ポートの街と駆け出し冒険者7
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「実はさ…」
悩ましげな表情を浮かべながら、カンナが事情を話してくれた。
なんでも、昨日カンナは俺と別れた後彼女の実家でもある孤児院に顔を出しに向かったらしいのだが、いざ孤児院に着くとものすごくバタバタしていたらしい。挨拶もそこそこに事情を聞くと、どうやらカンナもお世話になった一番年長のお姉さんプロポーズされたのこと。名前はミーシャといってカンナ曰く、とても可愛らしく、それでいて頭もよく、何時でも孤児院の後輩の面倒を見るなど、とにかく最高のお姉さんらしい。
元々お互い好き合っている仲であったのと、そもそもミーシャは孤児院にいるのが不思議なほどの才女で、相手方の関係者にも反対者なんて誰もしなかったのだが、いささか急な話しすぎた。
本来嫁入りにはある程度の支度金を持たせてやるのがこの街ポートでの風習なのだが、如何せん今の孤児院の懐事情はギリギリだった。
理由はいくつか有るらしく、建物の修理のタイミングや上の世代の嫁入りが重なる等どれも致し方ないものである。
幸い相手方に理解があるようで気にしなくても良いと言われているようだが、院長であるマードックは今まで皆の面倒をよく見てくれて、最近では仕事の手伝いまでしてくれていたミーシャに何とかして人並みに支度金を預けてあげたいらしく、結果てんやわんやになっているらしい。
因みにマードックさんがどんな人か聞いたところ、カンナがお人好しの権化と言っていたので悪い人ではないんだろう。
カンナの説明が一段落したところで改めて話しかける。
「事情はなんとなく解った。それで具体的にどんなお願いなんだ?」
「もうじき海トカゲの大量発生の時期なんだけど、ウチと一緒に依頼を受けて貰えないかな!?」
意外な提案に目を見張る。
「海トカゲの討伐はこの時期の風物詩的な物で、結構な収入になるんだ。けど、ウチ一人じゃ安定して狩るのは厳しくて…。勿論ゴートなら一人でも狩れるだろうし、何だったらもっと強い人とも組めるってことはわかってるんだけど…」
つまり色々入り用になったけど、あてがないから割りの良い合同依頼を受けて欲しいということか。
改めてカンナを見る。
身体能力が高く魔法が使えるとは言え、あくまでまだ子供の域を出ていない。
海トカゲの大量発生についてあまり詳しくはないがカンナ一人では厳しいことを考えると低く見積もっても八級相当の依頼ということだろうし、組んで貰えないのも不思議じゃない。
「勿論取り分はゴートを多くするし、雑用だってうちが…」
カンナが不安げに条件について話し始めるが俺の答えは既に決まっている。
「俺で良ければ協力する」
「えっ…」
「一緒に受けようか、依頼」
「いいのか?」
「ああ。海トカゲは初めてだからなー。戦うのが楽しみだ!」
戸惑っているカンナを見て、敢えて明るく振る舞うと不安げだった顔がみるみる笑顔になっていく。
この顔だ。
不安げな顔は見たくない。
そもそも事情を聞いた時点で、協力することは決めていた。
というのもセカの街でお世話になったランさんとケニーさん。この兄や姉のように慕っていた二人が結婚すると決まったとき、最初こそ戸惑ったものの最終的には俺は凄く嬉しかった。本当ならしっかりとしたお祝いもしたかったと今になって想うのだ。
カンナにとってのミーシャはおそらくそれ以上の存在。だったら俺の分まで…という訳では無いが、手伝うことは吝かではない。
それにカンナと出会ったのも何かの縁。折角仲良くなれたのだから出来ることならしてあげたい。
何よりカンナのためでもあるが根本に有るのは誰かのため、人のためのお願いなのだから。
「ありがとうゴート!」
俺からすればまだまだ頼り無さげな小さな身体が飛び込んでくる。
「えーっと…」
行き場を失う両手。
「あっ!」
華麗なバックステップを披露したと思いきや、空に負けじと赤くなるカンナ。
何とも忙しそうだ。
「そういえばその海トカゲの依頼は何時から受けられるんだ?」
「えっと…」
何時依頼を受けるか聞いていないことを思いだしたのでカンナに聞いてみると、明後日の方を向きながら
「明後日から…」
と呟いた。
「そうか…明後日か…」
思わず復唱してしまった。想像の数段上だ。もうすぐじゃないか。
「明日は八時集合で」
「はい」
明日一日で諸々の確認をするべく朝から集まることが決まった瞬間であった。




