天才と孤独②
「ありがとうケンケン。残るは息吹くんの分だ、僕ら4人で頑張ろう」
藤丸のストラップを森田の手元へキジが届ける。
それをみて藤丸が言う。
「想定外だね」
「犬だけじゃなかったっすね」
森田が答える。
「能力測定の時はポチだけを呼んでました。その方がいいと思ったから。アンケートにも呼べるってことだけを書きました。嘘はついてないです。」
藤丸が返す。
「なかなかしたたかだね。」
「目立つのが苦手なだけです」
森田と藤丸の会話に割って入る声がする。
「おい!正義!なにダラダラ喋ってんだ!さっさと終わらしちまうぞ!」
「え…?!」
武尊が驚いている。森田の脇にいたサルが続けて喋り出した。
「もう一個取りゃ終わりなんだろ?もういいか?取っちまっても」
「待ってジョージ!せっかくだし紹介くらいさせてよ!」
森田の返答に続いて、キジも喋り出す。
「そうよジョージ。この子は私たちのことバレないようにしてたんだから。久々に呼ばれたんだから少しはゆっくりやりましょうよ。」
犬も喋り出す。
「まあ僕は出ずっぱりだったから別になんでもいいけど」
サルが言い返す。
「そもそもなんでずっと出てんのお前だ?!あ?!犬連れてた方がサルとか鳥より可愛いってか?!サルも可愛いだろが!」
「どう考えてもあなたが最後でしょ。ポチの可愛さ、私の美しさ。あなたには品性がない。」
「ああ?!締め上げてフライドチキンにしてやろうか!?」
「そういうところが品がないって言ってるのよ」
森田が制す。
「やめてよ、ケンケン、ジョージ。」
犬は我関せずといった感じでそっぽを向いている。藤丸が口を開く。
「なんだか賑やかだね」
「そうっすね、ナチュラルに受け入れてますけどめちゃくちゃ喋ってますし」
森田が言う。
「改めて僕の友達、ポチ、ケンケン、ジョージです。」
「だからなんで紹介も俺が最後なんだよ?!俺を最初に紹介しやがれ根暗が!」
サルは森田の首を掴んでブンブンと振っている。
「ごめんてば…」
森田サイドが揉めている間、藤丸が言う。
「確かにあれだけの意思疎通が取れる召喚系だとすると確かに数的不利だね、5対2の構図だ。武尊のヒューマロックが唯一形勢を変えられそうだけど、さっきの2体目しんどいんだろ?多分」
武尊が答える。
「はい、2体目出した途端にイメージが難しくて。右手と左手で別のことしてる感覚って感じすね」
「なるほどね、慣れるの待つなんて悠長なことは言ってられない。今は別の方向で考えた方が良さそうだ。例えば、2つにイメージを分割するのではなく、2つ分を1つのイメージに『統合する』ってのはどうかな?」
「どういうことっすか?」
「今あそこに崩れてる2つ分のヒューマロック、あれを一個に出来ないかなって。僕がやるわけじゃないから勝手なことは言えないけど。」
「なるほど…人型をイメージする上で勝手に一般的な人のサイズって決めつけてましたわ…。あれを『1個にしちゃえばいいんじゃないか』ってことっすよね」
「可能なら、ね。出来たら数的不利もひっくり返せる可能性もある」
「やってみます…!」
「もうグズグズしてられねえ!行っちまうぞ!!」
サルのジョージが武尊に向かって駆け出した。
「な?!抜け駆けはさせませんよ!」
キジのケンケンもジョージに少し遅れて飛び出す。犬のポチは相変わらず森田の側を動かない。
「イメージを1個に…!ヒューマロック…巨人!!」
2つ分の石の山が一箇所に集まり人型を成した。
ジョージとケンケンが驚いて止まる。
「なんじゃありゃあ?!でけぇ!」
「品性だけじゃなく知性もないんですか?大きければ動きは遅くなるでしょう…!」
石の巨人の腕の間を目がけてケンケンが飛び出す。
「イメージ…!動くイメージ……!!」
石の巨人は手のひらでケンケンを抑えた。
「ぐっ…?!」
ケンケンは押し返される。
「デケェ口叩いて全然ダメじゃねえか鳥ィ!」
大きく開いた巨人の足の間を目がけてジョージが飛び出す。
巨人はケンケンを捕らえる。
「恨みはねえが、悪りぃな!」
武尊が言うと同時にケンケンをジョージに向けて投擲する。
「おいマジか…?!」
ケンケンはジョージにぶつかり勢いが落ちることなくポチも巻き込んで後ろに吹き飛んだ。
「やべぇ!やりすぎた!ごめん!」
武尊が声を上げる。
「みんな!!!」
森田が三匹の元へ駆け出そうとした瞬間、影から藤丸が飛び出した。
「ごめんね、森田くん!」
藤丸は森田のストラップを奪取する。同時に石の巨人が崩れた。武尊は心配そうに森田の方へ駆け寄る。
「ごめんな森田!みんな大丈夫か?!」
「イテテテ…」
「やられましたね…」
「なんで僕まで…」
3匹は口々に言う。
「はい、多分大丈夫です。みんなには休んでてもらいます。」
「悪りい、まだ調整とか下手くそで」
「僕の責任です、みんなをちゃんと見れなかったから」
森田が本を開くと3匹は吸い込まれるように本の中へ帰って行った。森田が口を開く。
「僕たちの負けです。凄かった。久瀬くんの分、頑張ってください。」
「お前はどうすんの?」
武尊の問いに森田が答える。
「久瀬くんの能力的に僕はいない方がいいってことになってるので、取られた時点で僕は脱落です。ジョージが俺らでやる!って言い出して引かなかったので、ずっと僕が先鋒でした」
「なるほどね、わかった」
武尊が目線をあげると久瀬が立っていた。久瀬が言う。
「森田さんご苦労様でした。」
藤丸が武尊に向かって言う。
「大将の登場だ、気張っていこう」




