同期たち③
敵勢力の登場…!
「ね、勉強って大事でしょ?」
振り返った川越に、医療班の教習生たちが近付く。
「怖かったよぉー!」
泣き叫ぶ教習生に三浦が言う。
「とりあえず、あなたたちは私が守る。大丈夫、安心して。何が起きてるかは分からないけど…!」
同刻、所長室。
「なんだね?君たちは」
所長の権藤は神田と対峙していた。
「AdamTerraceの神田と申します。」
「記憶にないな」
「ご安心ください。これから私たちの名は世界中に知られることになる。」
「何を成そうとしている」
「革命を。」
「大それた言葉を吐くんだな。その革命とこの場所になんの関係がある」
「この場所にはありませんよ。我々はあなたの『記憶』に用がある。記録保存。あなたの能力は1度見聞きしたことを、自身を記録媒体として残す。その記憶は、あなたが任意的に削除しない限り忘れることはない。そして、その記憶は記録となり、世代を超えて引き継がれる。」
「ずいぶんと勉強熱心なんだな。予習済みというわけか」
「あなたのその能力はこの社会の礎だ。ミト・ゴードンという名に覚えは?」
権藤の表情が初めて揺らいだ。
「どうしてその名を……?!」
「やはり『消して』いませんでしたか…!」
「──私語厳禁」
「!?」
瞬間、神田を囲んでいた2名が倒れる。
「ほう…ミュート能力ですか、音が出ていない。体術も素晴らしいですね、スピードと、しっかり急所を狙って確実に2人を昏倒させた。」
権藤の前に割って入ったアレンは握っていた両手を解く。
「権藤所長、ここは私が。」
「ワンダーであることは間違いない。能力がまだ分からないが、あなどるな。」
「承知」
「──禁仇停止」
その時、権藤とアレンは地に伏せた。
「何が起きた…?!」
「力が入らん…!」
「僕の能力、禁仇停止は、僕が対象として視認しているものの筋肉の動きを停止する。安心してください、心臓の筋肉、心筋と横隔膜などは止めてませんから呼吸は出来ているはずです。死にはしない。ただ立ち上がることはおろか、寝返りはうてないでしょう。」
権藤が言う。
「なんて邪悪な否定の能力…お前は一体どんな壮絶な過去を…」
「昔話はまた後ほど。権藤所長、あなたには来ていただきます。」
通信が入る。
「藤丸、権藤は確保した。そっちはどう?」
「今向かってるところだよ。萌芽の宍戸と一緒だ。」
「わかった。君と宍戸だけで大丈夫かい?」
「見くびらないでくれよ。これでも果核隊だ。」
「では僕らは先に戻るとするよ。バニシング・ポイントは任せる。」
「了解。」
ガラガラ…
「藤丸さん…?」
真樹は思わぬ入室者に驚いていた。藤丸の隣にいる見知らぬ男を見て言う。
「その人は…?」
「宮國さん、僕と一緒に来てくれないか?」
「え…?どういう…」
呆気にとられている真樹を横目に、宍戸が動き出す。
「めんどくせえなあ!縛り上げて連れてきゃいいだろ!切斬舞威!!!」
川越が割って入る。
「あなたたち!下がって!」
「なんだ?あいつも先公か…?年増の生徒かと思ったぜ」
「本当に教養のない人たちね…!」
「宍戸、殺すなよ」
「そりゃババア次第だな!!」
宍戸は川越に向かって飛び出した。
「斬塔!!!」
「…!!」
かわした川越のすぐ横に宍戸の斬撃が教室の壁から天井へ向かって伸びている。
「ババアの割に動けんな?」
「殺さないんじゃなかったの…?」
川越の額に冷や汗が流れる。
「お前が死ななきゃいい話だろうが!!」
「── 該当演説!!」
「?!」
宍戸と藤丸の視線が川越とは別の方向へ向く。
「佐久間教官」
「藤丸くん、あなたどういうつもり?何者なの…?」
「ショックだな…WLS37期、藤丸聖ですよ。そんなに影薄かったですか?」
「そういうことを言ってるんじゃないわよ…!」
「温度燗理!!」
川越は視線の外から宍戸の肩に触れる。
「熱っちぃ!!!!」
「本来人に対して使っちゃいけない能力だけど、あなたたちがまだ暴れるっていうなら、この肩、焼き切るわよ。私の能力は触れたものの温度を-30°Cから+100℃まで自在に上下する…!」
「クソが!!!」
宍戸は視線を向けずに腕を振る。川越は後ろに下がりその腕をかわした。
「視線を固定されてちゃ、死角から近付くなんて簡単だから。真後ろは見えないでしょ?あと何回触れればその腕、動かなくなるかしら」
「厄介ですね、佐久間教官」
藤丸はポケットから鉄の塊とゴーグルを取り出す。ゴーグルを装着した藤丸が佐久間に投げたその鉄の塊は一瞬にして大きな音と光を放った。
「やられた…!!」
川越と佐久間はうずくまっている。
「やはり、佐久間教官は対象が見えていないと能力は発動しないみたいですね」
藤丸は耳栓を外しながら言う。
「あなた…ここまで計算してたの…?」
目を抑えうずくまる佐久間に対して藤丸は答える。
「最適解を選んだだけですよ。まあ今は何も聞こえてないでしょうが」
藤丸はゆっくりとうずくまっている真樹に近付く。
「さて宮國さん、行こうか」




