レイヴンの街
森を抜けた先に、街が見えた。
石を積み上げた外壁が、周囲をぐるりと囲っている。
高さはそれほどでもないが、簡単には越えられないだろう。
門の前には列ができていた。
荷馬車。
冒険者らしき連中。
商人。
人の流れが絶えない。
「……あれがレイヴンだ」
相変わらず人多いですね……」
リナが少しだけ肩の力を抜く。
「今日はまだマシな方だ」
「昼は商人が多い」
セラが淡々と補足する。
列に並ぶ。
前の馬車が荷を確認されている。
兵士の手つきは慣れていた。
やがて順番が回ってくる。
「次——」
門番の兵士が顔を上げる。
「……ガイルさん」
ぱっと表情が和らぐ。
「お帰りなさい。今日はお早いですね」
「よう。少し当たり引いてな」
「……変異種、ですか?」
「当たりだ」
兵士が小さく息を吐く。
「相変わらず引きますね……本当に」
「で、無事に戻ってきてるんだから大したもんですよ」
「今回はこいつに助けられた」
その一言で——
兵士の目がわずかに見開かれる。
「……ガイルさんが?」
一瞬だけ、言葉が止まる。
「こちらの方は?」
「同行者だ。森で拾った」
「身分証はまだない。ギルドで登録させる」
兵士が少しだけ考える。
「……保証は?」
「俺がつく」
間を置かない返答。
兵士が小さく笑う。
「ですよね」
「ガイルさんがそう言うなら問題ありません」
「いつも通り、後で登録だけお願いします」
「ああ」
「では、どうぞ」
門が開く。
街の中に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
人の声。
金属の音。
焼けた肉の匂い。
一気に、生活の気配が押し寄せてくる。
「やっぱ落ち着きますね……」
リナが小さく笑う。
「森よりはな」
ガイルが軽く返す。
セラは無言で周囲を観察していた。
人の流れ、視線、配置。
(……騒がしいな)
だが、不快ではなかった。
しばらく歩くと、大きな建物が見えてくる。
木と石でできた、重厚な造り。
出入りしている人間の数も多い。
「ここだ」
「冒険者ギルド」
扉を開ける。
中は、ざわついていた。
笑い声。
怒鳴り声。
酒の匂い。
様々な人間が入り混じっている。
「まずは登録だな」
ガイルが言う。
「リナ、手続きいけるな?」
「はい!」
「セラ、見てやってくれ」
「了解」
自然な連携だった。
俺は、その様子を少し後ろから見ていた。
(……まあ、どうにかなるか)
そう思いながら、一歩踏み出す。




