鬼ごっこ②
「この調子であと2つもあたしが取ってやるよ…!」
小田桐は不敵な笑みで武尊を見ている。
「やべえな…こりゃ…」
武尊の背中に冷や汗が伝うのが分かる。
「お前をさっさと取って、郷原殺しにいく!」
「殺すのはダメなんじゃねえの…?」
「比喩だよ石頭!カミトリ!」
追撃をかける小田桐に武尊は背を向け、全力疾走する。
「おい!やらねえのか息吹!」
小田桐も全力で追いかけてくる。
「くっそ…動かせるもの…なんか…なんかねえか」
武尊は周りを見回すが、あたりは生い茂る草木しかない。
「ダメだ…ねえ!」
「息吹ィ!終わりにしようぜ!ハリカミ!!!」
無数の髪の針が武尊を襲う。
「くっそ…!!」
「んんっ!!!」
影から現れたものに髪の針は当たって落ちた。
「…!!お前…!」
「ターゲット側からお出ましか…!」
「武尊!大丈夫か!」
「郷原…!」
「武尊!もう1つ取られてしまってるんだな!」
「あいつにな…!」
「郷原ァ!息吹が終わったらお前のとこ行こうと思ってたんだよ、手間が省けたぜ」
「危なそうだな…!よし、武尊、共闘といこう!」
「共闘?」
「ああ!このゲームは一見鬼から逃げきることが目的だが、鬼を減らすことで形勢を変えられる変則的なものだ!ここで小田桐を落とせば、逃げ切れる確率がぐっと高まる!」
「お前意外とそんなこと考えられたんだな」
「柿沼が言っていた!」
「ああ、受け売りでしたか」
「ごちゃごちゃなに話してんだ?!ハリカミ!」
「浮筋浮筋…!」
髪の針は郷原の腕にあたりはらりと落ちる。
「その技は効かん!」
「あっそ!!」
小田桐は距離をつめに駆け出す。
「武尊!キミは何ができる?!」
「手も足も出ねえ…舞台が悪すぎる」
「そうか、キミは確か石系だったな!」
「ああ、岩場とか石さえあれば」
「あっちにあったぞ!俺が小田桐の攻撃をガードする!そこに向かおう!」
郷原は元来た道を指さす。
「わかった!てかお前1人でなんとかならねえの!?」
「松岡先生のトレーニングを見てたろ!スピード競技で小田桐と松岡先生には1度も勝っていない!」
「そっか、なるほど!」
小田桐の攻撃を郷原が凌ぎながら、郷原が示す方へ走っていく。
「2人してダンゴで逃げてばっかりか?!男のクセに情けねえ!」
するとひらけた場所が見えてきた。
「あそこか?!」
森を出たところには広い砂地が広がっていた。
「おい郷原!岩場は?!」
「すまん!道を間違えたみたいだ!!」
「何してんだお前!うおっ!!」
小田桐の攻撃を間一髪でかわした。
「なんだ、こんなに見通しのいい所まで連れてきて、隠れる場所も無くなったじゃないか」
「まずいな…」
郷原が武尊と小田桐の前に立つ。武尊が言う。
「でも…ここなら多少やれる」
「本当か!」
「ああ、砂なら前に触った。決め技みたいなのはねえけど」
「よし、じゃあ俺が最後は決めよう!」
「喋ってる暇はねえ、一気にやるぞ郷原!」
「任せろ!」
「生命判断、砂風!」
「くっ…またこれか…っ!」
小田桐は髪の毛で顔を覆い、砂から守る。
「郷原!俺はこれぐらいしか出来ねえぞ!」
「わかった!任せろ!」
郷原は来た道に戻っていく。
「お、おい?!どこ行くんだよ!」
「ハリカミ!」
砂埃の中から針が飛んでくる。
「…っ!」
武尊はなんとか避ける。
「声か…!」
「当たり!お前が声出しゃどこいるかは分かる!」
「風船の場所分からねえだろ!!」
「どっかしらには当たんだろ」
「不良が…!」
「鬱陶しい!」
小田桐の髪の毛が砂を打ち落とした。
「あの筋肉バカは逃げたか、お前を見捨てて」
「見捨ててねえよ!砂風!」
「芸がねえな!息吹ィ!」
先程よりも大きな砂の渦が小田桐を覆った。
「お前をこのまま閉じ込めておけば、逃げられる時間稼ぎぐらいにはなるだろ!」
「声出したな!そこだ!ハリカミ!!」
「っ!ぐぁあ!!」
「当たったな!?あたしの勝ちだ!」
小田桐は髪の毛を振るって砂の渦を落とした。
「?!」
その瞬間、武尊は声の逆側から小田桐の両足を掴む。
「お前、当たってなかったのか?!」
「チーム戦でブラフ役は勉強したんでね…郷原!!」
「なに?!」
小田桐は目線を森へ移した。郷原が大木を持って駆けてくる。
「おいおい…待て待てバカ!」
「浮筋浮筋ィ…!スイングっ!!!」
バキィ!!!
「ぐぅぅっ!!!」
郷原は大木で小田桐の横腹を殴打した。武尊はあまりの力に腕を離す。小田桐は吹き飛んだ。
「小田桐!大丈夫か!」
郷原は小田桐に駆け寄る。小田桐は咄嗟に髪を硬化して身を守っていた。
「大丈夫じゃねえよ…骨だなこれ…!」
「すまんな!少し休んでてくれ!」
「加減しろよ筋肉バカが…」
「武尊!ありがとう!おかげで勝てたぞ!」
「生きてんのか?小田桐は」
「ああ、あの程度でやられるやつじゃない!」
「頑丈だなお前ら」
鬼側、小田桐ナツ、戦闘不能により脱落。
残り72分。




