天才と孤独③
「大将の登場だ、気張っていこう」
藤丸と武尊の前には久瀬が立っていた。武尊は直ぐに向き直る。
「生命判断、ヒューマロック、巨人!」
石が集まり巨大な人型を形成する。
「発動前に叩く!」
石の巨人は久瀬に向かって飛びかかる。久瀬は少し引いてかわした。
「3対1だ!」
武尊の声と同時に巨人の足元の左右から武尊と藤丸が飛び出す。
「武尊!とにかく久瀬くんを捕まえよう!身動き取れなくしてからゆっくり取ればいい!」
「御意!!」
すると久瀬も同じように2人に向かって駆け出した。
「え?!」
「な…!?」
驚く2人のちょうど間をすり抜けるようにして久瀬が通り過ぎる。その際に武尊のストラップへ腕を伸ばす。指がかかる。
「あぶなっ!」
間一髪で武尊は久瀬の腕をかわした。武尊のストラップが取れかけて揺れている。
「あっぶねえ…」
「能力は警戒してたけどさすがだな、久瀬家。素の能力がずば抜けてる。」
「久瀬家?」
「ああ、まあいわゆる名家ってやつだ」
「やっぱいいとこの坊ちゃんか」
久瀬が答える。
「特別扱いはやめてください。家は確かに少し知られていますが、僕は僕です」
武尊が言う。
「能力使わないのは名家出身の余裕か?」
「いいえ、そんなことはありませんが、そもそもここにはライセンスの取得と併せて基礎能力の向上を目的としての入校ですので、使わずに戦えるならその方が都合がいいだけです。」
「ずいぶんなめられてんな……」
武尊が不敵に笑う。藤丸が武尊に言う。
「一旦立て直しだな、この巨人崩せるかい?」
「あ、なるほど、了解っす。砕けろ!砂風!」
岩の巨人は砂となり視界を遮った。
武尊と藤丸はその間に岩陰に姿を隠す。
「どうしたんすか?藤丸さん」
「作戦を変えた方がいいと思ってね。彼は能力を使わないという制限を自分でかけてる。情けないがこちらからすると好都合だ。そしてもうひとつ、彼は武尊のストラップに触れている。」
「?そうっすけど、それがどうしたんすか?」
「僕が持つよ、ストラップ」
「なるほど、俺が持ってると思ってるから騙せるってことっすね!」
「そう。あともうひとつ、ヒューマロックのことなんだけど……――」
「作戦会議は終了ですか?」
久瀬が問う。
「探す素振りすらなかったね、ずいぶんな余裕だ」
藤丸が返した。
「無理に探して待ち伏せされた方がリスクだと判断しただけですよ」
「ヒューマロック、巨人!(タイタン)!」
武尊は石の巨人を作り出した。
「?…さっきと同じ気がしますが」
久瀬の問いに武尊が答える。
「どうかなっ!!!」
巨人が久瀬に襲いかかる。久瀬は距離をとりつつ、攻撃をかわす。巨人は久瀬を岩場に追い詰める。
「追い詰めた!!」
久瀬は巨人の手をかわす。久瀬の背面の岩にあたり、巨人の手が砕けた。それと同時に久瀬は足元の石を武尊に投げつける。
「!!!」
武尊がしゃがんでかわす。その刹那、久瀬は武尊に向かって猛スピードで駆け寄ってくる。
「まずいっ!」
久瀬は武尊の腰元に触れた。
「なるほど、シャッフルして藤丸さんに持たせましたか」
「ご名答、こんなに早くバレると思ってないけど」
藤丸が焦りながら笑った。
「さすがだね、久瀬くん。武尊のストラップを取りに来るのと同時に、岩山を利用して武尊の巨人まで壊すとは」
「効率がいいと思ったので。」
久瀬は余裕そうに言う。
「くっそ、巨人!」
武尊は改めて巨人を作り出した。
「同じですよ、また」
久瀬はそう言い、巨人の方へ猛進してくる。巨人の手が伸びるが久瀬はそれを難なくかわした。久瀬が巨人の股下を抜けようとした時、武尊の声が響く。
「ヒューマロック、分身!!」
巨人はバラけ、2体の人型になった。うち1体の人型が久瀬の腕を掴んだ。
「なるほど、こんなこともできるんですね」
くるりと身体を反転させ、肩車のような形で乗りあげる。石の人形の両腕を掴み背面で締め上げた。人形の腕が肩からバキンと割れる。
「どんだけ器用だよ…!」
武尊は呟く。
2体目の人形が動き出した。久瀬に飛びかかる。
久瀬はひらりとかわして、人形の足を蹴り上げた。人形はバランスを崩して倒れる。久瀬はその倒れた人形を足で抑え込む。その時、先程の腕のない人形が久瀬の後ろから飛びかかる。倒れた人形は動かない。
「片方だけ…!砕けろ!」
倒れた人形が砂になる。
「…!!」
久瀬はバランスを崩した。
それと同時に人形が久瀬に覆い被さるように飛びつく。久瀬は倒れた。
「よっしゃ、ここだ!!!」
腕のないの人形が覆いかぶさり倒れている久瀬を武尊と藤丸は狙っていた。2人は久瀬のストラップ目がけて飛び込む。
「うぉおお!!!」
その時、空気が張り詰める。急に温度が下がるような気がした。武尊と藤丸の足が止まる。
「…!!」
「この…感覚…!」
久瀬は倒れるその瞬間に印を結んでいた。武尊と藤丸の後ろからひとつの影が現れる。2つ結びにスカート、濡れた髪の毛に肩ほどの身長の女の子。女の子が言う。
「あそびましょ」




