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「この女顔!」
余談だが兄弟の中でハルトと冬香が母親似である。
「はっ!自分の顔に不満があるからってオレに難癖つけてくるな、ササパンダ!」
「パンダ言うなぁ!」
醜い争いを繰り広げる弟と幼馴染にウンザリです。
サンサンと照りつける太陽にも負けないぐらいの熱い(陰湿な)戦いを放置するわけにもいかないので仲裁にはいる。
「ちょっと二人とも………」
「パンダパンダパンダ!」
「あんたは小学生かぁ~~~!この女顔女顔女顔!!」
もう既に言い争いは言い争いというのも恥ずかしいぐらいのただの罵りあいに移行している。
「落ちつい………」
「中一まで制服着ていても女の子に間違われて男に告白されていた男殺しのくせにぃ!」
「うっせぇ!そう言うてめぇだって中身の野蛮さで女に告白されまくっているだろうがぁ!」
私の言葉は虚しいほど二人には届いていない。
これも悲しいかないつものことである。
残念ながら(嫌な意味での)二人の世界にはなかなか割って入れないのだ。
「もう、いい加減に………!」
言葉では駄目なら体ごとだ!と二人の間に割り込ませようとしたのだが。
足を踏み出した途端、くらりと視界が揺れた。
視界から色が一気に認識が難しくなってぼやけ、ノイズが走ったように不透明になる。
(あ、やば………)
馴染みのありすぎる感覚だった。
最近、本当に調子が良かったから油断していた。
サンサンと降り注ぐ太陽。
長時間、それを浴びていられるほど私の身体は丈夫ではないのだ。おまけにここ最近、色々あってちょぴり疲れ気味だったもんだから………。
平行感覚が失われ、足元がおぼつかなくなる。
「にゃ?にゃ~~~にゃ~~~~~~~~~~!!」
異変に気付いたザクロちゃんが切羽詰った鳴き声を上げている。
「奈津?」
「奈津姉?」
ザクロちゃんの鳴き声に気付いて言い争っていた二人も私を振り返る。
大丈夫。
そう言いたかったんだけど………。
どんどん視界が狭くなっていって。
「ちょ~~~~!奈津~~~~~~~~~~!」
「奈津姉!!おい、大丈夫か!」
「ニャ~~~~~にゃ~~~~まぁ~~~~!!」
焦ったような声を最後に私は気を失った。
……………………………………………。
………………………。
『お~~い』
……………。
『お~~い。新人さ~~~ん?き~~こ~~え~~て~~るぅ~~~~?』
ぷにぷに。
………?
『う~~ん?おかしいなぁ?別に外傷はなさそうだけど………って幽霊に外傷って何だよって話よね~~~~』
……ゆう、れい?ぽっぺた、つつかれてる?
あははははっ!と自分の言葉に自分で受けたらしい女性の笑いがすぐ側で響いてくる。
ぼーとする頭のままでそっと瞳を開けば抜けるような蒼空を背に私を覗き込む女の人の笑顔。
『おっ、気付いた?』
訳がわからずただ見上げるだけの私に宙に浮いてちょっと透けているその人はにかっと明るい、まるで太陽のようにからっとした笑顔を浮かべている。
ふわふわと浮んでちょぴり透けた体。
にかっと笑う様は元気一杯といった感じだけど透けている。
透け透けである。
『………ん?どうしたの?あたしのことじぃ~~~と見たりして』
…………透け、て。あれ?人間って透けたりしたっけ?………いや、しない。
「なんで、透けて………?」
『え?ああ、これ?そりゃ透けもするわよ。だってあたし、幽霊だもん』
そう言って得意げに胸を張る透けた女の人。
Tシャツにジーパンというどこでもあるような格好をした女の人は悲惨さも陰湿さもないあっけらかんとした態度だ。
幽霊、ああ、なるほど、だから透けて…………。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!幽霊~~~~~~~~~!!」
『あははは!おどろいたぁ~~~~~!』
指を指し驚く私に悪戯の成功した子供のように手を叩いて喜ぶ幽霊さん。
でもね、と笑いを残した口元で幽霊さんが逆に指をさす。
『驚いているあなたも透けているんだけどね?』
にやにやと意地の悪い笑みだなぁ~~~。
ん?いま、聞き捨てられない単語があったような?
「へっ?」
言われて自身を見下ろし、固まる。
「す、すけて………」
透けていた。
盛大に透けていた。
恐る恐る幽霊さんを見れば訳知り顔で頷いていて、かと思えば満面の笑みで腕を広げてこうのたまった。
『ようこそ、幽霊の世界へ!新人さん♪』
………………………………へ?
何を言われたのか脳が上手く処理してくれなかった。
幽霊 世界 新人。
…………幽霊の新人?
私、が?
数十秒の時間をかけて私の脳がそれらの単語を的確に処理をした途端。
「う、うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
異世界トリップの次は幽霊ライフってそりゃないわよぉぉぉぉぉぉ!!




