鬼ごっこ⑥
「よし、わかった!やってみよう!!」
郷原と武尊は久瀬と対峙していた。
「郷原さんと武尊くんですか、厄介な…」
武尊が答える。
「厄介と思ってくれてんのか?」
「ええ、あなた方は能力相性がいいでしょう」
「相性…?」
「…?それで、2人でいるのでは?」
「よく分かんねえけど、とにかくやるしかねェ…!」
「武尊!見てみろ!久瀬くんの腹!」
郷原は久瀬を指さす。
「なんだ、焼けてる?」
「ああ、これですか、柿沼くんにやられましてね」
「あいつすげえな」
「柿沼も頑張ったんだな!よし!俺たちも頑張ってみよう!浮筋浮筋!」
郷原は横にあった木をへし折る。
「まずは移動だ!あの岩場へ行くぞ!武尊!」
「どうやって…」
「んんっ!!フルスイング!!!」
郷原が振るった木が周りの木をなぎ倒した。
「武尊!俺の後ろにつけ!道は俺が開ける!」
「脳筋すぎるだろ…!」
久瀬は思わず距離をとる。
「うぉおお!!!」
郷原は木を振り回して移動していく。
「おい!郷原!気をつけろ!飛んでくる木の破片が風船に当たってんぞ!」
「気をつけてるさ!!」
開けた場所に出た郷原はその持っていた木を久瀬に投げつける。
「うぉりゃぁあ!!!」
久瀬はいとも簡単にかわす。久瀬の後方の岩山にあたり、岩山が崩れた。
「よし!出たな!」
「よし!じゃねえよ!危なすぎるだろお前!」
「結果オーライだ!ハッハッハ!!」
「ずいぶん乱暴ですね、当たったらどうするんですか」
久瀬の問いに武尊が答える。
「当たらねえだろ、バカにしやがって…!」
「よし武尊!ここからどうする!?」
「生命判断…!」
武尊は地面に手をついた。崩れた岩山の岩がひとつに積み上がる。
「ヒューマロック…巨人!」
岩の巨人が現れる。
「おお!武尊!すごいな!!そんなことができたのか!」
「そっか、郷原にはまだ見せてなかったな、これが俺の最大火力だ…!!」
「本当に理由なく2人でいたんですね」
「なんだって?」
「武尊くんと郷原さんが2人で行動している時点で、お互いのことを理解しているものだと」
「さっきから何言ってんだよ…!」
「分からないなら、それで。時間もないので、早く終わらせましょう。怨霊調節」
空気が揺れる。ビリビリとした圧力が2人を襲う。武尊は下を向きかけた。途端、郷原が声をかける。
「大丈夫だ!武尊!俺も怖いが2人ならやれる!」
武尊は郷原の言葉を聞き、向き直した。
「ああ…!」
久瀬の隣に2つ結びにスカート、濡れた髪の毛に肩ほどの身長の女の子が現れる。
「さすがに恐怖はもう乗り越えましたか」
久瀬の問いに武尊が答える。
「乗り越えてねえよ…!」
「これは『怪異』と言って、古来から恐怖の対象とされています。伝承や噂話に尾ひれがついて、いつしか絶対的な恐怖として語り継がれていく。ウチは元々霊能力者家系で、僕たち久瀬の家はそういった『怪異』を恐れず、共存するという信念の家柄なんです。」
「なるほど、だから花子さんか」
「ええ、使役する怪異は様々ですが、僕は花子と幼少より共にいます。では、お話はここまでで。いくよ、花子」
「はあ゛い」
武尊と郷原は距離をとった。
「なにをしてくるかわからんな!武尊!」
「とりあえず警戒しねえと、目離すな…」
途端郷原と武尊の間に花子が現れる。
「?!」
パァン!!
郷原と武尊の頭の位置の風船が割れる。次の瞬間には久瀬の隣に戻っていた。
「くっそ…なんだ…何も見えなかった…!」
武尊は考える。
「瞬間移動?動き出しも見えねえなんてことあるか…!?」
「考えても無駄ですよ、あとひとつずつ、終わりにしましょう。」
今度は久瀬が突進してくる。
「ヒューマロック!」
岩の巨人が久瀬を抑えにかかる。久瀬はその腕に飛び乗り巨人の上に駆け上がる。
「なっ?!あのバケモンが…!崩れろ!」
武尊はとっさにヒューマロックを崩した。久瀬はバランスを崩す。
「郷原!」
「おう!!」
郷原は久瀬の落下地点に駆け出す。
「デ・コ・ピ・ン!」
郷原は久瀬に向けて爆発的なデコピンを放つが空を切る。風が起き、崩れた岩から発せられた砂埃が晴れる。久瀬は花子のそばに戻っていた。
「くそ!はずしたか!!」
「郷原!あの花子っての、どう思う?」
武尊は郷原に問いかける。
「全くわからん!全く見えん!ただ、単純にスピードではない気がする!これでも動体視力はいい方だ!」
「そうだよな…一回目の風船割った時も、多分今の郷原の攻撃かわしたのも花子の能力だ。単純なスピード特化じゃないとすると」
「まあ、お化けだからな。そもそも常識が通用するとは思えないが。ともかくホラー映画みたいだな、急に現れたり」
「急に…」
「後ろ振り向いたらいる、みたいなやつだな!あれは怖いよなあ!」
「映画もそうか、一度見ていた場所から目を離して、戻ったらそこに『いる』。」
「やめてくれ武尊!思い出しただけで怖いぞ!!」
「目線は外してない…。警戒して花子は常に見てた。いつ?いつ目線が外れた?郷原と俺の同時に目線が外れる瞬間…?そんな瞬間なんて……」
「……!!瞬きか…!」
「ほう。頭が回ってますね武尊くん。まさにそうです。『一瞬も』目を外さないなんてことは不可能です。瞬きをせずに戦えるなら別ですが。」
「武尊!瞬きをせずに戦うのか!なかなかにストイックだな!」
「現実的に無理だろそれは…!どうする、考えろ…!松岡先生も言ってた…能力に対して『理解』が足りない…理解ってなんだよ…!」
「タネが分かるのと攻略とはまた別の話ですよ…!」
久瀬がまたも突進してくる。
「くっそ…ヒューマロック!!」
武尊は辛うじて石の人形を作り出し、久瀬を抑える。
「これはもう攻略済みでしょう…!」
久瀬は石の人形の腕をとり、背負い投げの要領で地面に叩きつけ破壊した。
「武尊!もうダメだ!目から涙が止まらんぞ!」
郷原はボロボロと涙を流し目を真っ赤にさせている。
「涙…流れる、溜まる、欠伸、泣く」
武尊は父親の葬儀の時に堪えた涙を思い出した。グッとこらえ、こぼれないようにした、あの『感覚』。
「生命判断…」
その瞬間、武尊の涙は丸い雫となり、透明な膜のように武尊の目を覆う。
「郷原!」
武尊は郷原に触れる。
「おお!なんだこれは!目が楽だぞ!瞬きが必要ないくらいに!」
「これで戦える…!」
久瀬はニコリと笑う。
残り27分。




