車の病気
「やば!遅刻する!」
時間ギリギリまで寝ていたため、予定の電車に間に合わない可能性が出てきた。
「しょうがない・・・こうなったら今日は・・・使うしかない。車を。」
自転車で最寄り駅まで向かう予定だったが、車で向かうしかない。
車の運転は億劫だ。
右折のタイミングとか怖いし、人を巻き込んでしまわないか怖いし、広く全般事故を起こしてしまわないか怖い。
だから、俺にとって車の使用は罰ゲームみたいなもの。事故を起こしてしまうかもしれないと、不安になりながら駅まで向かわなければならない。
しかし、寝坊をしてしまったのだから仕方がない。
「久々だなあ。」
最後に運転してから、一ヶ月以上。下手したら、2ヶ月近く経過してしまったかもしれない。
「ほんと、ペーパードライバーだな。」
自分に呆れながらドアを開ける。
・・・いや、ドアが開かなかった。
「あれ、どうやって開けるんだっけか?」
運転が久々すぎて鍵の開け方すら忘れてしまった。
いや、そんなはずはない。
そもそも鍵は開ける必要がなかった。
鍵を持った状態で近づけばドアは開いたハズだ。
「まさか、バッグの中でガチャガチャ揺らされながら持ち歩いていたから、車の鍵が壊れた?」
仕方がないから、アナログな方法で開けるしかない。
予備の鍵を取り出し、鍵穴に差して回す。
「よし、開いた。いやあ困った困った。」
運転席に座り、エンジンをかける。
・・・いや、エンジンがかからない。
「あれ、どうやってエンジンかけるんだって!?」
パニックだ。
そんな難しい話じゃない。
そう、ブレーキを踏みながら、エンジンのボタンを押すだけだ。落ち着け、自分。
「え、かからないんだけど。もしかして、壊れた!?俺の120万円がああああ!?!?」
エンジンがかからない車なんて、ただの置物。
置いとくだけで駐車料金が発生する厄介な代物。
「はあああ。」
運転席でついた、ため息は白かった。
「また今度挑戦するか。病気みたいに、車も寝かしとけば直るかも。」
なお、バッテリー上がりという現象だと知ったのは、さらに一ヶ月後の話である。




