先輩
「君のその能力は、世界を根本からひっくり返せる可能性がある。」
「何を言って……」
「そのうち分かるさ。キミ自身が気付いていない、キミが持つ『可能性』の話だ。」
「可能性…?」
「聞くところによると宮國さんはライセンスも取らずに過ごそうとしてたらしいね」
「ええ、そのつもりでした」
「武尊には感謝しないとだね」
「武尊がなんだって言うんですか」
「武尊が覚醒し、ライセンスを取ることを決めなければ宮國さん、キミはここにはいなかったってことさ」
藤丸は語りながら重い鉄格子の扉を閉める。
「宮國さん、段取りが全て済んだら次はキミの協力を仰ぎにくる。大丈夫、危害は加えない。協力してさえくれれば、キミは無事に帰すよ」
「藤丸さん、あなたは何をしようとしてるの?」
「大袈裟にいうと革命、かな。」
「革命…?」
「WWA、そしてそれぞれの国家政府の能力管理局。今この2本柱でこの世界は成り立ってる。我々AdamTerraceは、ここと並ぶ第三勢力になる。」
「そんなことできるはずない」
「だから革命なんだよ。始点の林檎構想、僕らの為すべきことの、キミはジョーカーになる。」
その頃、WLS。佐久間が教鞭を取っていた。
「以上のことから、約80年前に能力犯罪が増えたことにより、能力管理ライセンス制度が成立。当時はWWAや警察に所属しているワンダーにのみ与えられていたライセンスを、プロに必要な専門知識などを学んでプロとして国を守れるワンダーを排出するために38年前に設立されたのが、このWLSで…」
「武尊」
郷原に声をかけられ、武尊は声の方向を向いた。
「心ここに在らず、だな。無理もないが」
「まあな…」
「俺たちは願っていることしかできない。俺たちはまだアマチュアだ。プロではない。こういう時にライセンスを持っていれば協力することも可能なのだろうが」
「そうだな」
「その為に、最短でライセンスを取得して、プロになろう」
「ありがとう、俺は大丈夫だ」
「あまり気を落とすなよ。信じよう。」
「そうだな…」
郷原の言葉に、武尊は複雑な気持ちを抱いていた。確かに、選択肢がなければ、郷原の言った通りに信じて待つのみだったが、光本が現れ、選択肢が増えたことで、すべきことがなにか、どうすることが『納得がいく選択』なのか。それが分からなくなっていた。
教習後、武尊はひとりでベンチに座っていた。
「武尊くん!」
「森田」
「久瀬くんはまだ医務室だった、花澤先生がいて話は出来なかったよ」
「いいのかな」
「なにが?」
「森田も、巻き込んじまって」
「巻き込まれたって思ってないけど。僕は友達の武尊くんの友達を助けることに協力したいってだけ」
「久瀬は?」
「確かにね…久瀬くんは巻き込むことになるか」
「やっぱり、任せた方がいいのかな…俺らで動くなんて、無謀なんじゃ…」
…ドォン!!
遠くで大きな爆発音が聞こえる。
「なんだ?!」
「また襲撃…?!」
森田と武尊は爆発音の方へ顔を向ける。
「前澤!落ち着け!!」
大林共感の声が聞こえる。
「落ち着け?!なんであんたらは逆にそんなに落ち着いてられんだ!?権藤さんが連れてかれてんだろ!くっそ、報道でもそんな話なかったろ!!なんで伏せた!!」
「混乱を防ぐためだ!理解しろ!!」
「なんか、揉めてるけど襲撃ではなさそうだね」
森田が言った。
「そうだな…あれは…?」
前澤はゴミ箱などを蹴り飛ばしながら武尊たちの方へ向かってくる。
「こっちくるね…」
前澤は武尊たちの前で立ち止まる。
「お前らは…」
「37期、戦闘部隊の森田と、息吹です…」
森田が答える。
「37期…連れてかれちまった女子の同期か」
「幼なじみっす」
武尊が答える。
「幼なじみ…?」
「はい、連れてかれたのは宮國真樹。同期じゃなくて幼なじみっす」
「ほう…」
前澤は武尊の方に勢いよく腕を乗せる。
「!?」
「てめえ、幼なじみが連れてかれてしょぼくれてるタイプのゆとりか?」
「は…?」
「幼なじみが連れてかれて、普段通りに教習して、ツレとこんなとこで駄弁って、悩み相談聞いてもらってスッキリってタイプか?てめえで助けてえとは思わねえのかって聞いてんだよ」
武尊の中で揺れていた天秤。自ら動くか運命に委ねるか。郷原に言われた通り、アマチュアの自分がどう足掻いたって無駄だ、と。運命に従いただ祈ることしか出来ない。しかしそれしかなかった。だが、傾きかけていた天秤が、前澤の挑発ともとれる言葉によって、怒りとともに一気に揺らぐ。
「思ってるよ…!」
武尊は前澤の目をまっすぐ見た。
「口だけじゃねェだろうな…?最近のゆとりは口だけ達者で癪に障るんだよ、そうじゃねえなら手ェ貸せ」
「え…?」
「俺は35期の前澤龍也だ。手伝え。俺が権藤さんを取り返す…!」




