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第6話 最終決戦

「な、なるほどね……道理で本体が影響を受けるわけだ。

 あの振る舞いは、まるで母親じゃないかね」


「誰が母親よ!? せめて姉と言いなさい!」


「ああ、確かに……リリーの理不尽さは、たしかに『姉』って感じだよ」


 ごすっ!


「うっさいわね! ぶん殴るわよ!?」


「殴ってから言わないでくれたまえ。そういう所だよ」


「口より手を動かしなさい! てか、あんたは魔術師なんだから、口を動かすのが仕事じゃないの! さっさと呪文のひとつも唱えなさい!」


 き……強烈な女性だな。

 全員ぽかーんとして戦闘を忘れている。


「いや、ていうか……とりあえず『どういう状況か』って聞くところじゃないのかね?」


「そんなの、あれを倒せばいいんでしょ? 見りゃ分かるわよ。あんたバカ?」


「同じ顔なのに、どっちがどういう立場とか分かるのかね?」


「いくら似てよーが、あんたの顔を間違えるわけないじゃないの! 本当にバカね」


 いや熟年夫婦か!

 ほんとに!

 母親か!

 どんだけ愛されてるんだ、このインテリ男!?

 ううっ……私も彼氏ほしー……。


「はぁ……もういいかね? それじゃあ気を取り直して、戦闘再開と行こうか。

 とりあえず、こいつからだ。神官がひとり増えた程度で、何がどうなるのか見せてもらおうかね」


 私は咄嗟に目をかばった。

 来る……! 見えない攻撃が……!

 痛みが来たら、根性で耐えて、すかさず召喚からの攻撃命令で即反撃を……見えない攻撃だろうとも、攻撃直後の隙はあるはずだ。

 来い……! さあ来い……! ほら……! 来いっ……!


「……? あれ……?」


 痛みが来ない。

 周りを見ると、みんな不思議そうだ。


「なんかちょっと風が吹いたけど、あんたの攻撃って、そよ風が吹くだけなの?」


 リリーが言った。

 いつの間にか、私たちの体を清浄な光が包んでいる。

 バフか。防御系の。

 微細な攻撃だから、付与されたバフを貫通できなかったのか。


「……なるほど。少しは変わるようだね。

 では、これはどう――」


「サモン・エクサ! セブン・シンズ・アークエネミー!」


 100京体の「7つの大罪の魔王」が現れた。

 テイマーとしての私の最大火力だ。


「うごっ!? なんて邪魔なところに召喚するのかね」


 召喚そのものを攻撃手段として、満杯のゴミ箱をひっくり返したように魔物の雪崩で押しつぶす。

 攻撃命令すら省いた、速攻重視の電撃作戦。

 攻撃直前の隙をつくカウンターパンチ。

 ヒサギがどんな攻撃をしてくるつもりか知らないが、召喚された魔物が肉の壁になって多少は防げるはず。もしブラックホールに吸い込まれても、時間は稼げる。次々と召喚され続ける魔物は、どうしても「出てくるのを待つ」しかない。出てくる前に吸い込むことはできないのだから。


 カチッ。


 小さな音がした。

 直後、無数の罠が発動し、麻痺や猛毒などあらゆるデバフがヒサギを襲う。


「やれやれ……ようやく当たったぜ。

 罠師は獲物が動いてくれなきゃ無力なのが難点だな」


 じっと息を潜めていた椿が言う。

 ほとんど何もしていなかったように見えたが、実際にはいくつも罠を重ね続けていたらしい。

 すなわち、今までヒサギは1歩も動かずに戦っていたということ。

 つまり「戦い」にすらなっていなかった。

 リリーが参戦して、ようやく「戦い」になったわけだ。


「ぐぅ……っ! この……!」


 ヒサギは満足に動けないようだ。

 チャンス――


「神よ、このアホをアタシがぶっ殺すのをお許しください! 悪霊退散! 悪魔よ立ち去れ! 神聖なる極撃! えい! えい! えい!」


 膨大な魔力がメイスに宿り、白銀の神炎が輝く。

 リリーは容赦なく振り下ろした。


「ぐはっ! げぼっ! ぎゃああああっ!」


 ちゅどーん!

 叩き込まれた白銀の神炎が、大爆発した。

 ヒサギは倒れた。

 あ……あっけない……防御力は凄まじかったが、耐久力はそれほどでもなかったのか。しかし、これをあと何体――


「……おや? 複製体の反応がひとつ消えたね?」


 空間に無数の歪みが現れた。

 空を埋め尽くすほどに現れたのは、10京体のヒサギたち。

 耐久力がそれほどでもないのは、いくら倒されても代わりが居るからだった。

 その絶望的な光景に――


「おかえり、アンダーソン君。会いたかったよ」


 楸が言った。


「誰がアンダーソンかね。

 あと、それは状況的に『我々』のセリフだよ。オマージュが下手だな。くだらない連れに影響されて、知能が下がったんじゃないかね?」


「ちょうど今、その連れが、お前の複製体を倒したところだよ」


「…………」


「始めようか」


 いよいよ最終決戦だ。

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