警報
37期生は初日に使った講義室に集められた。
「藤丸さんどこ行ってたんすか?」
「どこって?隠れてたよ」
武尊は藤丸と並んで座っていた。
「隠れてもいいって言ってたからね、戦闘しなくていいならその方がいいし」
「さすがっすね…俺なんかもう…」
教壇には松岡、アレン、佐久間、川越の4人が立っていた。
アレンが話し出す。
「教習中にお騒がせしてすまなかった!これはすぐにニュースで知ることになると思うが、今各地で一斉にワンダーによる事件が起きている」
「だが、各地の警察と管理局のプロワンダーが制圧に当たっている。WLSからも優秀な教官が派遣された。すぐに収まるはずだ。特に心配はいらない。君たちは変わらず、教習に専念してくれ!」
真樹が隣の武尊に言う。
「なんか、怖いね」
「まあ、大丈夫しょ。松岡先生が残ってるうえで優秀な人が派遣されたってことは、少なくとも松岡先生と同じか、それより強い人ってことだろ、松岡先生とかめちゃくちゃ強えぞ」
続いて川越が話し出す。
「戦闘カテゴリーの人たちは初めましてだね!私は川越恵美と言います。今は医療の子たちを見てるんだけど、これからは別カテゴリー同士で、連携をより密に取っていくことになるから、よろしくね!」
川越を見た武尊が真樹に言う。
「キレイな人だな」
「でしょ?私、川越先生だいすき」
「あっちの方がよっぽど花澤麗じゃね?」
「確かに…」
真樹がクスッと肩を揺らした、その瞬間に武尊の額に固いものが当たる。
「痛っ?!」
後ろから花澤が武尊をまっすぐ見ている。
武尊はそっと顔を伏せた。
ガラガラ…
前の扉から白い髭を蓄え、スーツを着たがっしりとした老人が入ってきた。
「所長!?」
川越が一歩後ろへ下がる。緊張感が部屋中に広がるのが分かった。
「所長さんだって、武尊見たことある?」
「初めて見た」
「良いかな?少し喋っても」
教官たちは揃って教壇から降りる。
「急に来てすまない。すぐに退散させてもらうが、一つだけ話しておきたいことがある。」
「私はこのWLSの所長をしている権藤厳という。このWLSが創設された時からここにいる。私はここで多くの教習生と、そしてプロワンダーになっていった者を見てきた。そして、君たちはその次の世代。今、この国で何が起きているかは説明があったと思う。この国を守れ、などと言うつもりはない。それはまだ君たちの役目ではない。だが、いつか前線に立つのは君たちだ。君たちは君たちの未来のために、与えられた力に向き合い、一層真摯に取り組んでもらいたい。」
「まあ、私のような老兵の言葉など、戯言に過ぎないが、君たちの未来のために、どうかよろしくお願いしたい。」
そう言って深々と頭を下げた権藤所長の言葉のあとに、誰一人として口を開く者はいなかった。権藤所長の言葉は、教習生だけでなく、その場にいた教官たちにも刻まれた。
「じゃあね、武尊!藤丸さんも!頑張って!」
「お前もな」
戦闘カテゴリーと医療カテゴリーは再度別れることになり、医療班は別の部屋へ向かった。松岡が教壇に立つ。
「先ほどの鬼ごっこだが、中断したとはいえ鬼側が2人脱落。逃走者は柿沼のみの脱落。逃走者側の勝利だな」
「あのまま久瀬くんとやってたら危なかったな!」
郷原が言う。
「だな…まあ色々掴めたから収穫はあったけど」
「収穫?」
藤丸が問う。
「そうなんすよ、実はヒューマロックの応用で…」
ビーーーーー!
「ん?なんのチャイムだ?」
郷原の言葉に松岡が返す。
「お前ら、ここにいろ、動くなよ」
「え?」
「これはチャイムじゃない。警報だ──。」
ここまで読んで頂きありがとうございました!
次回、第2章最終話です!




