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第45話:技術革新と代替品

 

「ええ、どうぞ」


「は……昨晩、南部にいる私の部下から連絡があり……ターニャが目を覚ましたそうです」


「……ほう。確か、瓦礫の中から発見されたという……重体と聞いておりましたが、そうですか……それは朗報ですね」


「ええ……まだ詳しい話は聞けておりませんが、彼女が持つ情報はかなり重要かと。それからその……もう一つ、中佐に申し上げておかねばならないことが……」


「伺いましょう」


「は……彼らは既にガラバを出発し、軍人殺しを追って移動中でして……」


 オーガスの言葉を受け、シャンディは微かに笑みを浮かべた。


「……なるほど。あなた方の捜査は、今もまだ継続中だったということですか」


「はい……事後報告となってしまい、大変申し訳ございません。まさか、新たな部隊の設立に、閣下のそんなご意向があったとは思いもよらず……あくまでも特務課として、この事件を解決したいという彼らの意思を……私は尊重する決断をいたしました」


 オーガスはそう言って頭を下げる。

 無論、彼も最初は止めたのだ。

 軍人殺しの力は想像以上で、リリアナですらがそれを見誤ったのだと、故に行くなと、無茶をするなと、そう言って。


 だが、ジェスターは頑として首を縦に振らなかった。

 特務課として、最後まで責任を持って任務に当たらなければならない。でなければ、それこそ特務課が終わるのだと、ジェスターは彼にそう言って譲らなかったのである。


 オーガスは反論出来なかった。

 何故なら、自身もまた同じ気持ちだったからである。

 結局、オーガスは条件付きでそれを許可し、ジェスターたちはガラバを出立。

 まだオーガスたちは知る由もないが、元皇都ペルシアを目指して移動を開始していた。


「本来ならば……指揮官として、止める立場にあるということは十分に理解しております。ですが、それでも私は……申し訳ございません」


 シャンディは頭を上げるよう促すと、彼の目を見ながら静かに首を横へと振った。


「……リリアナ大尉の安否も分からぬ以上、じっとなどしていられなかったのでしょう。その気概はむしろ、同じ帝国軍人として誇らしいくらいですよ」


「お言葉……痛み入ります」


「いえ……それで、彼らからの続報は?」


「遠距離通信が可能な場所に到着次第、こちらへ連絡するよう伝えておりますが、今のところはありません。そもそも、彼らが連絡を取れる場所があるかすら分かりませんが……」


 現在、南方司令部からの通達により、特務課への協力が一切認められていない関係上、どこかの街で連絡を取るというのは難しいだろうと、オーガスはそう考えていた。

 それを理解していたシャンディは、少し考えた後に口を開く。


「……分かりました。南方司令部総統のジャバー少将には、私から連絡をいれておきましょう。新設部隊の件と合わせてご報告すれば、ジャバー少将にもご理解いただけると思います」


「あ、ありがとうございます……助かります」


「いえ……しかし、やはり遠距離通信が可能で、ある程度持ち運びが出来る機器の開発が急務ですね。分かってはいるのですが、これがなかなか難しい……」


 南部から帝都まで連絡が取れるような長距離通信機は、その必要な設備の大きさ故に、持ち運びはまず不可能。


 故に、基本的には各街に存在する駐屯所といった軍事施設でしか使用出来ず、他に例外があるとすれば、師団か、最低でも旅団以上の規模で行われる軍事作戦時に、多少簡素化されたものを機関車に積み込むなどして移動させ、前線で使用するというケースくらいであった。


「魔石という触媒は必要ですが、近距離から中距離で使用可能な、念話魔術(テレパシス)という便利な魔術がありますからね……今の現状は、これに依存したツケが回ってきたとも言える。長距離通信機も基本的な仕組みは同じなのですが、小型化すると今度は出力が足らない。困ったものですよ……」


 魔術という存在は、非常に便利な反面、あらゆる技術を発展しづらくするというデメリットを抱えていた。


 これは通信機器に限らず、魔術が大半を占める遠距離攻撃手段や、浮遊魔術等による移動手段、果ては日常生活で使用する調理場などといったものは、魔術や、あるいはそれに準ずる魔道具があることを前提として考えられている。


 要するに、身体から生み出される魔力という名の便利な燃料、そしてそれを元にして世界に影響を与える魔術という手段(もの)が、あまりにも便利()()()のである。


「結局のところ、技術革新とはないものねだりから始まるものです。魔術に支配されたこの世界において、機械はあくまでもその代替品に過ぎません。まぁ、これらは全て、閣下の受け売りですけどね」


「ふむ……いや、おっしゃる通りかと。ふと思い当たるところで申し上げると、機関車もまた、"転移装置(ゲート)"の代替品に過ぎませんし……」


「確かに、その通りで……あ、失礼。話が逸れてしまいましたね。話を戻しましょう」


「いえ、良い話を聞かせていただきました。それでは、ひとまず私は彼らからの連絡を待ちつつ、今後の動きについて考えます」


「分かりました。では、彼らから連絡が入り次第、一度帝都へ帰還するよう伝えてください。軍人殺しは強大な力を持っています……優秀な人材を、これ以上失う訳にはいきませんので」


「は……了解しました」


「よろしくお願いします。さて、イーグレット、オリビア……だいたいの話は理解しましたね?」


「はっ」


「は、はいっ……」


「以後、あなたたちはオーガス少佐の指揮下で行動を。所属先には、既に閣下が話を通されています。そちらは気にせず、軍人殺しの捕縛に全力を尽くすように……よろしいですね?」


「了解」


「わ、分かりましたっ……」


「オーガス少佐、彼女たちに改めて詳細な説明をお願いします。それから、何かあれば逐一報告を」


「了解しました」


「では、これにて……おっと、忘れるところでした。部隊名をまだお伝えしておりませんでしたね」


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