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WONDERZ  作者: シマオヒロ
37期編
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17/52

鬼ごっこ③

「郷原…ありがとな」

「なにがだ?」

「俺一人だったら多分やられてた」

「そんなことはないだろう!場所が悪かっただけだ!」

「そっか」


武尊と郷原は小田桐に勝利し、岩場を探して歩いていた。

「てか、岩場の場所ホントに覚えてないのかよ」

「ああ、こっちだったはずなんだが…」

未だに岩場を見つけられずに生い茂る草場を歩く。

「お前はいいよな、場所選ばないから」

武尊は郷原に向けて言う。

「場所は選ばないが、純粋なパワー上昇能力だからな、元々の基礎能力がものを言う。それに比べ武尊の能力は便利でいいな!」

「扱い難しいんだけどな…」

武尊は足元の葉を拾ってクルクルと回す。

「おお!動かせるじゃないか!」

「こんなん出来てもしょうがねえんだよな…」


「二人で仲良くお喋りか!危機感がないな!!」

「!?」

前方からの声に同時に前を向き直す。

「息吹が2つ、郷原は3つか!優秀優秀!!」

「松岡教官…!」

「2人で固まって動いてずいぶん余裕だな!いいのか?」

「好きで2人で動いてるわけじゃないっすよ」

「ひどいな!武尊!」

「では早速いくぞ2人!構えろ!熱血速攻バーニングファイアー!!」

「くるぞ!」

武尊と郷原は構える。松岡が陽炎にゆらりと揺れ、空気が破裂するような風切り音がする。

パァン!!

郷原の右肩の風船が割れる。

「?!」

松岡はすでに後ろにいた。

「俺の能力は熱血速攻バーニングファイアー!俺の身体能力、主にスピードを爆発的に向上させる!」

「いくらなんでも速すぎだろ…!」

武尊の頬を冷や汗が伝う。

「この能力相手に逃げるは悪手だな、どうする!武尊!」

「どうするもこうするもねえだろ…」

「まだまだいくぞ!構えろ!」

松岡が再度腰を落とす。

「くる…!」

浮筋浮筋ムキムキ!」

途端に松岡の蹴りが郷原の腹に突き刺さる。

「ぐぅっ…!」

「なんだ、防御が間に合ってないぞ!トレーニング1週間では足りないか!」

「トレーニングの時は能力使ってなかったっすよね…!」

武尊が言う。

「そういうことを言ってるんじゃない!考えろ!頭を使え!身体は鍛えてやったはずだ!」

「どういう意味…」

「分からん!どういうことだ武尊!」

「ボケっとするなよ!」

またも松岡が腰を落とす。武尊は足元の葉に目を落とした。

「いくぞ!構えろ!」

「やるしかねえ…!」

武尊は松岡の爆発的なスタートと同時に葉を投げた。

チッ!

松岡は郷原と武尊の寸前で直角に曲がる。止まった松岡の顔の切り傷から微量の血が滴っている。

「ほう!なるほどな!いいぞ息吹!」

「な!?どういうことだ武尊!」

「ほぼ賭けだったけどな…あのスピードは武器にも弱点にもなる。普通ならなんてことない落ち葉も、あのスピードで突っ込みゃ反動もデカいだろ、高速の自転車で顔に虫が当たった時痛いのと同じ原理だ」

「なるほど!すごいな!」

「いいぞ息吹!だが、もう通用しないぞ!」

松岡はゆらりと揺れまた爆発的に加速する。

「くっ…!」

武尊はまたも落ち葉をつかみ投げる。その下を潜るようにして松岡の手が武尊の足を掴んで払い上げた。

「うわっ!」

武尊の身体はくるりと反転し地面に背中を強く打ちつけた。

「痛って…!」

「うむ!お前ら!全然ダメだ!!」

松岡が叫ぶ。

「…?!」

「まず郷原!お前は肉体に頼りすぎだ!基礎能力に依存する分、そこを鍛えるのはいいが頭を使え!なんでも力で解決しようとするな!そして息吹!能力に対する理解が甘すぎだ!お前は逆に自身の能力を知らなすぎる!もっと理解を深めろ!」

「なんか…怒られてる…よな?」

「そうみたいだな!」

「ここでお前たちの風船を割り切るのは簡単だが、それでは意味がない。よく考えろ!」

「はい…」

松岡は踵を返し、手で顔の血を拭いながらまた森の方へ歩いて行った。


「痛ててて…」

「だいぶ背中を強く打ったな、大丈夫か武尊」

「ああ、これも松岡先生の地獄の1週間のおかげかもな…」

武尊は背中をさすりながら答える。

「郷原ってどうしてる?」

「なにがだ?」

「能力への理解ってのがイマイチ、ピンときてねえんだよな」

「さっきも言ったが、俺のは身体能力向上だからな、松岡先生と似た性質だ。力を込める、ということに頭を使ったことはないからな。武尊のは自分の身体じゃない分、難しそうだが」

「だよな…能力への理解か…」

「まだ使えるようになって浅いと言ってたな?」

「ああ…1ヶ月くらいだな」

「初めて使った時はどうだったんだ?」

「初めて?」

「ああ、初めて能力を使った時はいつ、どんな時だった?」

「初めては親父の仏壇のろうそくに火つけようとした時、マッチを持ったら火がついた。」

「それは頭を使ったのか?」

「は?どういうこと…」

「マッチは当たり前に『火がつくもの』だろ?無意識にそう思ってる。俺もそうだ。力を込める、自然に力が入る。こういう意識が大事なんじゃないか?」

「真樹も似たようなこと言ってたな…」

「まあ俺には扱いが難しそうで分からん!はっはっは!」

郷原は豪快に笑っていたが、武尊は考えていた。理解、意識。砂や石、葉への意識、理解。石を積むというイメージを意識してヒューマロックを作り、それを人が動くイメージをして動かした。もっと自分の手足を動かすように自然に…?脳の処理を最小化して自然に使えるようにする…。

「武尊!大丈夫か?考えすぎると熱が出るぞ!」

「お前とそんなところで気が合うとは思わなかったよ。そうだな、ありがとう郷原。」

郷原と武尊はまた歩き出した。

残り50分。


挿絵(By みてみん)

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