出会い
森を歩きながら、俺は自分の力を確かめていた。
剣は、思い描けばすぐに作れる。
炎も同じだ。
イメージさえあれば、形になる。
(……やっぱり異常だな)
苦笑する。
だが同時に、この力に頼らなければ生き残れないことも分かっていた。
ここは、間違いなく危険な場所だ。
魔物がいる。
そして——
他に何がいるかも分からない。
「……水」
呟く。
次の瞬間、
掌の中に水が存在していた。
透明な球体。
ゆらゆらと揺れている。
飲んでみる。
問題ない。
(生活は、なんとかなりそうだな)
食料も、水も、武器も。
おそらく、
かなりのことができる。
その時だった。
遠くから、音が聞こえた。
金属がぶつかる音。
そして、短い悲鳴。
(……人か?)
迷う時間はなかった。
体が先に動く。
音の方向へ走る。
木々の隙間から見えたのは、戦いだった。
三人。
人間だ。
だが、押されている。
相手は——
さっきの魔物よりも、一回り大きい個体。
腕が太く、動きも速い。
一人が吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられ、動かない。
(……このままだと全滅するな)
状況は一瞬で理解できた。
考えるより先に、体が動く。
「剣」
手の中に武器が生まれる。
踏み込む。
魔物の背後へ回り込む。
そして——
振る。
一閃。
だが、浅い。
(硬い……?)
魔物が振り返る。
目が合う。
次の瞬間、
腕が振り下ろされた。
避ける。
風圧だけで、肌が痛い。
(さっきのとは別物か)
だが。
不思議と、
焦りはなかった。
頭の中に、
“斬れる光景”が浮かぶ。
首が落ちる瞬間。
断ち切られた肉。
その結果だけを、
強くイメージする。
踏み込む。
今度は迷わない。
首元へ——
一閃。
鈍い音。
そして。
魔物の首が、
地面へ転がった。
静寂。
残った二人が、呆然とこちらを見ている。
「……あんた、何者だ?」
一人が、かすれた声で言った。
俺は、その問いに答えようとして——
一瞬だけ、言葉が詰まった。
(……俺は)
名前は分かっている。
——はずなのに。
なぜか、口に出そうとすると違和感がある。
ほんのわずかな引っかかり。
だが、それは確かに存在していた。
「……ただの、通りすがりだ」
そう答えるしかなかった。
その違和感は、小さく。
だが確実に——
心の奥に残り続けていた。




