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WONDERZ  作者: シマオヒロ
37期編
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21/53

重圧

久瀬はニコリと笑う。

「ずいぶん余裕だな、これで花子は封じた…!」

「封じた…?」

花子はゆっくりと前へ歩き出す。

「瞬きの瞬間にしか動けないなんて言ってませんよ。捉えた視界の中から完全に消えるその一瞬に、目的地へ瞬間的に到達する、というだけです。」

「なるほど!よっぽどオバケだな!ハッハッハ!」

久瀬は花子を前に置く。


閉扉綴しびら


「くっそ…ヒューマロッ…!」

久瀬の前に現れた扉に花子が入っていく。それと同時に武尊と郷原の両脇に扉が出現する。その扉がゆっくりと開く。

「!?」

2人は一斉に後ろへ下がる。扉の間にいた石人形が扉の中へ引きづり込まれる。

「そんなことも出来んのかよ…!」

扉は次々と出現する。武尊と郷原は扉から逃げまわる。

「捕まったら終わりだろうな!これは!」

「だろうな…とにかく逃げねえと…こんなんじゃ集中できねえ…」

「壊してみるか?!」

「おい!やめろバカ!」

「デ・コ・ピ・ン!!」

郷原の放ったデコピンは空を切る。郷原が引きづり込まれそうになる。

「お前っ!!!」

武尊が郷原の腕を掴み引き戻した。

「お前オバケに物理で対抗すんなよ!マジで脳みそまで筋肉か!!」

「だがこのままではどうにもならんぞ!!」


三散苦吐(さんさんくど)


久瀬は郷原に近付き拳を連打する。

「なんのこれしき!」

防御する郷原がカウンターを狙う。

「そんなものは効かん!!デコピン!」

閉扉綴しびら

また扉が現れる。

「くっ…!」

郷原が攻撃をやめ、前へかわしたと同時に久瀬が郷原のボディへ向けて殴打する。

「力では負けんぞ久瀬くん!」

郷原は力を込める。その瞬間久瀬の殴打は郷原の腹部へ直撃した。

「ぐぅ?!」

郷原は後ろへ吹き飛んだ。武尊が驚くように言う。

「郷原が力負けした!?」

郷原は肩の風船を守りながらすぐに起き上がる。

「…!殴られてこんなに吹き飛んだのは初めてだぞ…!」

「三散苦吐、三撃目の威力を三乗する。先程僕の打撃を郷原さんはガードして受けました。今のが三撃目です。これですぐに立たれたのは初めてですが…驚くほど頑丈ですね郷原さん」

「万能かよ久瀬…!」

「いえ、キミと違って理解が深いだけです。」

「みんなして理解理解とうるせえなあ…!ヒューマロック!巨人(タイタン)!」

武尊は再度石の巨人を構築する。

「武尊くん、キミはこれで一体何をするつもりなんですか?」

「は?どういうこと…」

「石の巨人、確かに面白いアイデアだ。初見なら驚きもするでしょう。ですが、このデカイだけの人形を出して、こちらの動きに集中すると、キミ自身への集中が削がれる。」

「だから何を言って…」

ヒュッ!

武尊の足に石がコツコツと当たる。

「やば…」

「こういうことです…!三散苦吐(さんさんくど)!!」

「ぐぁあ!!!」

「武尊!」

郷原は吹き飛ぶ武尊をキャッチする。

「痛ってェ…腕イッたろこれ…!」

「加減はしましたよ。武尊くん、キミはどうにも意識が定まっていない。」

「どういうことだよ…」

武尊は腕を抑えながら答える。

「テレビゲームで例えましょうか。キミは格闘ゲームをしている最中に、後ろから殴りかかられてもそれをかわせるんですか?」

「…なに?」

「今キミがやってるのはそういうことって話です。目の前のキャラを戦わせるのに、幾つものコマンドを入力しなくてはならない。そこに脳のリソースを使っているから、自分自身への集中が疎かになる。」

「郷原さんは逆に、自らの身体であるが故に、出力は自然ですが限界も自分で決めてしまっている、という感じですか。偉そうに講釈(こうしゃく)を垂れるつもりはありませんが、同じ戦場に立つなら、今のままではとても背中は任せられない。」

「さすがだな久瀬家…!」

「家は関係ないと言っているでしょう。僕は僕のやり方がある。」

「んな事言われたってどうすりゃいいんだ…」

「武尊、ヒントになるかは分からんが、俺の能力は身体能力向上だ。今の久瀬くんの話で言うと、俺は能力で全身に力を込めたりはしない。」

「ん?どういう意味…」

「殴るなら腕、蹴るなら足、守るなら腹といった具合にな、それぞれの箇所に集中する。これは無意識といってもいいな。」

「さっきも言ってたなそれ…」

「武尊くんには僕らと決定的な差がある。それは僕らは生まれた時からこの能力と一緒だということ。長くいるからこそ、理解は深まる。武尊くんはつい最近だって言ってましたね。まだ借り物のような使い方をしている。誰かに借りたのではなく、それは自分の力ですよ」

別の物だという意識があるから良くない…?ゲームのキャラクターとして、操ろうとするから。自分自身の手足を動かすのに意識を割くことはない。それと同列にする…?自分の能力は自分の手足と同じ…。


生命判断(ライフエントランス)…!」


武尊のまわりの石が武尊の肩部分にゴロゴロと集まっていく。その石はもう二本の『腕』となり、武尊の肩から伸びている。武尊はその石の腕で地面を押して立ち上がった。


「なるほど…自分の身体として力も扱えってことか。自分の意識の外じゃなく、無意識に落とし込めるように。今の俺にできる、限りなく無意識に近い形──。さすが久瀬…! 郷原もありがとな。だいぶ分かってきた気がする…!」


武尊の肩部から石の2本の腕がゆらゆらと揺れる。


「これが今俺が出来る最大限の『無意識』!」


「ヒューマロック・シヴァ!!!!」


残り20分。

挿絵(By みてみん)




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