接触
「武尊ー!」
帰り道、後ろから聞き慣れた声がした。
「おう、真樹」
「どうだった?そっちは」
「疲れた」
「なにそれ」
「真樹は?」
「大変だよぉ…覚えることいっぱいでさぁ…」
「俺も明日から筆記講習だってさ」
「お、一番苦手なやつきた」
「うるせえ」
翌日、初日の能力測定と同じ大きな部屋に集められた。
相変わらず窓際で一人で座っている森田が目に付いた。武尊は不思議と引かれるように森田の方へ歩き出す。
「森田」
「あっ…息吹くん」
「犬たちは?ポチだっけ」
「ああ、この中だよ」
森田はリュックから古い本を取り出した。
「昨日も言ったけど、別に深い意味があって隠してたわけじゃないんだ。ただ目立ちたくなくて、ちょっとだけ内緒にしてた。」
「まあ、ビックリはしたけど、もう終わったことだからいいよ。この中にみんないるんだ?」
「そう!まあみんなって言うのはちょっとだけ違うんだけど、僕の能力は物語から友達を呼び出すって能力で」
そこからは森田がずっと喋っていた。友達は本の中で暮らしてて、必要に応じて呼んだら来てくれること。喧嘩していて仲直りができていない友達がいること、認めてもらいたい人がいることを楽しそうに喋っていた。
「ご、ごめん、つい夢中に」
「好きなんだな、友達のこと」
「そうだね、みんな大事な友達なんだ」
「じゃあ俺とも友達になろう」
「え?」
「なんか賑やかそうで楽しそうだったし、俺も仲間に入れてよ」
「……うん!」
そうしているうちに藤丸が声をかけてきた。
「おー、武尊!」
「藤丸さん、おはようっす」
「どう?眠れた?」
「眠れてないっすね…なんせ筆記講習って」
「苦手そうだもんね」
藤丸は悪気なく笑う。
「森田くん、昨日はまんまと君にはやられたよ」
「いえ…僕じゃなくてみんなが頑張ってくれて」
すると教壇に女性の教官が立った。
「みなさん!こんにちは!初めまして!本日の講習の担当する佐久間です!」
「お、あの人」
武尊の反応に藤丸が答えた。
「知ってるの?」
「初日にここの場所教えてくれた人っすね」
「すでに面識ありなんだ」
「まあ、面識ってほど大して喋ってないですけど」
「今日は筆記講習を行います!みなさんがプロワンダーとして社会に出た場合に、注意しなくてはならない点をしっかりお伝えしますので、よく聞くように!」
「森田くん」
武尊は森田に向き直る。
「キミはきっと、こういった分野は得意だよね?」
「それは偏見でしかないけど…まさか…その為に友達に…?」
森田は軽蔑の目で武尊を見た。
「違うんだ…そういうことではないんだけど…」
「そこォ!なにだべってんの!!」
佐久間の声が聞こえたと同時に武尊の首が佐久間の方へ向く。
「痛てぇ!」
森田も佐久間の方へ視線が向けられる。森田が佐久間を見ながら言う。
「先生の能力かな、視線が『外せない』…!」
「私の能力、該当演説!私に強制的に視線を集中する。私の講習中はよそ見は許しませんよ!」
「はい…すみません…」
「ではまず、この世界の全体像を説明します。WWAというのは聞いたことありますね?」
WWA、世界ワンダー協会。通称世界の安全装置。国家間の能力戦争や、一国の存亡に関わる事案にのみ介入する、国家の外の組織。武尊も名前は知っていた。
「ここに所属するプロワンダーというのは、一国に属しません。そして更に、この組織のトップ3、通称三天災というワンダーがいます。」
「仰々しい名前だなぁ」
武尊のつぶやきに森田が笑う。すると、小田桐が挙手した。
「結局一番強いのは誰なんすか?」
「一番というのは比較が難しいですが、現代最強と言われているのはデフ・ロイアというワンダーです。詳しいことはわかりません。わかっているのは神の力を使うということと、年齢を聞いてはいけないということ、戦いにおいて最強だということ。」
「なんで分からないんすか?」
「小田桐さん、前向きでいいですね!本人が情報を規制しているってことらしいです。」
「ふぅん…」
「そしてこの三天災の、2人目が…」
それからはWWAという組織の必要性、保たれる均衡の話や、戦争が起きた歴史の話、そうならないための心得などが語られた。
講習を終え、森田と共に教習所の出口へ向かう。
「はあ…しんどい…」
武尊は首を抑えながら言う。森田が答える。
「首が?」
「じゃなくて、覚えられなさすぎて。事前に勉強とかまったくしてこなくてさ、急にライセンス取りに来てるから」
「そうだったんだ、僕は多少予習はしてたから」
「来週の筆記試験ダメだったら補習っつってたよね」
「そうだね」
「それは非常にまずい。頭使いすぎると熱出る」
「ちょっとだけ復習しよっか」
「いいんですか…!森田先輩…!」
「同期だよ。藤丸さんも一緒なら良かったのにね」
「用事あるって言ってたしな、それよりどこでやりますか?森田先輩」
「同期だよ」
同刻、とある場所。
「藤丸、おかえり」
「光希、元気だったかい?」
「うん、問題ないよ。それより、どう?」
「久瀬の次代が同期にいるね、ただ光希が欲しがるような人材じゃないよ。予定通りで大丈夫だと思う。戦力は教官の柳と…、留年の前澤くらいかな。それと、もうひとつ、面白い人間を見つけた。」
「面白い?」
「うん、きっと光希も気に入ると思う。名前は宮國真樹。詳しくはまた話すけど、もう少しだけ見ておきたい。またこちらから連絡するよ。」
神田光希は言う。
「わかった。また適宜連絡をくれ。」
第1章終了です!ここまで読んでいただいた方本当にありがとうございますm(_ _)m次回から第2章突入です!




