誰か、助けてくださいませんか?
Act.9
とりあえず、話が進まないし、壁ドンのままでは話しにくいだろうとの(笑いを堪えていらっしゃる)王太子殿下の配慮により、王家の休憩室に連れていかれた。座る位置で揉めたが、諦めてオセロ様の好きなようにさせた。
膝上で優雅に紅茶を飲む私の姿が面白いのか、王太子殿下と第三王子殿下は左右に視線を逸らされました。王子お二方の真ん中に居られる、王太子殿下の婚約者様を含む三名が、妹姫三名の目をちゃっかりと隠しております。
私は淑女、私は淑女。
頭の中で考えている余裕などない。美丈夫に、膝上に乗せられて座っている。しかも、王太子殿下、その婚約者様、第三王子殿下、王女様方、皆立っているのに、だ。
「兄上、私は彼女と二人でも問題はありませんよ?」
「うーん……。」
ジッと王太子殿下は見てきます。悩まし気な顔をしているが顔は笑いを堪え切れていない。一番歳が近い第三王子殿下は横を向いて視線を合わせてくれない。
「お前の我慢が効くなら宰相夫妻が来る前に居なくなっても問題ないのだけれどね?」
「無理ですね。」
「だろうね?だからせめてストッパーが来るまでは居るよ。」
いやいやいやいや!?なんでそんなに冷静なのですか!?王太子殿下はニコニコしているだけで、助けてくれそうな気がしない。誰か助けて!と婚約者様と目が合ったけれども、ものすごい勢いで顔を背けられました。
え、なぜそこで赤くなる?
「レイアの兄上、妹たちは連れていきますので、オセロの兄上が何か起こしましたら止めてくださいね?お願いですよ?未成年に手を出したとか笑えませんからね?」
ちょ、ちょ、ちょーい!!
第三王子殿下!?何言っちゃっているのですか!?しかも最後に視線が合った瞬間の目からにじみ出る憐みの視線。
……これ魔王の生贄にされるのかしら?
少し怖くなりながら膝にのせているオセロ様の顔を見た。もう、それは、綺麗な、キラキラ満載の顔でほほ笑まれまして、う、眩しい、目が!!と叫びたい気分であった。脳内ではアセアセだが、紅茶を優雅に口に含んだ。
早く助けて、お父様!!お母様!!
そろそろ淑女の仮面が限界です。
コンコンとリズミカルなノックが聞こえて、え、そこにいたの!?ってメガネの男の人が扉を開けた。で、入って来たのは両親だった。助かった!!そう思って父母に飛びつこうとした!!
が、立つことも許されなかった。腰がガッチリホールドである。
「「王太子殿下、王子殿下にご挨拶申し上げます。」」
父と母の一寸狂わぬ挨拶を惚れ惚れしながら見ていれば、王太子殿下が「楽にして、プライベートだから。」と声を掛けられた。父と母のボウアンドスクレイプとカーテシーを目の前で見られるなんて!ご褒美じゃないですか!!
まあ、現実に戻れと言わんばかりに腰をさすられた。なんか変態っぽいです、オセロ様。あ、でも今、物語で魔王様にいろいろされている姫様の気分が分かりました!
「で、キャシオー、ビアンカ。私が必死に探していたのを良く知っている君たちからのこの仕打ち……弁明があるなら聞くけどどうする?」
「ありませんね。むしろ娘に幅広い視点を持たせるためにも殿下にはお伝えするつもりはございませんでしたし。」
お、おに、お父様!?何言っているのですか!?しかも清々しいまでの笑顔で!?素直に記憶戻ったのが数週間前だって言えばいいよね!?
「しかし、そんな一目で分かるとは思ってもいませんでしたよ。」
お父様、笑顔が怖い。宰相モード発動!!ってやつだ。お仕事している時の顔だ。
「ああ、それは、簡単ですよ。ほらデーの手に印が付いているでしょう?父上から教わったのですが、伴侶が誘拐されたときに便利と聞いていました位置把握の魔法です。こちらがあれば、近くに行けばその場所を直ぐに把握できるのです。霊体に効くかは不明でしたが、出来ましたね。」
そう言いながら左手の手の甲をさすられた。重なるように覆われたオセロ様の手の甲にも同じような文様が。こんなのいつ付けたの!?
「デーが少し実体化していたのが功を奏しましたね。」
実体化って幽霊の時に付けたの?え、これ本当に位置把握できるの??と疑問が盛大に浮かんだ私は王太子殿下を見た。ニコッと笑われて、生温かい目で見られる。隣の婚約者様は自分の左手の甲と隣の王太子殿下の顔を交互に見て困惑している。
うん、同じような文様があるね。
「はあ、娘にはもっと色んな殿方と話した上で、オセロ殿下と天秤を掛けてもらうつもりでしたわ。」
おか、お母様!?それ、火に油!!しかも王子とどっかの令息なんて、天秤かけていいものじゃないでしょうが!?でも扇子を使って吐かれた吐息、めっちゃセクシーでした。
どっちもしれっと、しれっと言っている!?さすが宰相夫妻なだけあって笑顔が崩れない!!っていうか、寒い!!寒いって!!ブリザード吹いているって!?
「そう。じゃあ作戦は失敗だね。私よりいい婿なんてそうそういませんよ?」
「いやいや、ご存じの通り、キプロス侯爵家は中立を掲げる家柄で、王家を敬いつつ、権力には屈しない家でございます。『王の権威』は必要ありません。特に、現在のような不安定なご時世では、ね?」
え、なにこれ怖い。
まあ、要約すると、『王家の王太子殿下は第一王子だけど、革新派は第三王子殿下推しているし、もしも内戦になったら仲介役出来る家がなくなるから婿は勘弁して。』ってことだ。
「なるほどね……分かったよ、キャシオー。三か月で終わらせるよ。」
その時、見上げてはいけませんでした。もう、魔王だ。すんごい色気纏った魔王が笑っていた。
「だから、デー。待っていてね?」
耳の近くで鳴り響いたリップ音。頬にキスされたと気づきその頬をさするまで一テンポあったと思う。その音の意味を理解して真っ赤になるのだが、魔王様はどうやら離してくれなそうだった。
この時、オセロ様17歳。私、14歳。
奇しくもこの日は、かつての私が成仏してからちょうど15年後だった。




