表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/43

第35話:答え合わせ

 

『え? そうだったの……ごめんねエリー君……嫌なこと思い出させちゃってさ』


「あ、いえいえ! 同期と言っても、すっごく仲が良かった訳でもなくて……ただ、同い年でしたから、お話はそれなりにしましたけど……あ、それで彼はロッドと言いまして、五人目の被害者です……殺されてしまったのは四月十三日でしたが、うちがそれを知ったのは、その三日後の四月十六日です」


『三日後? ああ……君らの補給は三日に一度だったね……そのズレか』


「はい……その、知ってる人が亡くなったのは初めてで……だから覚えてました」


「閣下、時期は合います」


『そのようだね……ありがとうエリー君。よく思い出してくれた。助かったよ。さて、レイナ君』


「はっ」


『フィオナ君の出番はもう少し先でね……引き続き、彼女をよろしく頼むよ』


「えっ? あ、りょ、了解……このまま任務を継続します……」


『うん。まぁ、いろいろあることないこと話すと思うけど、惑わされちゃダメだよ? 彼女は聡明な狂人だ……決して飲み込まれぬことのないよう、くれぐれも気をつけるように。それじゃみんな……よろしくね』


「「「「はっ!」」」」


 通信が切れた瞬間、四人はそれぞれ自分の席へと移動し、そのまま崩れるように椅子へと座り込んだ。


「とりあえず……なんとかなったわね……」


 机に突っ伏したまま、レイナはそう言ってため息をつく。

 他の三人も、それに同調するようにため息をついた。


「いや、ナイスだったぜレイナ……今思えば、お前が疑問に思わなきゃ、状況()()を伝えるハメになってたとこだ」


「まさしく……レイナ中尉は命の恩人ですな」


「レイナちゃん……ほんとにありがとう……」


「た、たまたまよ……私は、あいつが嫌で嫌でしょうがなかったってだけ。だからこそ、なんで変わったのかが気になったのよ。で、それをアンジュと考えてる最中に、偶然あのお方から───」


 レイナはそこで、ふと疑問に思った。

 そして、反射的に部屋の中を見回そうとした身体を寸前で止めると、そのまま額に手を当てた。


「ん? どうした?」


「あ、いや……ほんとタイミングがよかったなって……改めてそう思っただけよ」


 そう。

 偶然にしては、あまりにもタイミングが良過ぎると、彼女はそう思ったのだ。

 これではまるで、自分たちが話している様子を、どこかで見ていたかのようではないかと。


「あ、ていうかよ、結局それが正解だとして、なんであいつは"軍人殺し"の話を聞いてまともな状態に戻ったんだ?」


「あ、えーっと……それは……分からないわね。ただ、あのお方は何か考えをお持ちのようだったし……とにかく、私たちは任務に集中しましょう。ほら、二人は夜に備えて休んできなさい。それと、そんな格好じゃ……風邪引くわよ」


「そ、そうでしたっ! どうりで寒いと思ったよぉ……!」


「お、お見苦しい格好で失礼を……では! 我々は自室に戻ります!」


 慌てて立ち上がった下着姿の二人は、そう言ってレイナたちに頭を下げると、逃げるように部屋を後にした。


「じゃ、私もあいつの様子を見てくるわ」


「あ、うん……よろしく」



 ──────────────────



 そうしてアンジュも部屋を去り、一人残された私は、もう冷めてしまったコーヒーを口にする。

 そして、視線だけを動かし、見える範囲をゆっくりと眺めてみた。

 当然何が見つかる訳もなく、私は背もたれに身体を預けて天井を見上げる。


「うーん……」


 もし仮に、閣下の指示で私たちが監視されていたとしても、それはそれで別に構わない。

 信頼されているいないではなく、記録というものはいつだって重要だし、何かがあった際の保険にもなる。


 それに、私たちの忠誠心は本物だ。

 当然、閣下を否定するような発言もしていないし、むしろその証明になるのだから望むところ……これは、必要な措置なのよ。

 何を聞かれようが、何を見られようが、そして何をされようが、私の心は変わらない。

 それだけの恩が、あのお方にはある。


「んー……」


 それよりも気になるのは、今回の件に対する閣下の反応……あれはどう考えても、最初から答えを知っている様子だった。

 エリーが話した内容を聞こうともしなかったことからもそれは分かる。


 閣下は、あいつが心変わりした原因は、軍人殺しの話題以外にあり得ないといった感じだった。

 でも、何故それが分かったの?

 あいつの異変に関する報告をしたのは今回が初めて……つまり、事前に考えを巡らせてたということはあり得ない。

 ということは、私たちが聞かされていない情報があり、それをもとに閣下は答えを導き───


「……あ」


 違う……逆だ。

 私が知りたかった答えは、あいつが何故心変わりしたのか……その理由だった。

 けど、閣下が探していた答えは、()()()()()()()()()()だったんだ。

 つまり、閣下はその二人に繋がりがあることを知っていたから、エリーの話自体が答え合わせだった。


 ん? ……でも、待って?

 あいつが言っていたことが真実なら、生きる理由の全てだったというその恋人は死んでいる。

 だからこそ、あいつは死のうとしていた訳で……じゃあ、軍人殺しは誰なの?

 その代わりになるものなんて……親? 兄弟?

 まさか、死んだ筈の恋人が実は生きていて───


「……まぁ、いいか」


 考えても仕方がない。

 あいつの過去を私は閣下から聞かされていないし、全てはあの狂人の話したことだ。

 何が真実かなどは分からないし、関係もない。

 私はただ、閣下の指示に従ってあいつを生かし、隠し続けるだけでいい。

 それだけで……いいんだ。


「ん……」


 ……でも、もしあいつが言ってることが真実なら、あいつは住んでいた村を滅ぼされ、恋人を目の前で惨殺されたことになる。

 そして、それを行ったのは……閣下。

 しかも、あいつのいた村だけじゃなく、それを何度も繰り返し……なんの罪もない人たちを───


「ふー……」


 やめよう。

 そんなことはあり得ない。

 やっぱり、あれはあいつの妄言だ。

 私たちを惑わす為についた嘘。

 そうに違いない。

 そうでなくても関係ない。

 私はただ……バルバロス様の為に生きるだけよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ