お父様との勝負
「参りました」
これがスライスが負けてから放った最初の一言である。
あれ勝っちゃった。あれ剣術ってもしかして結構簡単なのでは?それかスライスが弱かっただけなのかな。まぁなにわともあれ私が勝ったんだから叩かれなくて済むわね
スライスは立ち上がり自分の手を見てその後にクリステラを見る。
「クリステラ様私にはあなた様を教えるほど実力がないようです」
スライスは喜びと悔しさが入り乱れる複雑な感情でいつものように堂々とした姿はなくトボトボと歩きどこかに消えていった。
「うーん、暇っていいものだったんだなー」
私はスライスがいなくなった瞬間にくつろぎ始めた。思いっきり椅子の背もたれにもたれかかり、足と手を思う存分伸ばしまくった。
私は貴族の生活に慣れて来たとは言え毎日少しずつ疲労がたまっていたのだ。息抜きでもしないとやっていけない。
私は今この時を存分に楽しむことにした。スライスのことだ自分が教えられないとなるとどうせ凄腕の剣士を雇うにきまっている。
もし雇わなくても他のことをやらされることはわかっている。
家庭教師が来るんだったらイケメンがいいな。剣士なんだから肉体は素晴らしいことは確定してるし後は優しくて顔が良ければ最高ね。
そんな期待と妄想を繰り返していた時二つの足音が聞こえる。
やば、もう帰って来た。
クリステラは姿勢を整え待つ。
どんな人が来るのかな?
そんな期待いっぱいの私の目前に現れたのはイケオジだった。と言うかお父様であった。
「聞いたぞクリステラ、スライスを倒したそうだなさすが私の娘だ」
相当嬉しかったのだろう、人前で私を甘やかさないお父様が私とふたっりきりの時と同じように抱っこして抱きしめて来た。
「どうやって倒したんでちゅかクリステラ。一応スライスは改心流の中級なんでちゅよ」
「えっと、スライスの脇が開いてたからその逆方向に剣を振って隙ができたところをえいってやたら勝てたんだ」
「そうなんでちゅかやっぱりクリステラはパパと一緒で天才でちゅね」
「あ」
お父様はスライスの存在を思い出したのか私を椅子に座らせて咳払いをしてごまかす。
さすがスライスと言うべきかお父様の失態をちゃんと見て見ぬふりをしてくれている。
「おほん、ではクリステラ今日から私が剣の稽古をつけるわかったね」
もう口調を戻しても遅いと思うがさっきまでとは違い太い声で話している。
私としてもイケメンの先生ではなかったことは残念だがお父様なら私にきつく当たらないし甘やかしてくれそうなのでほっとしている。
「わかりましたお父様、クリステラ一生懸命頑張ります」
「うむ、いい意気込みだ。ではスライスもう下がってよいぞ」
スライスは一礼した後に他の仕事に戻っていった。スライスがいなくなったことを確認したお父様は雰囲気がまた変わり溺愛モードに移行した。
「クリステラ私と二人っきりの時はパパでいいからね」
「え、でもクリステラがお父様と言わないとだめって言ってましたよ?」
「いいんだパパと二人きり時だけは特別にね」
「わかりましたおとじゃなくてパパ」
久しぶりにパパと言われてうれしいのかすごい顔になっていた。
「ほらパパに全力で攻撃してご覧、パパは神級剣士だからスライスみたいにはいかないからね」
言われた通り私は全力で斬りかかった。隙などは一切なく子供と戯れているほど余裕そうであった。実際子供と戯れているのだけど。
スライスと違いお父様は私の攻撃を全て綺麗に受け止めてくれるのでやっていてすごく気持ちがよくストレス解消と言わんばかりに私は思いっきり剣を振り続けた。
クリステラが疲れ床に手をついて休んでいるころクリステラの父は何かすごく悩んでいた。
「なぁクリステラ何故左ばかり狙っていたんだ?」
何故と言われても私は別に左を狙っていたわけではない。確かに思い返して見れば最後らへんは左ばかりを攻撃していたがそれは無意識にやっていたことだ。強いて言うならば、なんとなくだ。
「何かダメなことをしてしまったのでしょうか?」
「いや、そんなことはない。クリステラがすごいっと言おうとしただけなんだ」
「ほらパパの左目はないでしょだからパパは戦う時左側は苦手なんだ」
「クリステラは無意識にそれが分かったんだろうね最後からずっと左側だけを攻撃してきていたよ。これがどういう事かわかるかいクリステラはね天才なんだよ」
私も自分が天才なのだと気づいていた。スライスが弱いだけとも思ったが普通の子供が大人相手に勝てるわけがない。
「クリステラは神級剣士になれる素質があるだから剣の稽古に本腰を入れようと思っているんだ」
「神級?」
「あぁ、そうだったねクリステラにはまだ階級のことは教えてなかったね。剣士には六つの階級があってね最初から 初級 中級 上級 聖級 王級 神級があるんだ。クリステラは一番上の神級になれる素質があるんだ」
「それってすごいの?」
「すっごくすごいことだよメジャーな流派の中だと一流派に五人、マイナーな流派の中だと一人もいないなんてことはざらにある。ちなみにパパはメジャー流派の改心流と力信流で神級だけどね」
娘に褒めてほしそうに自慢げに言っていたので思い通りに褒めてあげたら物凄い嬉しそうだった。
「別にクリステラが嫌だったら無理にやらせるつもりはないから自分でやるかどうかは決めてね」
どうする?今日はやってて楽しかったけど剣士の道って殺し合いもあるわけだし、これ以上先に踏み入ったらと思うと。
でも才能があるわけし…………よし決めたやろう前みたいに平凡な女の子のままじゃいけない、それにこんな世界で何が起きるかわからないし力を付けとけば何か役に立つかもしれないしやってて損はなさそうだしね。それにお父様だったら優しそうだし。
「お父様私やります剣の道に進みます」
「クリステラならそういうと思ったよ」
「それと二人きりの時はパパって呼んでって言ったでだろ」
どんだけパパって言ってほしんだよ。
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