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「だからあそこでひっくり返していたら焦げたりしなかったんだ!」
「いやいや、油引き忘れたのが最大の原因じゃねぇ?」
「お前ら、原因追及する前に手を動かせ」
台所で洗い物を分業していたリカルド君、秋彦、ハルトだったけど洗い終わった食器を拭く係りの二人が口を動かすばかりで手を動かさないから作業が滞ってしまっている。
こんもり盛り上がった食器に軽く目を細めながらビシビシとハルトから指導が入る。
付き合いの長い秋彦はもちろんリカルド君もハルトに逆らっちゃなんないと悟っているらしくおとなしく言うことを聞いて手元のお皿を拭いていく。
そんな二人を見ながら私はちゃぶ台の上を拭いていたんだけどふいに目に入ったカレンダーの日付でもうすぐ夏休みだと思い出した。
「そっか………もうすぐあんた達夏休みか」
日に日に暑さが増して夏に向かっていくのを感じていたけどもうそんな時期だったんだ。
感慨深く思っていると濡れ雑巾でたたみの上を掃除していた冬香と秋信が声を聞きつけて顔を上げる。
「うん。あと三日がっこういったらおやすみ~~~」
「………(こくり)」
冬香が指を三つにしてこちらに見せてその隣で秋信が無言で頷く。
相変わらず表情が読みづらいけど珍しくこの子も浮かれているようだ。
「生焼け飛び散り事件を引き起こしたのはアキヒコだ!」
「い~~や!焦げ生産事件も生焼け飛び散り事件も主犯はリカルドだろうが!」
「あれはどっちもどっちだったとオレは思うぞ」
洗い物を終えた三人が居間に戻ってくる。
私はにっこり笑って三人に側にあった雑巾(濡れてない)を渡して、無言でようやく飛び散った生地を拭い去った畳を指差す。
「「はい」」
彼らの話に合わせれば主犯格二人がおとなしく畳の乾拭きを始めた。ハルトはやれやれと肩をすくめつつも手伝い始める。
この二人、ホットケーキを焼いている時にふさけて生焼けを畳に落とした挙句、生地の入ったボウルまでもぶちまけてしまったのだ。
畳が駄目になるから人海戦術で急いで生地を拭い去ったけど後の片付けは責任をもって秋彦たちに任せたよ。
まぁ、監視と称してハルトが自主的に手伝っていたのは見逃したけど。
「さて、と。後の片付けはあの二人に任せて………」
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああっ!!!!!???????」
?!
突然響き渡る猫の鳴き声。しかもやたら焦っているような緊急事態を感じさせる鳴き声に全員いっせいに声のした勝手口の方を見る。
「そういえば………ザクロちゃん、いないね?」
「「「「「「………」」」」」
冬香の言葉で思い出す。そういえば買い物に出る前からザクロちゃんの姿を見ていない。
「に、にゃぁぁぁっぁぁぁ!!」
再び鳴き声、そして何かと争っているかのような物音。
「ザクロちゃんが危ない!?」
慌てて勝手口のドアを開ける。私の後を他の皆も付いてくる。
開けるとそこには黒い猫に圧し掛かりべろべろんと舐めているトラ猫の姿が!
え、なに?喧嘩じゃないの?
どんな状況、これ?
「ザクロちゃん?」
予想外の光景に思わず固まってしまう私。だが私の存在に気を取られたトラ猫の隙をついたザクロちゃんは拘束から抜け出し私の胸に飛び込んでくる。抱きしめたその身体は小刻みに震えており、彼女の恐怖を伝えてくる。
「えっと………大丈夫?」
唾液でベトベトになっている所を避けつつ背中を撫でてあげる。だけどよほどの興奮状態なのかふーふーと警戒態勢のままだ。
「にゃ~~うにゃ~~~」
そしてトラ猫の方はザクロちゃんを諦めていないのか私の足もとをグルグルまわりにゃーにゃー言ってこちらを見上げていた。
トラ猫がにゃーと鳴くたびにザクロちゃんがびくびくと震えるからどっか行って欲しいんだけど………。あれ?このトラ猫、もしかして。
「あれ?お前、おーすけじゃん」
しゃがみ込んで猫を抱き上げた秋彦の言葉で足元のトラ猫が裏の家のおばあちゃんの愛猫尾助。私達がおーすけと呼ぶ馴染みのある猫であることに気づいた。




