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第二話 診療所

 俺は前世、唯一好きになった女性と付き合えなかった。ただ、何もしなかったわけではない。告白はした。だが、その女性は他の男と付き合い、そのまま結婚してしまった。それから十数年が経ち、俺は死んだ。そして、テルネアというこの星で生まれ変わった。前世の記憶を持ちながら、だ。

 俺が諦める性格になったのはそこからだった。そこそこ出来れば生きていけるのだからそれでいい。本当に頑張るなんて馬鹿らしい。でも、好きなことへ一途になることはやめられない。例えば魂粒子のことだったり、好きな料理のことは特にそうだ。おいしい料理を日々研究している。本当は諦められる人間だと思うようにしていたのだろう。

 

 そこで俺は起きた。夢を見ていたらしい。この夢は過去の夢だな。そう思った。ダイジェスト形式で過去を思い出させられて気分は最悪だ。

 今日は学園がお休みだ。だから一日中寝ていたいところだが、母との約束を思い出す。そう、今日は診療所へ行く日だった。アルネス家の管理している診療所は国中にある。今回行くのはレヴェイン王国の王都にある王立診療所だ。王立診療所となってるが運営は代々アルネス家が受け持っている。

 本当はアルネス診療所に行きたかったな。アルネス診療所とはアルネス家の領地ネストリアにある王立診療所の次に大きい辺境の診療所だ。今回除外された理由は、俺たちが今住んでいる王都からとてつもなく遠いからだ。

 俺はトップも家の跡継ぎも狙ってないのになぜ診療所に行くかというとそこそこに生きていれば2番目の兄の補助をすることがほぼ決定しているからである。何故2番目なのかというと1番目は当主になることが決まっているからだ。当主は王都で優秀な人材を国中へ行き渡らせることに尽力しながら、自らも医師として各診療所を回るというハイパー忙しいものなのだ。俺は絶対なりたくない。母は俺に無理に医療関係へ関わらせるつもりはなかったようだが、ここまで環境が整っていればそれを選んだ方が楽だ。

 色々思い出しているうちに身だしなみの準備が整ってしまった。ノートとペンを鞄にしまい、廊下に出る。

「おはようございます。リシア様。今日もお早いお目覚めですね。今日も身支度をさせていただけないのですね」

 黄金色のきれいな髪をしたメイドのモネは残念そうだった。

「ああ、おはよう。俺にはモネみたいな美人さんに身支度してもらうなんて分不相応だよ。じゃあ、俺は行くから」

 正直日本生まれの俺には誰かに髪を梳かされたり、服を着替えさせてもらうことなど慣れるわけがなかった。モネに言ったセリフがキザになってしまった気がする。もう、なんとでもなれ——。

 

 色々な思考が頭を過ぎ去る。それを振りほどくように俺は速足で歩いたので思ったより早く診療所へついてしまった。白い石のような壁に赤茶色の屋根のこの建物こそが王立診療所だ。四角い看板には紋章の上から落ちる葉を手でうけとめるかのようなものが描かれている。どうしようか。早く来すぎてしまった。準備もあるだろうし、外で待って時間が近くなったらノックをしよう。そう思って立っている。すると2分ほど経った頃に中から人が出てきた。

「えっ、君は……アルネス家の子かな?」

「はい、リシア・アルネスです。」

「やっぱり!外で待つの大変だったでしょう。早く中へおいで」

 日本人形のような黒髪の女性はそう言って手を引っ張った。それが見える景色を変えていく1つの出来事だったのかもしれない。


「リシア君は学園での能力検査で不明が出てたよね?ここでまず魂領域——読解の先生にその不明という結果に魂領域が関係しているのかを見てもらうの。」

「はい。わかりました」

 そう俺は3カ月前、学園に入学したときの能力検査で不明となっていたのである。学園では簡単に10領域のどれなのかを知れればいい。科学者が作ったブレスレットはそれを判定するようにプログラムされているのだ。プログラムの内容は10個の式を覚えこませてどれに当てはまるかを示すらしい。細かなものは違えども同じ領域であれば同じ式があるのだそうだ。俺はそれがどれも当てはまらなかった。そう考えると緊張してきた。

「リシア君、お待たせしました。魂領域——読解のナルだ。よろしく頼む。」

 ナル先生は男性だった。あと、どちらかというと不愛想だ。

「ナル先生、お願いします。」

「では、手に触れるよ。」

 そう言って手に触れると先生の周りから線のような光が無数に出てきた。それらは俺の全身にくまなく触れた。

「これは……視覚?いや、読解か?」

 その後何かをひらめいたような顔をしたが、急に表情が消えて手を離した。

「すまない。僕では力不足だったらしい。」

 そう、ただそれだけだったら気にならなかった。案内をしてくれていた黒髪の女性にこう耳打ちするまでは——。

「アルネス家のものを呼んできてくれないか?かなり緊急の話だ。彼の将来に関わってくる。彼はもしかすると魂領域の5領域保持者かもしれない。」

 そう言ったのが聞こえた。タマシイリョウイキノゴリョウイキホジシャ?もしそうだったらそれが何だというのか俺は全くわかっていなかった。

第二話をご覧いただき、ありがとうございました。

リシアはある一件から諦める性格になったと思ったけど本当は諦められない自分がいたらしいですね。

正直、リシアの前世がどんなだったのかあの数文では語りきれません。それは皆さんもなのではないでしょうか?

皆さんはどんな過去がありますか?

リシアは結構顔に出やすく、わかりやすい性格の子です。そんなわかりやすいリシアちゃん(笑)

リシア目線で書くのもいいですが、他の人目線で書くのもよくないですか?ということであえて省きました!

他作品にして載せるのではなく、この作品の外伝として載せるという盛大なネタバレをかましつつ、あとがきはここで終わります。

これからも魂式の魔法使いをよろしくお願いします!

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