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WONDERZ  作者: シマオヒロ
襲撃編
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28/52

vanishing point

裏切り…!

「宮國さん!」

37期医療班、光本和真みつもとかずまは目を必死に開きながら声を上げた。微かに見える真樹の方へ近付く。

斬塔キルビル

「うわぁ!!」

光本の肩口を宍戸の斬撃が通り抜けた。光本は肩を抑え、その手からは血が流れている。他の教習生の悲鳴があがった。

「ん?斬ったと思ったが…まあいい、勝手に動くんじゃねえよ、次は腕落とすぞ」

「光本さん!」

駆け寄ろうとする真樹の肩を藤丸が抑える。

「宮國さん、これ以上はやめよう。必要以上に傷つけるつもりはない。一緒に来てくれ。」

「藤丸さん…どういうことか説明して。」

「もちろんさ、僕たちの『家』でしっかり説明するよ。」

「家…?」

「ああ、とにかく行こう。これ以上友達が傷つくのを見ていたくはないだろう?」

真樹は肩から血を流して倒れている光本と怯える同期たちを見た。

「私が行けば、誰も傷つけない?」

「もちろんさ」

「ダメ!宮國さん!」

うずくまり、震える声で石川愛いしかわあいが声をあげる。

「愛ちゃん、大丈夫。ちゃんと藤丸さんとお話してくる。」

「物分りがよくて助かるよ」

藤丸はニコリと笑った。

藤丸の後を追うようにして、真樹は扉から出ていった。


「なんということだ、これだけの教官がいながら所長と教習生が連れ去られるとは」

ワンダー社会において久瀬家と同等に名を知られる名家のひとつ、その名家の現当主であり、WLS臨時外部教官の柳宗憲やなぎそうけんは言った。

「賊軍の目的は」

「所長と、37期医療班、宮國真樹の略奪。それ以上のことはなにも」

柳の問いに松岡が答える。

「教習生に怪我人も出したそうだな」

「はい。37期戦闘班、久瀬涼太郎、同じく37期医療班の光本和真。両名ともに花澤教官の治療済みで、光本は軽傷だったため、医療班にすでに合流、久瀬は現在安静にしているところです。」

「久瀬の坊か…我々が外に出ている時にこんなことが」

「それが目的だったのでは」

柳の言葉にアレンが返す。

「というと…?」

「今回、関東地域で7箇所同時多発的に起きたワンダー事件。あれは陽動だったのではないか、と」

「ここの戦力を外に出すためということか」

「あくまで推論にはなりますが」

「周到、内情を把握しているな」

「37期、藤丸聖。奴がここに派遣された諜報員でした」


WLSには警察の捜査が入っていた。

それぞれの教習生たちにも警察の事情聴取がされ、事件概要は見えてきたものの、今回の大規模ワンダー事件と、所長と教習生1名がテロ集団に連れ去られるというWLS設立以来の大事件。

この情報は、国民の混乱を招く可能性があるとして、能力管理局の管轄となり一部の『規制』を以て報道されることとなった。


教室には医療班と戦闘班が合同で集められていた。教壇の松岡は37期生に向かって話し出す。

「今回のことだが、もう知っている通りだ。所長と医療班の宮國が連れていかれてしまった。現在、警察と能力管理局が捜査にあたっている。我々にできることはない。このまま教習を続けたいと思っている。」

「無理でしょそんなの…!」

武尊は机を拳で叩いた。

「息吹、お前は宮國と幼なじみだと言ってたな。お前の気持ちも分かる。だが、我々としても仲間と所長を連れ去られたんだ、悔しい悲しいなんてもんじゃない。こういうことが起きてしまった以上、我々に出来ることは教習を滞りなく修了し、プロワンダーとして他に犠牲者を出さないようにすることだ」

「正論はいいっすよ…!大丈夫だって言いましたよね…!」

「ああ、言った。だからこうして全員集まった。」

前の扉から教官たちが入ってくる。

「今回の件、君たちを守りきれず申し訳ない。」

教官たちは全員頭を下げた。その姿を見て、教習生たちの中に叱責するものはいなかった。


「くっそ…なんで真樹だよ…!」

「我々としても早急な解決に出来る限りの協力はしていくつもりだ。それぞれの心中お察しするが、くれぐれも教習に集中をして欲しい。今回の一件で外に出ていた教官も帰ってきている。これ以上君たちを危険な目に合わせたりしない。」

やり場のない怒りが武尊の中に充満した。教官たちが出ていく中で、机に伏せて強く拳を握った。

「息吹さん」

突然後ろから声をかけられ、振り返る。

「はじめまして、医療班の光本と言います。宮國さんの居場所、僕なら分かります。」

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