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「わ、私、し、死んじゃったの!!ちょ、困るんですけどぉ!私には父と弟が三人と可愛い可愛い幼い妹が一人と人様からお預かりした弟みたいな男の子と可愛い猫ちゃんがいるんで残して死ねないんですけどぉ!」
色んな問題放置ですから私、死んでなんかいられないわよ。本気で!
いや、人生いままで何度か死線をさまよったことはあるけどさすがに幽霊になったことはない。え、もしかして帰還不可能?ってもう透けているから幽霊じゃん、私!
絶賛混乱中でこんにちは!
ああ~~~どうしよう!死んじゃった?死んじゃったの私!ちょっと待って!心残りが多すぎるんですけど!
『あははははははっ!そんな肩を掴んでがくんがくん揺さぶられてもあたしにはどうしようもないよ~~~?』
のん気過ぎる声だが私を止める気もない幽霊さん(私も幽霊だろって?認めません!)は笑いながらも揺さぶられるまま。首が高速で動いていてもその笑い声は全く揺るがない。
さすが幽霊!
「わ、わ、私!本当に死んじゃったんですかぁ!そりゃ昔は体が異常に弱くて何度も死に掛けたけど最近は本当に調子がよくて!ぶちゃけていうなら死ぬ気配はなかったんだけどぉ!」
『人間なんて元気だろうが死にかけていようが死ぬ時はあっさりぽっくり逝っちゃうよ?』
「そんな正論聞きたくない!し、し、死んだなんて認めない!ど、どうにかして帰らないと!」
わ~~~と混乱のどつぼに嵌っている頭を抱えた私の肩をガクガクから解放された幽霊さんがぽんと叩く。
『だいじょ~~~~ぶ!幽霊ライフもそんなに悪いもんじゃないから!』
きらりんと歯が輝かんばかりの笑顔で幽霊さんがそんなことを言った。
しばしの沈黙。
「い~~~~~や~~~~~!!心残りが多すぎるんですぅぅぅぅぅぅ!!」
私は絶叫した。
混乱中混乱中。
「…………ぜ~~はぁ~~ぜ~~~~はぁ~~~~」
沈静。
叫び疲れてどっと疲労が押し寄せてきた。
ってか幽霊なのに疲れるってどういう仕組みなんだろう。微妙に納得いかないような。
『落ち着いた?』
叫んで暴れる私をぷかぷか宙に浮かんで見物していた幽霊さんが落ち着いたと判断したのかよっと近くの地面に降り立つ。
体重をまったく感じさせないその動きにやはりこの人は生きている存在ではないのだと実感して………その人と同じように透けちゃっている自分も幽霊だと実感してしまい落ち込む。
「あの~~~~」
『ん?なぁに?後輩くん』
「私、死んじゃったんですか?」
『幽霊というのは普通死んだ人間がなるものじゃないのかな?』
当たり前といえば当たり前の返答に「あうっ」と胸をおさてしまう。
そっか………私、死んじゃったんだ………まぁ、身体的には弱かったのだけど………それでもさ、ちょっと納得できないというか心残りありすぎるというかぁ!
「うぅぅぅぅ死にたくなんてなかったよぉ~~~!」
何か、今まで拒否していた自分が死んだということが現実として目の前に現れて今度は目頭が熱くなる。
草原に座りこんでべそべそ泣き出してしまった私の横で幽霊さんが項垂れた私の頭をぽんぽんと撫でた。
『いや、ごめん。初めて幽霊仲間に出会って浮かれ過ぎちゃった。まさかそこまで泣くだなんて思わなかったの死んだって嘘だから泣かないで?』
嘘?
涙に濡れた顔で見上げると困ったような申し訳ないような顔で幽霊さんの顔があった。
「死んでない?」
『正確にいえばね、でもちょっと危ない?』
生霊という言葉が頭に浮ぶ。
「私、しんで、ない?」
『うん』
こくりと頷く幽霊さん。
「体、透けているけど……」
『でも君はあたしとは違って体が生きている』
ふわりと浮んだ幽霊さんと私のどこが違うのかなんてわからなかった。
だけど、幽霊さんにはわかるみたいで確信したような顔で私を見ている。
そんな笑顔を涙が引っかかった目で見上げ、徐々にこみ上げてくる感情に顔が歪む。
「な」
『ん?』
「なんて嘘をついているんですかぁ!」
こみ上げてくるのは怒り。
がこんっ!
拳が幽霊さんの脳天に直撃した。もう、幽霊さんになんで触ることができるのかなんて考えなかった。
「人の生き死に関する嘘なんて一番ついちゃいけない嘘でしょうが!」
長年の主婦業で染み付いた弟妹達への躾けの賜物だろうか。
何かを考えるよりも早く手が出て説教が出て正座させた幽霊さんの前で腰に手を当て仁王立ちしていた。
幽霊さんは幽霊なのに痛みを感じたらしく頭を両手で抱えている。
『痛い……』
「何か言いました?」
『いいえ……』
ぎろりと睨んだら俯いた。
「いいですか?幽霊さん。生き死に関することで軽い嘘をついてはいけません!それはですね……」
幽霊さんの前に正座し膝をつき合わせてコンコンと説教を続けます。
「それで、言うべきことはわかりますか?」
『嘘ついてごめんなさい……』
「よくできました」
よしよしと思わず頭を撫でます。
幽霊さんが不思議そうな顔で見上げてきて、そこでつい、弟妹たちにやるように接していたことに気付き慌てて手をどける。
「あ、すいません。つい弟妹達にするようにしちゃって」
どけた私の手を幽霊さんがじっと見詰めている。
懐かしそうなまぶしそうな目で見ていた。
「幽霊さん?」
『!あ、ごめん。なんでもないよ~~』
幽霊さんは目を瞬く。
夢の残滓を振るい落とすように何度も。




