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WONDERZ  作者: シマオヒロ
37期編
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20/52

鬼ごっこ⑥

「よし、わかった!やってみよう!!」

郷原と武尊は久瀬と対峙していた。

「郷原さんと武尊くんですか、厄介な…」

武尊が答える。

「厄介と思ってくれてんのか?」

「ええ、あなた方は能力相性がいいでしょう」

「相性…?」

「…?それで、2人でいるのでは?」

「よく分かんねえけど、とにかくやるしかねェ…!」

「武尊!見てみろ!久瀬くんの腹!」

郷原は久瀬を指さす。

「なんだ、焼けてる?」

「ああ、これですか、柿沼くんにやられましてね」

「あいつすげえな」

「柿沼も頑張ったんだな!よし!俺たちも頑張ってみよう!浮筋浮筋(ムキムキ)!」

郷原は横にあった木をへし折る。

「まずは移動だ!あの岩場へ行くぞ!武尊!」

「どうやって…」

「んんっ!!フルスイング!!!」

郷原が振るった木が周りの木をなぎ倒した。

「武尊!俺の後ろにつけ!道は俺が開ける!」

「脳筋すぎるだろ…!」

久瀬は思わず距離をとる。

「うぉおお!!!」

郷原は木を振り回して移動していく。

「おい!郷原!気をつけろ!飛んでくる木の破片が風船に当たってんぞ!」

「気をつけてるさ!!」

開けた場所に出た郷原はその持っていた木を久瀬に投げつける。

「うぉりゃぁあ!!!」

久瀬はいとも簡単にかわす。久瀬の後方の岩山にあたり、岩山が崩れた。

「よし!出たな!」

「よし!じゃねえよ!危なすぎるだろお前!」

「結果オーライだ!ハッハッハ!!」

「ずいぶん乱暴ですね、当たったらどうするんですか」

久瀬の問いに武尊が答える。

「当たらねえだろ、バカにしやがって…!」

「よし武尊!ここからどうする!?」

生命判断(ライフエントランス)…!」

武尊は地面に手をついた。崩れた岩山の岩がひとつに積み上がる。

「ヒューマロック…巨人(タイタン)!」

岩の巨人が現れる。

「おお!武尊!すごいな!!そんなことができたのか!」

「そっか、郷原にはまだ見せてなかったな、これが俺の最大火力だ…!!」

「本当に理由なく2人でいたんですね」

「なんだって?」

「武尊くんと郷原さんが2人で行動している時点で、お互いのことを理解しているものだと」

「さっきから何言ってんだよ…!」

「分からないなら、それで。時間もないので、早く終わらせましょう。怨霊調節(ゴーストマスターズ)

空気が揺れる。ビリビリとした圧力が2人を襲う。武尊は下を向きかけた。途端、郷原が声をかける。

「大丈夫だ!武尊!俺も怖いが2人ならやれる!」

武尊は郷原の言葉を聞き、向き直した。

「ああ…!」

久瀬の隣に2つ結びにスカート、濡れた髪の毛に肩ほどの身長の女の子が現れる。

「さすがに恐怖はもう乗り越えましたか」

久瀬の問いに武尊が答える。

「乗り越えてねえよ…!」

「これは『怪異(かいい)』と言って、古来から恐怖の対象とされています。伝承や噂話に尾ひれがついて、いつしか絶対的な恐怖として語り継がれていく。ウチは元々霊能力者家系で、僕たち久瀬の家はそういった『怪異』を恐れず、共存するという信念の家柄なんです。」

「なるほど、だから花子さんか」

「ええ、使役する怪異は様々ですが、僕は花子と幼少より共にいます。では、お話はここまでで。いくよ、花子」

「はあ゛い」

武尊と郷原は距離をとった。

「なにをしてくるかわからんな!武尊!」

「とりあえず警戒しねえと、目離すな…」

途端郷原と武尊の間に花子が現れる。

「?!」

パァン!!

郷原と武尊の頭の位置の風船が割れる。次の瞬間には久瀬の隣に戻っていた。

「くっそ…なんだ…何も見えなかった…!」

武尊は考える。

「瞬間移動?動き出しも見えねえなんてことあるか…!?」

「考えても無駄ですよ、あとひとつずつ、終わりにしましょう。」


今度は久瀬が突進してくる。

「ヒューマロック!」

岩の巨人が久瀬を抑えにかかる。久瀬はその腕に飛び乗り巨人の上に駆け上がる。

「なっ?!あのバケモンが…!崩れろ!」

武尊はとっさにヒューマロックを崩した。久瀬はバランスを崩す。

「郷原!」

「おう!!」

郷原は久瀬の落下地点に駆け出す。

「デ・コ・ピ・ン!」

郷原は久瀬に向けて爆発的なデコピンを放つが空を切る。風が起き、崩れた岩から発せられた砂埃が晴れる。久瀬は花子のそばに戻っていた。

「くそ!はずしたか!!」

「郷原!あの花子っての、どう思う?」

武尊は郷原に問いかける。

「全くわからん!全く見えん!ただ、単純にスピードではない気がする!これでも動体視力はいい方だ!」

「そうだよな…一回目の風船割った時も、多分今の郷原の攻撃かわしたのも花子の能力だ。単純なスピード特化じゃないとすると」

「まあ、お化けだからな。そもそも常識が通用するとは思えないが。ともかくホラー映画みたいだな、急に現れたり」

「急に…」

「後ろ振り向いたらいる、みたいなやつだな!あれは怖いよなあ!」

「映画もそうか、一度見ていた場所から目を離して、戻ったらそこに『いる』。」

「やめてくれ武尊!思い出しただけで怖いぞ!!」

「目線は外してない…。警戒して花子は常に見てた。いつ?いつ目線が外れた?郷原と俺の同時に目線が外れる瞬間…?そんな瞬間なんて……」

「……!!瞬きか…!」

「ほう。頭が回ってますね武尊くん。まさにそうです。『一瞬も』目を外さないなんてことは不可能です。瞬きをせずに戦えるなら別ですが。」

「武尊!瞬きをせずに戦うのか!なかなかにストイックだな!」

「現実的に無理だろそれは…!どうする、考えろ…!松岡先生も言ってた…能力に対して『理解』が足りない…理解ってなんだよ…!」

「タネが分かるのと攻略とはまた別の話ですよ…!」

久瀬がまたも突進してくる。

「くっそ…ヒューマロック!!」

武尊は辛うじて石の人形を作り出し、久瀬を抑える。

「これはもう攻略済みでしょう…!」

久瀬は石の人形の腕をとり、背負い投げの要領で地面に叩きつけ破壊した。

「武尊!もうダメだ!目から涙が止まらんぞ!」

郷原はボロボロと涙を流し目を真っ赤にさせている。

「涙…流れる、溜まる、欠伸(あくび)、泣く」

武尊は父親の葬儀の時に堪えた涙を思い出した。グッとこらえ、こぼれないようにした、あの『感覚』。


生命判断(ライフエントランス)…」


その瞬間、武尊の涙は丸い雫となり、透明な膜のように武尊の目を覆う。

「郷原!」

武尊は郷原に触れる。

「おお!なんだこれは!目が楽だぞ!瞬きが必要ないくらいに!」

「これで戦える…!」

久瀬はニコリと笑う。


残り27分。


挿絵(By みてみん)

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