幼女の贈り物
淡い光に包まれた白い世界。
清浄で清涼な空気が漂い、ほのかな温もりが諸楽を受くる居心地を運ぶ。
ここ最近の幼女神は、浮かれまくってステップも軽やかです。
『ふんふんふ~ん♪ 今日も世界はこともなし。あ奴らも無事異界に行けてめでたしめでたしなのじゃ。』
どうやら地上でのシンジたちを覗き見していたようで、彼らの動向は承知しているようでした。
『それにしても、封印が浄化されるとは思ってもみなかったのじゃ。備えあれば憂いなし。これもあ奴を見つけ出した妾の慧眼のたまものよのう。』
幼女神、調子に乗って自画自賛。
そもそもは自分のうっかりが招いたことを、すっかり忘れています。
『こんなことなら、もっと早く遣いを出せばよかったのう。………いやいや、あ奴ほどマナを持たせられる者はおらんかった。そうそう、これは天命なのじゃ。』
神の命だから天命ですが、自分で言ってしまうあたりこの神様の残念さがわかるというもの。
『はよう封印を浄化して妹を戻してくれんかのう。』
自分が封印したことも忘れ、能天気に願う神様。
本来神様は願われる立場なハズです。
普段は竜王を耄碌ジジィ呼ばわりしているのに、自分のダメダメさに気付かない残念幼女。
『それにしても、いきなり魔導都市に転移したのでは、あ奴らもどうしたらいいかわからんか。ここはも一つ手を貸しておこうかのう。』
何やら考え込んだ幼女神ですが、すぐさま手をかざし何やら呟きます。
『あの頃の教会にはひと言言うてやりたいもんじゃが、今さらそれを言ってもしょうがないしのう。』
古代文明の時代、己の英知に溺れ助長したヒト族は、神を彼方に押しやり、尊崇の念を忘れていきました。
そのため、教会でもその姿を目にすることはなくなっていったのです。
かつては礼拝の対象として、あらゆる教会に祀られていた幼女神ですが、古代文明が頂点を迎える頃には取り払われておりました。
残念幼女の姿があまり有り難い物でもなかったと言うと語弊があるかもしれませんが、まぁそういうことです。
『こんな掘っ立て小屋じゃのうて、せめて雨風凌げるところに置いて欲しいもんじゃ。』
教会の裏手にあるガタガタなお堂を見てため息を吐いています。
野ざらしよりはマシかと気を取り直して、何やら念じる幼女神。
『聖獣たちも頑張っておったで世界樹を失わずに済んだ。あ奴らにもご褒美はいるじゃろう。青龍、朱雀、白虎に玄武で四人か。それなら四つにしておこうかのう。』
そう呟くと、幼女神の手元から四つの光が現れて彼方へと飛んでいきます。
『いきなりでは分からんだろうから、最初は妾の像にでも仕込んでおこうかの。あのお堂までは無理矢理飛ばせばいいじゃろ。』
何やら不穏なセリフを宣います。
下界に干渉することは禁じているけど、異界ならセーフとばかりに、あの手この手を仕込んで行く幼女神。
神なる身がそれでいいのか。
『あまり手が込んでわかりにくくてもしょうがないからの、これぐらいであればあ奴らも気づくであろう。』
何やら満足げに仕込みを終えた幼女神。
己の仕事の出来にゴキゲンです。
『ここまで揃えておけば封印も無事解放されるじゃろう。』
ワクワクニマニマしながら様子を眺めている幼女神。
掌で踊らされる者たちの苦労は横に置き、早く事が済むことを待っています。
『そう言や世界樹の精霊はどうしたんじゃ。あれは自由過ぎるからのう。原初の竜に悪さしとったハズじゃが、いつの間にか見えんようになったのう。あれには精霊たちの面倒を見てもらいたかったんじゃが、どうしたもんか。』
幼女神は、今さらながら世界樹の精霊を思い出しています。世界樹の精霊は他の精霊たちが心地よく暮らしていけるようマナの調節をするはずなのですが、聖戦があってから姿を見かけなくなりました。
『原初の竜は世界樹とともに解放されるじゃろうが、精霊はそもそもあそこにおらんかったからのう。まさか消えているとは思えんが、どこで遊んでおるんじゃ。マナが薄ければ辛かろうに。』
幼女神は精霊たちが心配なようです。
『最後の封印が解放されれば、世界樹もその役目を果たすことが出来るようになる。そうなるとどうしてもマナを調整する者がおらんと困るんじゃがのう。』
どうやら幼女神は、封印が解放された後のことを心配しているようです。
『ま、おらんかったらあ奴に頼めばいいかのう。あれだけマナを扱えるようになったんじゃ。世界樹と一緒にマナの調整くらい何とかなるじゃろう。』
どこまでも前向きな幼女神です。
当てにされる方には堪ったものじゃないでしょうけど。




