから本を取り出す。その本を抱えて目を閉じる。本の中から墨がどろりと吹き出した。
「現示物語」
森田の周りに犬、猿、キジが現れた。
「なるほど、顕現だな。出力もそれなりだ、現役教習生にしちゃまずまずってとこか」
「ああ?!まずまずだァ?!」
猿のジョージが前澤にくってかかる。
「やめなさいよジョージ、みっともない」
「そうだよ、短気は良くない」
キジと犬が制した。
「なんだ、喋んのかそいつら」
「はい、意思の疎通が本質なので」
「そんだけ意思のある状態でお前の言うことは聞くのか?ちゃんと」
「言うこと聞くというよりも、僕らは平等なので…」
「そうか、十分だ、じゃあ次、お前」
「お前って…」
武尊が前に出る。
「生命判断…!!」
武尊の周りの石や岩が呼応する。ゴロゴロと音を立て、武尊の周りに集まる。
「ほう…?」
前澤は感心したような顔で顎を触った。
「ヒューマロック、シヴァ!」
武尊の肩から腕のように岩の腕が伸びる。
「っし、できた!」
武尊は安堵の表情を見せる。
「ん?で?」
前澤はポカンとした顔で武尊を見る。
「で?とは…?」
「それで終わりじゃねえだろ?」
「いや、これが今のところ最善というか」
「それが今の全力か?」
「そうっすけど…」
「そうか…残念だな」
前澤は立ち上がる。
「メガネ、お前だけ来い。お前はいらん」
前澤は手の甲を払うような素振りをする。
「は?」
「今のお前を連れてったとこで無駄に死体が増えるだけだ、だったら連れてかん方がよっぽどいい」
「ちょっと…前澤さん?!」
森田は前澤を見た。
「これからしようとしてることは、今お前らがやってる教習とはまるで別モノだ。俺は何度も戦いに出てる、だからこそ分かることもある。諦めろ、お前では明らかに力不足だ」
前澤はくるりと後ろを向いて帰ろうとする。その瞬間、武尊の方から石が飛んできた。石は前澤の吸っていたタバコにあたり落ちた。
「なんだ?フラれて癇癪起こしたか、思春期かお前は」
「そんなんじゃねえよ…!」
武尊は下を向いて怒りに震えていた。
「あんたが所長助けたいって言うから、俺も自分で真樹を助けたいって、そう思って覚悟決めてんだよ…!どういうわけか知らねえけど…どこが不合格なのか教えてくれよ…!」
「そんなもん教える義理はねえな」
前澤は再度歩き出す。
「俺は権藤所長の居場所を知ってる」
前澤はピクリと反応して止まった。
「ハッタリで気引こうとしてんなら間違いだぞ…教習生」
前澤はニヤリと笑い、タバコを踏み消した。
「聞きたきゃ聞き出してくださいよ…先輩……!」




