27話
「Let's cooking!」
会場はいっせいに爆発したかのような歓声に包まれる。
いつの間にかコックのような伊出達のハクは顔をパンと叩きながら会場の中央に用意された食材や調味料を吟味しながらメインステージとなっている料理台にせわしなく往復をしていた。
そんな様子を見守りながらリアル実況中継をするマリル。そして食材解説をするマリル。また、どんな料理になるか評論をするマリルといった具合に、分身を用いながらキッチンスタジオを大いに盛り上げていく。
ハクもノリノリで持ち寄った食材を次々に料理にかえてゆく。5品ができた時点でマリルから終了を告げられた。
出来た料理は、牛すき焼き丼、ねぎまたっぷり焼き鳥焼き豚丼、スタミナ麻婆丼プラスチーズ鍋焼きカレー、親子丼かつ丼のハーフ&ハーフ、ネギトロユッケ豪快刺身海鮮丼。
自慢げなハクに少しため息をするマリル。それでも、嬉しそうに観客に手を振るハクの口の横に着いた米粒をとってあげていたマリルは何となく微笑ましかった。
「ハクはみんなにお腹いっぱいにしてあげたいという気持ちがあふれる料理だね。」
「チョット疲れて影があるイケオジの胃袋をぎゅっと掴む料理と言ってほいいわね。」
はーそれはやり切った顔をするはずだな。と僕は思っていたがマリルからもう一言あった。
「具体的な誰かを創造して作ることができるようになるなんて、本当に成長したのねハク。」
マリルはそうつぶやくと僕のほうを向いた。その途端また僕の視界が暗転した。
暗闇の中でマリルの声だけが響く。
「料理をすることは戦略的思考に大きく影響します。料理の完成形が見えてれば料理工程だけを考えても完成までのシナリオが思いつくでしょう。だからこそ、どういう戦略シナリオをとれば勝利に導けるか。もし途中でトラブルがあればどのような作戦を取り直せばいいのか、もしくはより深い戦術をとることにより影響が大きくなったり、ちいさくなったりといったことまで考えられる。そして材料選びの眼が養えば調味料の選定や器具や物資の幅広い活用も見えてくるのよ。最後に目的と効果を考えて戦略的効果を自分が用いる費用や人材物資まで考えられれば自分の今の器量が判るのよ。」
「どのようなシナリオで完成形をつくるか。僕次第か。」
そりゃ美味しい料理ができることにこしたことはないけど、食べる人や僕に対する印象が料理ひとつで決まるとしたら・・・奥が深い。
僕がブツブツと呟いていると、パンと柏手の大きな音が響き、僕は暗転する。
そしてまた新たな世界が広がる。
真っ白な大理石の箱の中に閉じ込められたような空間に机と椅子が設置してある部屋に僕とハクは対面で座らされていた。
マリルが机の横に立つと2回机をノックするように叩いた。目の前にある机がぶるぶる震えだす。それと同時に座っていた椅子もブレ出す。それだけでは収まらず、次に僕とハクが分裂し始めた。
目が回りそうになっているのは僕だけではないハクも同様に気分悪そうな顔をして天井のシミを見つめるように大きく深呼吸をしながら分裂がおさまるのを待っているようだった。
揺れがようやく止まったようだが、瞳孔が揺れ戻しを抑えようとしている目の前で、目の前の机の上にいつの間にかゲームボードが置いてあった。それも各机に1個のゲームボードが置いてあった。一つ目の机にオセロいわゆるリバーシ。二つ目に囲碁。3つ目にチェス。4つ目に将棋が置いてあった。
マリルはいつの間にかバニーガールのような服装でウエイターのように水とお菓子を各机に2セットづつおいた。マリルは給仕が終わると眼鏡をきゅっと上に軽く上げ話し出した。
「どうです、おのおのの分身で頭脳対戦ゲームを同時にしてもらいます。アース様も分身も椅子からうごかないで結構です。ハクはゲームが終わり次第横にずれて新たなゲームを行っていくように。そしてまだ横のゲームが終わらなければカジノゲームも用意してありますから新たなゲームが終わるまで時間をつぶしてください。さぁ始めましょう。」
「ちょっと待った。どうすればこの頭脳対戦ゲームが終了するの?」
「いつでもいいですよ。そのかわり続ければ続ける程得るものもありますわ。まぁー、例えば同時演算スキルが伸びたり、未来予測なんてものまで手にはいることも。フフフ、楽しんでください。料理と違って相手がいて対戦することがいかに未来が確定していない事実を気付かされるのかを。そして対戦外でするギャンブルが今まで敵対していたゲームから味方になってするギャンブルの効果を楽しみにしてください。」
そう言い残すとマリルは別室に用意したギャンブル台でディーラーになるべく分身をした。
バカラ、ブラックジャック、ポーカー、ルーレットに賭けビリヤードに花札にダイスを使ったチンチロリンまで揃っているらしい。そして、お酒を飲みながら騒ぐマリルはスロットを独占してマリルもいるようだ。
そんなジャックポッドからコインがドバドバ溢れ出す音や射幸心をあおるようなギャンブルマシーンの音響、そして仄かにかおる背徳的なヤバい匂いが臨場感を僕とハクに襲い掛かる。
リバーシをさす分身の僕とハクも同じように感じてるのか、早指しであっという間に決着を着けギャンブル場になだれ込んだ。しかし、オセロで勝ったのはハクのほうでチップを一枚手に入れただけで一瞬でバカラの餌食になっていった。それを横目でみた僕はマリルがここで学ばせたいことを考え始めたのである。分身だけどね。知識は常に共有されている事実だけがヒントかもしれない。




