鬼ごっこ④
柿沼翔太は久瀬と相対していた。
「僕はとことんついてないな…まさか最初に久瀬くんに遭遇するなんて…まだ風船一個で済んでるのは奇跡かな…」
「柿沼さん、あなたはとても賢い。模擬戦闘の時も、森田さんの能力に驚いたせいですぐに終わってしまったけど、あの時も僕が少し動いたら反応してました。」
「さすがだね…気付いてたか」
「ええ。だから僕はあなたを見くびらない。」
「それはどうも…!加熱掌理!」
柿沼の手のひらが赤く光るほどに高温を帯びる。
「僕も最初から本気だよ久瀬くん…!」
「そのようですね」
ドンっ!
久瀬は地面を蹴り急激に距離を詰める。
「やっぱり早いな…!ヒートスラップ!!」
高温を帯びた手のひらを久瀬に向けて振り抜く。久瀬はその瞬間に飛び上がり、木の枝を柿沼に向けて投擲する。
「くっ!!」
柿沼はとっさに避けるが足をかすめる。柿沼は足から流血した。着地と同時に久瀬はまた距離を詰める。
「…!ヒートスラッ…」
久瀬は下から柿沼の肘を蹴り上げる。柿沼の高温の手のひらが当たり、頭の風船が割れる。
「しまった…!」
「終わりです、柿沼さん」
久瀬は袖に隠した木の枝で最後の左肩の風船を狙う。
「ぐ…!まだだ!!」
柿沼はとっさに両手を強く打ち合わせた。
パンっ!!
周りの空気が急激に熱され、風が起きる。その激しい対流により、久瀬はバランスを崩した。
「ここだ!!」
熱された拳は久瀬の腹をとらえる。
「くっ…!!!」
久瀬は後ろに下がり距離を取った。腹のあたりの服が焼き切れている。
「久瀬くん、君は強い。それはみんな知ってる。けど僕もただやられるわけにはいかない…!」
一方、森田サイド。
「森田くん見っけ!」
森田は三浦と対峙していた。
「三浦さん…出来ればあなたとはやりたくないんだけど…見逃してモラウワケニハ…」
森田は目を合わさず答える。
「そんなのダメに決まってるでしょ!模擬戦闘の分ここで取り返さないと!放水鎖業、打ち水!」
三浦の水の槍が森田の風船を狙う。
「…っ!!」
森田は必死に避ける。三浦が畳み掛ける。
「まだまだぁ!!」
「うわぁ!」
森田は三浦の攻撃を避けながら走り回る。
「逃げてばっかりならもう風船ちょうだい!!」
水の弾丸が森田を襲うが、森田は必死に避ける。
「女性とはできるだけ戦いたくないんだけど!風船も渡せない!!」
「頑固者!」
水の弾丸は避ける森田に当たらない。
「うーん、これじゃ当たらないね…しょうがない…本当はまだ内緒なんだけど」
「え…?」
「放水鎖業、切り水!」
三浦の手のひらから超高圧の水の刀が現れた。振るったその水の刀は周りの草をスパッと切断した。
「水圧は下げずに手のひらの出力口を極限まで狭めて圧力をあげる。練習して最近ようやく安定したの、森田くん、申し訳ないけど、あなたで試させてもらう!切らないようにするから!」
森田は肩で息をしながら三浦を見る。
「すごい。能力への理解が深いね、三浦さん」
「私はこの能力と生まれた時から付き合ってきた。周りの子達と違うせいで避けられもしたし、色んな人に迷惑もかけた。おウチの家電を壊しちゃったことも一回や二回じゃない。だからこそ、私はこの力でお父さんとお母さんに親孝行するんだ!」
「すごいな…とっても素敵な理由だ。そんな三浦さんに僕のくだらないプライドで接するのは失礼だね…。」
「どういうこと?風船くれる?」
「ううん、こっちの話。ごめんね、三浦さん。ここからは、僕も本気でいく。」
森田は背中のホルダーから本を取り出した。その本から墨がどろりと吹き出す。その墨は形を成して犬、猿、キジの姿になった。
「…!やっとお出ましだね…!」
「いこう、ジョージ、ケンケン、ポチ…!」
各地で戦いが始まった。残り48分。




